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男女逆転!?B




「ここに座って下さい!」

「暑くないっすか!?日傘用意しますね!」



『…………』


トレーニングルームから氷帝のレギュラーとテニスコートへ戻って来ると、氷帝の男子テニス部員が女となった立海のレギュラー達の下部となっていた。


幸村君は高級そうな椅子に座っており、一人に日傘を差してもらい、数人に大きなうちわで仰いでもらっている。他のメンバーも氷帝の部員に色々もてなされている。全く、どこの貴族だよ。


氷帝レギュラーを見ると、私と同じく呆然としていた。まさに空いた口が塞がらない状態だ。


「何してんだ」

跡部がパチンと指を鳴らすと氷帝部員達は、ハッと表情を一変して跡部の前に整列した。


一方立海のメンバーはこの状態を楽しんでいるようだった。とは言っても幸村君や仁王、ブン太に限られるが。


『……せ、先輩。何してるんですか』

幸村君の方へ駆け寄り小声で話しかける。


「いや少し色目?使ったら勝手に色々してくれたんだよね」

『色目って……』


「こう、胸元を開けて胸寄せて屈むでしょ?その後上目遣い」

『っ、』

そう言いながらその仕草をする幸村君。そんな事されてドキドキしないわけがない。


「どう?」

『……どっ、ドキドキ、します』

「ふふっ」


「じゃあこれはどうじゃ?」


ガバッと後ろから抱きついてきて私の背中に胸を押し付けてくる仁王。この人達何なの!?



真っ赤であろう両頬に手を当て幸村君と仁王から顔を逸らすと、柳がいつものノートに何か書き込んでいた。


『あの、何書いてるんですか?』

「男の苗字も変態とデータに追加しておいた」

『へっ変態じゃないです!』



こんなやり取りをしている間に氷帝の部員はボールの片付けに。レギュラーは練習の準備をしていた。


「樺地、ジローを起こして来い」

「ウス」


そういえば今日はジローの姿を見ていない。樺地がジローを起こしに行って数分後、眠たそうなジローが片手にラケットを持ちコートにやってきた。寝癖が酷いが気にしないでおこう。


「ん〜?名前ちゃん来てたんだ〜」

『えっ!』


寝ぼけているのかジローは私の正体を難なく見破った。男の格好でいつもよりがっしりとした体だし髪も短いはずなのに。……いやでもこれは隠し通さなければ。


『名前じゃない……ですよ』

「A〜?……あ、ほんとだC。男だ。名前ちゃん男だったの?」


「ジロー。こいつは苗字の従兄妹だそうだ。少しだけ練習に参加させてやっている」


一瞬ばれたのかと思ってひやっとした。でもジローの様子を見ると、私が苗字名前だという事に気付いている気がする。しかし今の状況……私達の性別が入れ替わっている状況は現実的にあり得ないことだ。


「おい!そこの男子避けろ!!」


少し離れたところにいる氷帝の部員が私の方を向いて焦った顔で叫んだ。


『えっ!?』


テニスボールが私に向かってすごい速さで飛んでくる。避けようとしても体が動かない。


これから来る衝撃にギュっと目を瞑る。



ーーーーパコーン!




覚悟していた痛みはなく、ラケットでボールを打つ気持ち良い音が耳に響いた。


「大丈夫かい?」


目を開けると幸村君を始め立海の皆がラケットを持って私の前に立っていた。八人の女子に守られる男子って……。


『あっ、大丈夫です』


先程のテニスボールを打った部員が謝りに来て、ホッと一息つくと日吉が声をかけてきた。




「お前……苗字名前だろ」


『……』


ばばばばれた!?否定しようとすると日吉は言葉を続けた。


「それであの人達も立海のレギュラー。全員何故か性別が逆転している」


こちらをじっと見ながら話し続ける日吉だが、どこかそわそわしている。

とりあえずばれてしまったので日吉の推理通りだと伝えると日吉の目は輝いた。


「何故そんな事になったんだ。学校七不思議か、それともミステリー「アーン?そういう事かよ」」


『あっ』



日吉と話しているうちにいつの間にか氷帝のレギュラーが揃っていて、全員が私を見ていた。


「だから名前ちゃんだって俺言ったC」

「名前ちゃんやったんかいな」


『す、すいません……』


嘘がバレて縮こまる。皆はどこにいるのだろうと周りを見渡すが立海のメンバーは誰一人いない。


「苗字、俺達をからかっていたのか?アーン?」

「クソクソ全然気づかなかったぜ!」

「騙してたのかよ。全く、激ダサだぜ」

「ひどいです!苗字さん」


氷帝の皆に距離を詰められながら口々に発言する。


どうしよう……誰か助けてーーーー









********************




「苗字」

『……っ!!』


ガバッと頭を上げ、今の状況を理解しようとする。どうやら自分の教室でうつ伏せで寝ていたようだ。

「ようやく起きたか。あと十分で部活が始まる」

『……え、柳先輩?』

「あぁ、そうだが。寝ぼけているのか?」

『女じゃ……な、い?』


目の前にいる柳は、髪は長くないし女の子らしい体つきでもない。いつも通り男の姿だ。


「何の話だ?先程まで随分魘されていたが、悪い夢でも見たのか?」

『……ゆ、め?』


「ハァ、ほら行くぞ。早く目を覚ませ」


『うぅ。はーい』



どうやら性別逆転した私や立海のレギュラー達は、全て私の夢だったようだ。やれやれとでも言うかのような表情をして、教室を出て行った柳の後を追いかける。


女の姿になった皆も美人で可愛かったけど、やっぱりいつも通りの姿の方がいいな。



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