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お母さんが出来ました!

「ひなたちゃんって転校生なんだよね!?そうなんだよね!」
『えっそうだよ』

昼休みになるといきなりチーちゃんがわけの分からない事を言い出した。何が言いたいんだろう。

するとクラスメイトがチーちゃんの言葉に反応し、そっかー!とかやったー!とか言ってる。

『つ、ついていけない。どういう事なんだ』
「立海に転校して来たらビックなイベントがあるんだよ!まぁ女子にとっては……だけどねっ」
『う、うん?』

全然分からないんだけど。イベントかぁ一体何が起きるんだろう。するとうちのクラスの教室のドアが音を立てて開いた。

「このクラスに転校して来た咲本はいるか?」

え?……えぇぇぇぇ!?柳!柳蓮二がいる!クラスの女子がキャーキャー言ってる。てか咲本って誰だ、呼ばれてるよ!

ってあれ?咲本は私だ。

「や、柳先輩!咲本さんは窓際の一番後ろの席の子です」
「すまないな、ありがとう」
「い、いえ!」

クラスメイトの女子が顔を真っ赤にしてそんなやり取りをしているのを見てると、柳とバッチリと目が合った。

「咲本ひなたで合っているか?」

前の椅子に腰を下ろしながら言う柳はイケメン過ぎて。私は緊張しながらも首を必死に縦に振る。

「データの為にお前の事を少し教えて欲しいのだが」
『は、はい』

ふぇー何か律儀だなぁ柳って。勝手に個人情報調べてられてるかと思ってた……

「咲本ひなた、身長は153.3センチ、体重は『ピーー!』どうしたんだいきなり」

前言撤回。やっぱ怖いこの人。というか皆のいる前で体重を暴露されてたまるか。

「部活はもう入っているか。もしくは入るつもりはあるか?」
『ど、どちらもいいえで』
「そうか。では家族構成はどうなっている」
『……』



これはどう答えようか。前の世界ではちゃんと両親がいたけど。この世界では私一人だからなぁ。



「咲本?」
『えと、いない……です』

すると私達の方に集中していたクラス全体がざわつき始めた。あー、言わない方が良かったかな。まぁ私も高校を卒業した年齢だし別に一人でも大丈夫……一人で、も

「場所を変えよう」
『っ!』

柳は席を立ち私の手をとり、教室を出る。そして近くにある理科室に入る。

「すまない咲本」
『なんで』

柳が謝るの?別に変な事は聞いてないよ、両親は死んだわけじゃない私がトリップしただけ。

するといきなり柳の手が私の頭を撫でた。途端私の中のずっと我慢していたものが一気にはじけた。頬に何かが伝う、年下の前でこんな姿を見せるなんて恥ずかしい。

「我慢しなくていいから泣け。お前が泣いた事は口外しない」
『うぅ……!』

情けないけど淋しいよ。だって頼る人が誰一人居ないんだもん。



私の涙が止まるまで柳は頭を優しく撫でてくれた。男子に優しくされたのは初めてだったからちょっと照れた。

「落ち着いたか咲本」
『すいません、みっともないところを見せてしまって』
「いや気にするな、俺も無神経な発言をしてしまった。すまない」
『大丈夫です』

「そういえば咲本は男が苦手だとデータに書いてある」
『っ!』
「だがもし頼る人が居ないのなら俺のところに来い。俺はお前に冷たくはしない」
『!……ありがとうございます』

この人、私の全てを分かっているみたい。男子が苦手な理由それは冷たくされるのが嫌だから。私の経験上、男子なんて皆悪口を言ってきたり無神経にものを言う生き物。
でも柳って何か男子って言うよりも

『お母さん……!』
「は?」

や、柳が開眼した!怖い……と思っていたら急に何故か笑い出した。

「フッ、お前がそう言いたいならそう言えばいい」
『え、いいんですか?』
「あぁ構わないが」

ええぇ、良いのか!柳ってこんなキャラなの!?

「……名前を言っていなかったな。三年の柳蓮二だ」
『柳……先輩。私は、って知ってますね』
「そうだな。やっと目を見て話すようになったな咲本」

そういえば柳に少し慣れてきたかもしれない。……あれ、目を見て?目を……見、て?

「咲本、失礼な事を考えてたら頬をつねるぞ」
『ぎゃあ!』

またもや開眼!何故思考を読まれたんだ。

「お前は考えている事がバレバレだ」
『初めて言われました』

「もうそろそろ昼休みが終わるな。教室に戻るか」
『御意』
「咲本の中身は変人」
『ごめんなさい。データに加えないで下さい』

私のクラスの教室の前まで来ると柳は此方を向いた。

「色々話を聞いてやるからいつでも来い。遠慮は要らない」
『ありがとうお母さん』

ふざけて言ってみると、柳は優しく笑いポンと私の頭に手を乗せその場を去った。何か凄く安心したよ、お母さん。
教室のドアを開けるとクラスのほぼ全員が私の方を見た、怖い。そしてチーちゃんが眉を下げて近づいて来た。

「ひなたちゃん、私を頼ってくれて良いんだからね!何でも相談に乗るからね!」

もしかして私の家族がいないと聞いて心配してくれているのだろうか。チーちゃんの言葉に続きクラスの皆も優しい言葉をかけてくれた。

『ありがとう!』

あぁほんとクラスに恵まれたなぁ私、なんて思いながらも私は笑顔で友達の方へ向かうのでした。




お母さんが出来ました!

(今日は心のモヤモヤがスッキリした一日だった)

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