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複数の疑問

顔を赤らめてザワザワとする部員達。この状況を作ったのは勿論きのちゃんだ。きのちゃんが部員に挨拶し、にこりと微笑んだ後は皆イチコロだった。

きのちゃんの周りはあっという間に部員達でいっぱいだ。今からマネージャーの仕事をしなければならないのだが、きのちゃんを呼ぼうにも呼べない。


「ふふ、困ってるね」

後ろから幸村君に声をかけられ首を縦に振ると、幸村君は部員達に指示を出してくれた。きのちゃんから焦って離れて行く部員達。これは幸村君にお礼を言わなくては。


『ありがとうございます』

「仕事よろしく頼むよ」

『はい』

私の背中をポンと押し、幸村君はテニスコートへと歩いて行った。さっきまで沈んでいた気持ちが楽になった気がする。此方を見ていたきのちゃんを呼び部室へと足を運ぶ。


『ドリンクの作り方、教えるね』

「ひなたちゃんって、幸村先輩とも仲良いの?」

『えっ、仲良いって言うか……』

「今、背中押されてたし」

『そ、それはただ、マネの仕事頑張れって意味で』

「私もマネージャーなのに、頑張れとも言われてない。……私ね、テニプリのキャラでは各学校の部長が好きなの」

『うん。そ、そうなんだ』

さっきから話が変わりすぎてついていけない。一体きのちゃんはどうしたんだろう。

「だから立海では幸村先輩が好き」

『う、うん。えっと……ドリンク、作ろう?』

話を逸らしドリンクを作る準備を始めるが、きのちゃんの顔からは笑顔が見られない。何か自分が悪いことをしたのだろうかと頭の中で考えるが、それと言って何もしていない気がする。




休憩時間になりドリンクを部員に渡す。きのちゃんは真っ先に幸村君のところへドリンクを持って行き、他のレギュラーにもドリンクを渡していた。普通だったらムッとするところかもしれないが、きのちゃんは私と同じトリップしてきた子。テニプリのキャラと関わりたい気持ちは分かる。

私はいつもより仕事が楽になったことを喜び、部室に戻った。




********************


「じゃあ、また」

『う、うん。バイバイ』

部活が終わった後、私ときのちゃんは部室を綺麗にするため、部員が帰った後に掃除をしていた。今までそんなことはしたことがなかったのだが、今日幸村君に部室の鍵を貰ったので二人で掃除をしようと決めたのだ。部室の鍵を閉め、きのちゃんが帰っていく後ろ姿を見つめていると、近くで物音がして思わず身構えた。


「お疲れさん」

『えっ、仁王先輩。なんでまだ』

「待っとったんじゃ」

優しく微笑んだ仁王は校門の方へと歩を進めた。


日の暮れかかった薄暗い道を二人で歩く。何故私を待っていたのかを聞こうと口を開こうとしたが、仁王の方が先に口を開いた。

「新しいマネージャー、どうぜよ」

『えっ、きのちゃんですか?覚えが早くてとても助かってます』

「ただの男好き。特に……幸村の事を好いとるんじゃなか?」

ブレザーのポケットに手を突っ込んだまま、顔だけをこちらに向ける仁王。この人は周りをすごく見てる。確かに立海レギュラーの中では、幸村君が好きだと言っていた。しかしきのちゃんは私が見る限り悪い子ではない。


『誰が好き、かは分かりませんが、きのちゃんは良い子……だと思います。私、もっと仲良くなりたいです』

「……まぁ咲本が言うなら、信じてみるかのぅ」


もしかしてきのちゃんの事を疑っていたのかな。仁王をちらりと見ると、私の視線に気づいたようで直ぐに目が合った。

「誘ったのはこっちやけど、水無月が咲本を脅してマネージャーになったんじゃないかと疑ってたナリ」

『そ、そんな!大丈夫です』

「そか。じゃあいいぜよ。明日は部活も休みじゃき、ゆっくりな」

軽く手を振ってさっき歩いて来た道を戻る仁王。気付かないうちに家まで送ってもらっていたようだ。

『ありがとうございます』

やっぱり仁王は優しい。私は鞄から家の鍵を出し、真っ暗な家へと入った。

部屋の電気をつけ椅子に腰掛ける。水無月綺乃……私と同じトリップしてこの世界にやって来た子。まさか私の他にもトリップしてくる子がいるなんて夢にも思わなかった。

どうやってトリップしたのだろうか。私みたいに寝て起きたらこの世界に来ていたのだろうか。複数の疑問が次々とわいてくる。


私は何故自分がトリップしてしまったのか、その上帰る方法さえ分かっていない。分かっているのは、皆に私が別の世界から来たという事がバレれば、この世界からいなくなること。元いた世界に帰れるかどうかは分からない。きのちゃんは一体どこまで知っているのだろう。


考え込んでも仕方が無いかと溜息を吐き、私は晩御飯の支度を始めた。




複数の疑問


(わからない)


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