Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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ノーウェイ

朝、私はきのちゃんをマネージャーに誘う為に早めに家を出て教室で待っていた。そして教室に入って来たきのちゃんをマネージャーに誘ったがあっさり断られてしまった。


しかし幸村君からの頼まれ事を一回断られただけで諦めるなんて駄目だ。ていうか怖い。そう思い私は昼休みにもう一度きのちゃんに頼んでみた。


『お、お願いします』

「私マネしたことないから、皆に迷惑かかると思うし」

『だ、駄目……かな?』

「うーん」


困った顔をするきのちゃんを見て、やっぱり駄目か、と心の中で溜息を吐くと私の頭の上に手が置かれた。

「頑張っているな、咲本」

『あ、柳先輩。何で』


何故ここにいるのかと言おうとしたが、そういえば私が転入して来た時も教室に来ていたなと自分で納得した。私の頭に置いていた手を離し、柳はきのちゃんの方に体を向けた。

「水無月綺乃で合っているか?」

「はい。私に何か」

「データの為に君の事を少し教えて欲しいのだが」

あ、私が転校して来た時と同じだ。そんなに経ってないはずなのにとても懐かしく感じる。


そしてきのちゃんは私と同じように質問攻めにあっていた。そして質問が終わったのか、柳は一拍おいてマネージャーの件について話し出した。


「咲本からも話があったようだが、もし良ければ男子テニス部のマネージャーになってくれないか。俺が見るに君は頭の回転が早い。マネージャーには合っていると思う」

「えっ、そうでしょうか。でも私マネージャーなんてしたことないし、テニスのルールもよく分かってないし……皆さんに迷惑がかかると思うんです」

「少しずつ慣れていけば良い。咲本もそうだった」

「じゃあ……、私で良ければマネージャーさせていただきます」


柳の説得により、きのちゃんはテニス部のマネージャーになることが決まった。そして先程二人の会話聞いていて私ときのちゃんには一つ共通点があることが分かった。それは家に両親がいなくて一人暮らしだということ。きのちゃんの場合は両親は海外赴任中ということだったが、中学一年生で一人暮らしは普通では考えられない話だ。

柳は「じゃあまた部活で」と言って教室から出ていき、きのちゃんは私の前の席に座る。


「やっていけるかな、私」

『いっ、一緒に……頑張ろう』

「そうだね。ひなたちゃんいるし、大丈夫だよね」

『役に立てるか分からないけど……』


「あ、そうだ。テニス部のレギュラーのこと教えてほしいな」

『う、うん。えっと……部長は幸村先輩で副部長が真田先輩。さっきの柳先輩もレギュラーで、昨日会った二人が仁王先輩と丸井先輩』

「へぇ、そうなんだ。皆レギュラーだったんだね。皆三年?」

『うん。二年生は切原先輩だけで、他は』

「柳生先輩に桑原先輩、かな」

『えっ、うん。し、知ってるの?』

柳生は昨日会っていたから知っていると思うが、ジャッカルの事は知らないはず。きのちゃんの怪しげな微笑みに違和感を覚えた。

「知ってるよ。……貴女が何処から来たのかもぜーんぶ」

『っ……』


周りの音が私の耳に入ってこなくなった。頭が真っ白になり何も聞こえない。口は開いても声が出てこない。




どういうこと。何処から来たのか?まさか……


『きのちゃんも……トリップして来たの?』

「そうだよ。やっぱりひなたちゃんもかぁ」

『な、なん、で』

「だってさ、元々立海にマネージャーはいない。なのに私がトリップして来たらひなたちゃんがいるんだもん。おかしいでしょ?」


まさかきのちゃんも私と同じようにトリップして来た人間だったとは。

深呼吸をし呼吸を整え冷静になる。目の前にいるきのちゃんはニコリと微笑んでいて、何を考えているのか分からない。



「だからさ」

目の前に差し出された手。

「トリップして来た者同士仲良くしようね」

『う、うん』


その手を握りきのちゃんを見ると、優しく微笑んでいる。私はこの子と一緒に頑張ろうとそう決意した。



********************


放課後、私はきのちゃんと部室に向かった。私は立海のユニフォーム、きのちゃんは体育で使うジャージだ。

「いいなぁ、立海ジャージ。私もそれ着たい」

『あ、前に貰って……』

「私も貰えるかなぁ」

『うん。貰えると思う』

「じゃあ頑張る。あ、ここが部室だね」

ノックをして部室のドアを開けると、幸村君が数枚の紙に目を通していた。


「やぁ。……君は」

『昨日言ってた、水無月さんです』

「君が水無月さんなんだ。俺は部長の幸村」

「水無月綺乃です。今日から頑張りますので、よろしくお願いします」

「うん、よろしく。じゃあ二人とも十分後テニスコートに集合ね」


十分後か。それならドリンクを作る準備をしておこう。きのちゃんに声を掛けいつもドリンクを作っている場所に移動する。

『えっと休憩時間までに、ここでドリンクとタオルの用意をするの』

「へぇ〜、成る程」

『ど、ドリンクの入れ方は後で教えるね』

「ありがとう」



きのちゃんもトリップしてきたなんて、驚いたけど親近感が湧くし良い子だし毎日が楽しくなりそう。こんな笑い合う日常がずっと続けばいいなと思った。




ノーウェイ


(まさかのトリップ二人目)

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