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投げなければよかった

「やっぱりかっこいいねー、テニス部」
『うわっ、ボール早い!いいなぁ。私もあんなのが打てるようになりたい』
「……ひなたちゃんって変わってるね」
『えっ!ごめん!えっと何で?』
「普通見るのは技じゃないでしょうよ」
『いやいや皆が皆そうじゃないでしょ』
「うーん、でも……いやひなたちゃんはそれでいいよ」
『う、うん?』

何か若干チーちゃんに呆れられたような……。気のせいじゃないはず。だってやれやれ、みたいな顔してるもん。

「というかひなたちゃんはテニス経験者?」
『いや、違うよ』
「そうなんだ。技ばっかり見てるからてっきりそうだと」

実は経験者なんだけどね。但し今見ている硬式テニスじゃなくて、軟式テニスの方なんだけどね。柔らかい方。だからテニス技には興味心身なのです。
チーちゃんに言われた通り技じゃなくて顔を見てみると、やっぱり皆さん整っております。漫画やアニメよりも生で見た方がかっこ良く見えるのは気のせいじゃないだろうな。

『それにしても凄いね、テニス部のファン』

チラリと横を見れば、フェンスに張り付いてレギュラー陣を見ているファン達。コンサート並に煩いね、これ。レギュラーも大変だな。

「まぁ、ファンクラブがあるからね」
『チーちゃんは入ってるの?』
「私は入ってないよ。面倒くさそうだしさ」

そっかー、チーちゃんは入ってないのか。テニス部好きは皆入るものだと思ってた。
……あれ、ちょっと離れた所に黄色くて丸いものが。テニスボールだ。チーちゃんを見るとファンクラブみたいに叫んではいないものの、フェンスに張り付いてテニス部を見ている。

『仕方ない、投げてやるか』

投げてコートに入れてあげよう。こっそりとその場から離れボールがある方に近づく。

『よいしょ。フェンス結構高いな、届くかな?……てい!くそぉ、届かない』

よし、本気で投げてやる!とりゃぁぁあ!と声を出しながらテニスボールを、フェンスを越えるように投げる。

『やった!入った……ぁ』

「いてっ!」

あぁぁぁぁぁあ!!やってしまった!投げることに夢中で、フェンスより中にいる人に当たってしまった。こんなことなら投げるんじゃなかった!……って、あのこんがり焼けた肌にスキンヘッド。ジャッカル!!

「誰だ、ボール当てた奴。あっ……」
『っ!!』

目が合ってしまった!いやもうしっかりと!うわぁぁぁあ、謝らないと。

『ご、ごめんなさい。すすすすすいません。わわ、わざとじゃ、ああありありありません!』

「あ、あぁ。別にそんなに痛くなかったし大丈夫だぜ。てか吃り過ぎだろ」

『う、あっすいません』

ボール投げてくれてありがとな、と爽やかな笑顔で言うジャッカルに心の中で何度もお礼を言いながらも、私は凄い量の汗を流していた。勿論緊張の意味での。




「お前、初めて見る顔だな。ファンクラブの奴じゃ……なさそうだな」
『ははははい、昨日から立海に……!』
「転校生か。一年?」
『は、へい!』
「……ぶっ!へいって何だよ」
『え、いや……その』

ジャッカルに吹かれた。ああああ、もう穴があったら入りたい!恥ずかしい、もう嫌だー!

「あ、俺は三年のジャッカル桑原、ジャッカルでいいぜ。よろしくな」
『えっと、咲本ひなたです』
「咲本か。咲本は何でテニス部に?誰かのファンか?」
『いえ、私はプレイを見に……。け、経験者ではないんですけど』
「!……そうか、じゃあしっかり見ていけよ」
『は、はい』

すると遠くの方でジャッカルー!と呼ぶ声が聞こえた。おそらくブン太だろう。此方に走ってくる足音が聞こえたので、私は逃げる。逃げるったら逃げる。




********************



「おせーよ、ジャッカル。早くラリーしようぜぃ!」
「悪い。ちょっとコイツと話してて……ってあれ?」
「もしかして今走って行ったアイツのことかよ?……あぁぁぁ!アイツは!!」
「何だ、知り合いか?」
「アイツ俺を見たら逃げるんだよ」
「……ブン太、お前何かしたのか?」
「何だよ、その疑いの目は。何もしてねーって!」
「じゃあ何で……」
「男が苦手らしいぜぃ。でもよ、仁王に話しかけられた時逃げなかったし、俺だけ逃げられてる気がするんだよなー」
「苦手か。だからあんなに吃ってたのか」

「そういや何でアイツと話してたんだ?」
「まぁ色々あってな。俺たちのプレイを見に来てたみたいだぜ」
「へぇー、女なのに変わった奴だな」
「まぁ根は良い奴だとは思うけどな」
「俺を見て逃げる奴なんて良い奴な訳ねぇだろぃ。今度見つけたらぜってー捕まえる!」
「……」




投げなければよかった


(あっ、ひなたちゃん!どこ行ってたの?)
(あはは、ごめんね)
(さ、じゃあ帰ろうか)
(うん)

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