男女逆転!?A
「そんなに気付かないものなのか?」
「普通はありえない事が起こっているからな」
「んー、何しようか。見てるだけじゃつまらないしテニスさせてもらおうよ」
女になった三強が話しているところをじっと見る。美人過ぎてすごい絵になる。
幸村君は跡部にテニスをさせてほしいと、言いに行ったが部活中なので女子と一緒にテニスをする事は不可能だと返されたようだ。
断られて不機嫌になった幸村君は怖かったが、私は自分の今の性別ならいけるのではないかと考えていた。
『あ、あの……』
「アーン?何だ」
『おっ、俺も練習に、参加しても……いいですか?』
「さっきあっちの嬢ちゃん達に断りを入れたはずやで」
横から忍足が会話に入ってくる。口調が少しきついが、忍足の性格には慣れているし、ここで引くわけにはいかない。だってテニスがしたいんだもん。
『……忍足先輩、テニスが凄い上手くて周りをしっかり見てテニスをする人だって……言ってました』
「は?」
『跡部先輩も目が離せない程綺麗なテニスをすると……言ってました』
「誰がだ」
『勿論……名前です。だから俺も、お二人とラリーしてみたいな、と』
出来る限りの笑顔を二人に向ける。二人は私が私の名前を出した途端、驚いた顔をしてそしてすぐに顔を逸らす。
「……ふん、まぁ良いだろう。そこまで言うならお前を練習に参加させてやってもいい」
「せやな。使えるラケット何個かあったはずやわ。それ使い」
『ど、どうも』
ちょろいな!褒めれば練習に参加させてもらえるなんて。思わず隠れてガッツポーズをする。
「苗字も考えるようになったな」
「あれは性格が黒くなったんじゃなか?」
「あぁ、そうとも言う」
と、こんな会話がされていたなんて私は知らない。
ラケットを借りレギュラーの練習に混じる。立海メンバーを見ると、自分もテニスがしたかったのか羨ましいと言うかのような顔をしている者や、興味津々で此方を見る者がいた。
「お前テニスの経験あるのか?」
『いえ、あまり……』
「練習の邪魔はしないでくださいよ」
「おい若その言い方は……。根は良いやつなんだぜ。お前の従兄妹とも結構仲良さそうにしてたし」
『へ、へぇ。そうなんですか』
確かに日吉は話しやすかったなぁ。優しかったし。冷たい態度だとちょっと傷つく。
この姿だと何でも出来そうな気がする。例えば跡部に歯向かってみるとか、忍足に納豆ぶつけるとか。……日吉にちょっかい出したり。
『日吉さん』
「……」
『ひよっこさん』
「……その呼び方やめろ」
今日の日吉はツンツンだなぁ。
私が日吉で遊ぼうとしているのが見えたのか、岳人が近付いて来た。
「ひよっこひよっこ〜」
「……ハァ」
「なぁなぁ苗字の従兄妹」
『はい』
「苗字って普段どんな?」
私……うーん。私の性格っぽいものを言えばいいのかな。
『何と言うか、人見知りするとか「あとは変態だよな!」なっ!?』
隣から赤也が話に入って来た。変態って!私変態じゃない。
『へっ、変態じゃないです!』
「別にお前の事じゃねぇだろ?」
『う"っ!』
「……」
赤也とそんなやり取りをしていると、日吉が此方をじっと見ているのに気付いた。どうしたのか聞こうと口を開いたが、すぐに目を逸らされた。
もしかしてばれた?……いやいやそんな事はないはず。
「次はランニングだ」
跡部が部員に指示を出す。
ランニングって練習に参加している私もだよね。体力に自信ないんだけど。部員の後をついて行く。しかし行く先は何故か部室。
『あ、あの何処で走るんですか?』
「何処ってトレーニングルームに決まってるだろうが」
跡部が当たり前だろという顔で答えるので、顔が引きつった。
レギュラーが走っている間、他の部員がコートを使うようだ。
練習に参加したいと言ったのは自分だし、頑張って走ろう。
********************
『……はっ、も、無理』
床に座り込むと、まだランニングマシンに乗ってる皆が驚いていた。
いや驚きたいのはこっちだから。
「まだ、十分ちょっとしか経ってねーぜ?お前俺より体力ねぇんだな」
『うぅ……』
岳人に負けるなんて。ていうか私普段運動してないし。
跡部にそこら辺で休んでろと言われトレーニングルームを出る。あ、ドリンク作らなきゃ。後十五分で皆もランニングが終わる。
十五分後、走っていた皆は少し汗をかきトレーニングルームから出てきた。
『お、お疲れ様です。ドリンク……作っておきました』
「アーン、何でお前が作ってんだ?」
だって私マネージャ…………あ、今日は違うんだった。いつもの癖でドリンクを作ってタオルを用意してしまった。
「まぁ助かるけどなぁ。おおきに」
『い、いえ』
氷帝のレギュラーと共にトレーニングルームから出る。立海のレギュラーの皆は今何してるんだろうな。