楽しくお買い物
財前とユウジとはぐれたメンバーを探す事になった私、咲本ひなた。しかし私は相当嫌われているらしい。ユウジは先程から私達の後ろで距離をあけ歩いている。
「ユウジ先輩何でそんな離れてはるんですか」
「ふっ普通に歩いてるやんけ」
「まぁ良いですけど。……咲本」
『は、はい』
「先輩なんかほっといて二人でデートでもしよか」
『へっ、えぇ!?』
財前は私の肩を抱き自分の方へと寄せる。トンと頭が財前の胸に当たり、良い匂いが鼻をかすめる。一気に体温が上昇していくのが分かった。
頭が真っ白になり何も言えないでいると、後ろからユウジが私達の間に割り込んできた。
「どうしたんですかユウジ先輩」
「あー!早よ小春らと合流しなあかんし、皆探さなー!」
顔が真っ赤なユウジとそれを見てニヤニヤする財前。二人の行動がいまいちよく分からない。
すると何処からか携帯電話の着信音が聞こえた。
「あ、謙也さんや。……あぁはいはい。今ですか?ユウジ先輩と咲本と一緒です。……はぁ、それで今何処なんですか。ていうかそっち行くのめんどいんでこっちまで来て下さい」
「何でやねん!」
『え?』
「ん?」
後ろからツッコミを入れる声が聞こえ振り向くと、携帯電話を片手に持つ謙也を発見した。
「あれ、二人だけなん?ていうかほんまに咲本おったんかいな」
「謙也さんが神奈川に着いた瞬間走って行くからやないですか。咲本とはさっき偶然会ったんです」
そして財前は謙也に先程までの事を話していた。小春や千歳が金ちゃんと白石を見つけたとしても、まだはぐれたメンバーはいる。引き続き私達は四天宝寺のレギュラーを探すことになった。
「そういやこの間はすまんなぁ」
『え?』
「侑士との電話で嘘ついて、その後大変やったやん?あの時は迷惑かけたなぁ思て」
『あ、えっと……だ、大丈夫です』
「侑士にも氷帝の跡部にも気に入られてるみたいやし、財前にもちょっかい出されるしまぁ頑張りな」
『へっ、は、はい』
気に入られてることはないだろうけど、忍足も跡部も前より優しくなったと思う。忍足なんて第一印象最悪だったからね。財前にからかわれるのは謙也もそうだと思うし、お互い頑張ろうって感じだよなぁ。
「あー!見つけたでー!」
遠くから金ちゃんの声が聞こえ、声のした方へ向くと四天宝寺のメンバーが揃っていた。
「小春ー!」
「おぉ、皆揃ったやん」
「咲本や!久しぶり!」
ぞろぞろと皆が此方に向かって歩いてくる。そして金ちゃん大きく手を振って挨拶されたので頭をぺこりと下げる。
「迷惑かけたみたいでごめんな咲本さん」
『あ、いえ。わ、私もこの前……迷惑かけ、ましたし』
「いやいや迷惑なんて思ってへんで……ん?」
白石は私と目が合うなりキョトンとした顔をしたので何だろうと首を傾げた。
「今日の咲本さんはいつもよりかわえぇなぁ。化粧してるん?」
『えっ……は、はい』
面と向かって可愛いと言われ、驚きと恥ずかしさで顔を上げられなかった。
「んー?ほんとやね。いつもとちょっと違うばい」
『ぬぇっ!』
急に顔を覗き込まれて変な声が出た。恥ずかしい。穴があったら入りたい。……ていうか皆揃ったことだし早く買い物しに行きたい。
「でもまだ金ちゃんと同い年なんやから肌大切にするんやで」
白石は軽く私の頬に手を当てて優しく微笑む。心臓の脈打つ音が頭に大きく響く。こんな事され慣れていない私は恥ずかしすぎてどう反応して良いのか分からない。
「蔵リンとひなたちゃん良い雰囲気やないの〜。ユウくんも光きゅんも頑張らないと」
「な、何でやねん!」
「てかその きゅんって言うのやめてもらえますか」
「いやん」
「今からどないするんや」
「わい咲本とテニスしたい。前にするって約束してんねん」
『あ、えっと』
約束はしたけど今日はジャージも着てないし運動靴も履いてない。それに今日は買い物をしなければならない。
「こら。咲本さんの格好を見てみ。テニス出来る格好やないやろ」
「えー」
『ま、また……やろう?』
「せやな!また今度な。約束やで」
『うん』
私じゃ相手にならないだろうけど、とりあえず頷いておこう。
「ひなたちゃんは今日お出かけ?」
『は、はい。買い物に』
「買い物〜?じゃあ女の子同士買い物しようやないの」
女の子同士……?まぁいいか。首を縦に振ると他の皆もついて来るらしく、たくさん買い物をして荷物持ちをしてもらった。
別に自分で持てるのだが、小春が私の買った物をユウジや謙也に無理矢理持たせて行くのだ。その光景に私は頬を緩めながら色んなものを買った。ここは素直に甘えさせてもらおう。四天宝寺の人達はやっぱり面白いなぁ。もし私が大阪にトリップしてたらまた違った日常があったのだろうか、と考えてしまう。
「買い物しすぎやろー」
「女の子の買い物に文句言わないのユウくん。ほら蔵リンを見習いなさい。文句の一つもないで」
「俺と持ってる量が違うやん!」
『ふふっ』
今日は大変だったが、楽しい買い物になったと思う。もう少し何か買ってもいいかな……なんて。
私達が笑いあう中、遠くから睨む姿があった。
楽しくお買い物
(何であの子ばっかり)
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