友達と学校見学
緊張し過ぎて手が震えてる。普通の子ってどうやって異性と話してるんだろう。意識して話すものじゃないのかな?あぁ、もうわかんないやっ!
『はぁ、死にた……間違えた帰りたい』
教室のドアを開けると教室内にいる数人の生徒の目線が集まる。これも私にとっては恐怖でしかない。
「おかえり!ひなたちゃん」
『あ、ただいま』
ニコリと笑顔を作ろうと頑張る。そういえば元の世界の友達に、アンタいつも怒ってるように見えるわよ、って言われたことがある。自分は笑顔のつもりでも周りから見たら無表情のようだ。
今は大丈夫だろうか。あ、クラスの友達になってくれた数人がこちらを見て微笑んでいる。心の中でホッと安心する。これだこれ、私はこうやって友達と平凡に暮らせたら良いんだよ。元の世界のように。別に無理に男子に関わらなくてもいいんだ。
気持ちを切り替えて授業しよう。いやもう始まってるんだけどね。あ、あれ?ボーとしてたから気付かなかったけど、私もしかして当てられてる?
「ひなたちゃん、問三当てられてるよ」
『あ、ありがとう』
……やっぱり当てられてたか。前に出て黒板に書かないといけないのか。前に出るの嫌だ、緊張するもん。
「咲本ー!早く書きにこーい」
分かったよ、分かったから大声で呼ばないでよ先生。皆の視線が私に集まるじゃん!
緊張しながら前に出る。そういえば問三一回も見てないな。でも問題書いてくれてるし中一レベルだしいけるか。……よし問三いける、良かった。スラスラとチョークを進め、先生を横目で見ると笑顔で何度も頷いている。どうやら合っているようだ。
「よーし咲本、正解だ。転校生は優秀優秀!」
下を向きながら窓際の一番後ろの自分の席に戻る。隣には話せるようになった女子がいるから安心。アダ名はチーちゃんらしい。
「凄いね、ひなたちゃん数学得意なの?」
『う、うん』
椅子に腰を下ろしながら答える。元は大学生になる予定だった子だからね。それにしても中学校ってこんな感じだったっけ?立海は教室が広いし食堂あるし屋上行けるし。元の世界の中学校とは真逆だな。昼食なんか決められたグループで机くっつけて食べてたからね。ここは楽でいいなぁ。
そんなことを考えながらノートをとっていると、あっという間に授業が終わり休憩時間だ。
「ひなたちゃん!何か困った事ない?聞きたい事とかさ」
『えーと、じゃあ校内を案内してくれると嬉しいな』
「おっけー!放課後でいいかな?」
『うん、ありがとう』
「ひなたちゃん、案内行くよー!」
そんなこんなでやって来ました放課後!チーちゃんが元気よく私に声を掛ける。
『うん、行く行く!』
私ちょっとチーちゃんに慣れてきたかもしれない。私慣れた人には煩い奴だと思われるからね、きっと。
「一番近いのはやっぱり屋上だよね〜。もう行った?」
『うん。昼ご飯そこで食べたよ』
「だからか遅かったの。教室で皆で一緒に食べたのに」
『あはは、ごめん』
「あ、屋上行ったなら幸村先輩が育ててる花見たでしょ!」
『見たよ。凄いねあれ』
「だよね〜。あ、幸村先輩って言う人はテニス部でイケメンで王子様って感じの人なんだよ」
『へぇーそうなんだ』
まぁテニス部は全員知ってるんだけどね。というかテニス部の話題になってしまった。
「他にもテニス部のレギュラーは皆イケメン!……なんだけど」
『け、けど?』
チーちゃん下向いて黙っちゃったよ。えっ、何。テニス部には何か秘密があるとか?
「うちの学年にはレギュラーが一人もいないの!!」
『……あぁ』
焦って損した。そりゃ二年の赤也以外、皆三年なんだからしょうがないでしょ。何か凄く悔しがってる。今凄く面白い顔してるよ、チーちゃん。
屋上のドアを押すと昼と同じく花、花、花。やっぱり綺麗だなぁ。横にいるチーちゃんを見ると笑顔で目を輝かしている。
「よし、じゃあ次行きますか!」
『おー!』
それから図書室や理科室、家庭科室等いろんな所を教えてもらった。そして全部周り終わった頃には、案内をしてもらってから一時間程経っていた。何か申し訳ない。
「よーし、これで校内全部回れたかな?」
『ありがとう。助かったよー』
「いいよ〜。あっ!ひなたちゃんこの後まだ時間ある?」
『う、うん。暇だよ』
「テニス部!見に行こうよ!!」
『……うん』
友達と学校見学
(テニス部かぁ)
(まぁ見に行く予定だったからいいけど)
(昨日みたいに声掛けられませんように)
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