Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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皆と踊る

「さぁ、本日のメインイベント学校対抗障害物リレー競争です」


桜乃ちゃんと朋ちゃんの二人がマイクを持ち、障害物リレーの説明をする。


私は二人の横で選手の皆を見る。柳は確か一番始めだと言っていたな。……あ、いた。

他の学校のテニス部の皆もいるが、皆いつものテニスのユニフォームではなく陸上部が着るようなユニフォームを着ている。いつもより露出度が高くて目のやり場に困る。この格好で恥ずかしがっている私の方がおかしいのかな。


四百メートル走では柳の他に日吉や英二がいて、特に速そうなのは神尾と謙也だと思う。



「行ってよし」という榊先生の合図とともに選手が走り出す。



「ぬぉぉぉお!!リズムに乗るぜ!」

「浪速のスピードスターが一番早いっちゅう話やー!」


「すごい!不動峰神尾選手、四天宝寺忍足選手、ものすごいスピードです!咲本さん、どちらが勝つと思いますか?」


いきなり朋ちゃんがマイクを私の前に差し出してきて、慌てて口を開いた。


『やっ、柳先輩頑張ってくださいー!』


「おかしいだろ!!」

「なんでやねん!!」


私が柳の応援をマイク越しにすると、神尾と謙也の二人はツッコミを入れながら派手に転けた。


「おおっと!神尾選手、忍足選手転倒してしまいました!」


六角中のバネさんをはじめ、次々と先を越されてしまった二人。私、もしかして悪い事しちゃった……?



そして走り終わった柳と目が合い、口パクで「バカ」と言われた。それにムッとしていると柳は何故か手招きをしてした。

駆け足で柳の所まで行き、柳に持っていたタオルを渡す。


『お疲れ様です』

「あぁ、ありがとう。後は応援をするだけだ」

『そうですね』


「今から精市の所へ行くが咲本も来るか?」

『え?幸村、先輩?……あ、行きます』


桜乃ちゃん達にこの場を離れると報告をしに行き、柳と幸村君の所へと向かう。幸村君もリレーに参加してるんじゃないの?





「やぁ。柳、お疲れ様」

「あぁ」


幸村君はパラソルの下の背もたれ付きのベンチに座っていた。


『……あの、幸村先輩?』

「咲本さんもここに座りなよ」


『あ、ありがとうございます。……じゃなくて!』

「え、どうしたの?」

『先輩、リレーは!?』

「さっきのバスケで疲れたから休憩。それにリレーは見る方が面白いだろう」


『えぇー……』


柳を見ると、やれやれと言った顔をしていたのでそれ以上何も言わず、大人しく幸村君の横に座った。






モニターを見るとジャッカルや他の人達がスキーをしていた。何故雪山があるのかという疑問が浮かんだが、跡部財閥が作ったという実況を聞いて納得した。




その後も幸村君と柳と一緒に立海の皆を応援するが、優勝したのは青学と氷帝で結果は残念ながら良くはなかった。まぁ皆が楽しそうな表情で帰ってきたから良しとしよう。




********************



あっという間に日が暮れ、私は立海のメンバー達とキャンプファイヤーの前に立っていた。見渡すと樺地が綺麗な女の人と踊っていたり杏ちゃんがお兄さんと踊っていたりしていた。


「ひなたっ!踊ろうぜ」

『えっ!?あっ、ちょっと……!』


「おい赤也!抜け駆けは駄目だろぃ!」


赤也は私の腕を引っ張り、踊っている輪の中に入る。


『私、踊ったことないですけど』

「あー、俺もねぇ。まぁ何とかなるって」


周りの人のダンスを見よう見まねで踊る。少しして余裕が出てきたのか赤也が口を開いた。


「今日はさ、楽しかったよな!ひなたのメイド姿も見れたし」

『あっ、あれメイドじゃないです!』


「あーあ。写真撮っとけば良かった」

『写真なら……あ、いや』

「?」


喫茶店の制服姿なら財前に撮られて四天宝寺の人にばらまかれたが、言わないでおこう。


「さーて、交代じゃき」

「えっ?マジすか」


仁王に赤也から引き剥がされるように引っ張られ、片手を掴まれたと思えばしゃがんで指にリップ音。


『えっ……?』

指に熱が集まる。仁王はしゃがんだままニヤリと口角を上げ、そして立ち上がりダンスのステップを踏み出した。


「今日は色々と頑張ったのぅ。これはご褒美じゃ」

『へっ、』


頬の熱が上がりぽかんと口を開けた私はとても間抜けな顔をしていると思う。そんな私を無視して仁王は楽しそうにステップを踏む。


そしてくるりと回されたと思ったら、いきなり仁王の手が離れてバランスを崩した。


「おっと、大丈夫ですか?」

『わっ柳生先輩』

「次は私の番です。よろしくお願いします」

『はい、こちらこそ』


ふわりと私の体を支えてくれたのは柳生だった。私が返事をして一拍おくと、柳生は少し下を向いた。


「……私への苦手意識はなくなりましたか?」

『えっ?』

「私の勘違いで私たちの出会いは良いとは言えなかったでしょう」


『……あぁ、まぁ。でも柳生先輩良い人ですし、もう苦手じゃないです』

「そうですか、良かった。それだけ聞いておきたかったのです。……次は真田君ですね」


そう言って柳生は優しく微笑みながら私の体を真田の方に向かせた。


「咲本」

『はい』

「すまない」

『えっ?』

「最後のリレーで立海が優勝出来なかっただろう」

『いえ、あの……バスケで優勝してましたし、それに先輩方の楽しそうな笑顔だけで……充分と言いますか、その、えっと』

「ふっ、そうか。しかし次はテニスで勝つからな。お前に優勝トロフィーを持たせてやる」

『ありがとうございますっ!』


「真田〜。次俺の番だろぃ」

「そのようだな」




「ダンスも天才的に踊ってやるから安心していいぜぃ、ひなた!」

『あ、はい』

いつものピースとウインクを決めるブン太に笑みがこぼれる。ステップを踏み出すと本当に天才的で驚いた。


「ひなたの好きなタイプって、人を惹きつけるテニスするやつだったよな」

『っ!』

「俺のテニスで惹きつけてやるから、しっかり見とけぃ!」


そしてブン太の手が離れ、人差し指で私の額をツンと押した。そして「次、ジャッカルな」と言い私から離れた。……ドキドキが止まらないんですが。


「ダンス疲れてないか?」

『だ、大丈夫です』


「八人と踊るんだもんな。大変だな咲本も」

『いえ、その……楽しいです』

「そっか。ならいいんだ。じゃあ次はお前のお母さんだな」


笑いながら肩にポンと手を置きジャッカルは去って行った。本当爽やかだなぁ。


ジャッカルの後ろ姿を見ていると私を呼ぶ柳の声が後ろから聞こえた。


「咲本の顔が赤くなっている確率89.5%」

『なっ!』

バッと振り向くと柳は口角を上げ「当たりだな」と言った。真ん中にある大きな炎でバレないと思っていたが、流石お母さんと言ったところだろうか。


柳を見るとどうしたのか何か考える仕草をしていた。


『どうしました?』

「……また落ち着いた時でいい。お前に聞きたいことがある」

『えっ……』

「じゃあな」


意味深長な言葉を残し柳は私に背を向け去って行った。そして幸村君が此方にやって来た。


「どう?楽しんでるかい」

『あっ、はいとても』

「俺もこうやって咲本さんと踊れて楽しいよ。嬉しいのもあるかな」

『ダンス好きなんですか?』


「……ふふっ。うん、好きかもね。君に遠回しな言葉は効かないみたいだ」

『?どういう意味……「いやいいよ気にしないで」は、はい』



そして私は立海の皆とキャンプファイヤーで踊り、この文化祭の終幕の時間へと近づいていった。




皆と踊る


(ずっとダンスしてたから)
(ちょっと疲れたな)


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