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そしてまた誤解がうまれた

ドリンクを作り終え、テニスコートに戻った私と財前。すると四天宝寺のレギュラー達は練習をやめて私達にお礼を言いながらドリンクを飲んだ。いつの間にか千歳も練習に参加していたようだ。

ドリンクの分量は良かったみたいで好評。……ただ一人を除いては。


「うっす!めっちゃ薄いでこれ」

「何言ってんねん謙也、めっちゃ美味いやん」

「謙也さん味覚おかしなったんとちゃいます?」


まさか自分のドリンクだけ薄く作られているなんて疑わない謙也は、首を傾げながらまたドリンクに口をつけていた。




そしてグサグサと突き刺さるような視線。その視線におどおどしていると白石がぼそりと「何があったか知らんけど、あっちに行ったり」と言ってきたので、こくりと頷き赤也の方に駆け寄った。


『せ、先輩っ』

「……何だよ」


すっごい口を尖らしてムスッとしてる。可愛いんだけど。


『その、すいません。はぐれてしまって』

「……好き、なのか?」

『えっ?』


はぐれることが好き?……いやいや違うよな。
えっと、千歳のこと……かな?
話せばちょっと長くなるんだけど、一から話そうか。





********************



「ふーん。じゃあ告白じゃなかったんだな」

『は、はい』


「切原くーん!良かったら練習参加せぇへん?」


何とか話がつき、ホッと息を吐くと白石が少し離れたところにあるコートで赤也を呼んでいた。


「……俺ら偵察しに来たんだよな」

『うっ、はい。でも、もう無理……』

「ハァ……だよな。よし、ラケット借りて俺も打ってくるぜ」

『はい!』



四天宝寺のメンバーに加わり赤也も練習に参加する。本当、偵察しに来るつもりだったのに予想外の展開である。


皆やっぱり強いなぁ、と感心しながら見ているとベンチに置いてあった携帯が音を立てていた。


誰のだろう。すると謙也がタオルで汗を拭いながらこちらに向かってきた。


「あ、俺の携帯鳴っとった?」

『はい』


謙也は携帯を開けカタカタとボタンを押す。部活中にいいのか携帯触って。ジッと謙也を見てると、謙也は私の視線に気がつき口を開いた。


「いつもは部活中に携帯いじくらんで!今日の部活は自由参加やから楽にしてえぇねん」

『あぁ』


私が返事をするとまた携帯に視線を戻した謙也は、メールの内容を読み眉をぴくりと動かした。何かあったのだろうか。


「何やねんあいつ。俺がモテへんやとー!……なぁ、俺ってモテなさそう?」

『え?い、いや大丈夫……だと』

「彼女ぐらいおるわって嘘ついとこ」


どうやらメールの相手と少しもめてるみたいだ。内容は謙也がモテるかモテないか。

すると謙也はこちらを向き話し始めた。


「いやなんかな、侑……メールの相手が、俺がスピードスピード言うてるからモテへんのちゃうかて言ってきてな」

『は、はぁ』

「あ、返信きた。……は!?写メやて?」


馬鹿だこいつ。この流れで彼女いるって言ったらそりゃ証拠見せろってなるだろうよ。

早くこの場から去ろう。頑張れ謙也。


そう思い謙也から離れようとしたのだが、私の前に立ち塞がる誰か。謙也は後ろで唸ってるので違う人だ。

下を向いてるので誰か分からないが、とりあえず前に進みたいのでその人を避け踏み出そうとする。しかしどうやらこの人は私を前に進ませないつもりだ。私が避ければこの人も同じ方向に進む。


苛立ちを含めて顔を上に向けるとニヤリと口角を上げる財前。


「面白い事してるやん。謙也さんに協力したりぃや」

『い、いやです』

「まぁまぁ」

と言いながら財前は私の背中を押し謙也の方へ歩かせた。


「謙也さん、咲本が助けてくれるって」

『え"……』

「ほんまか!ありがとう咲本!」


ぐっ、なんだこのキラキラビーム。


「じゃあ写真撮ります」


そして私と謙也にカメラを向ける財前。メールの相手は謙也の事よく知ってるみたいだから、クラスメイトだろうし、私のこと知らないしまぁいいか。


「もっとくっついてくれなカップルっぽくないっすわ」

「お、おう」

『……は、はぁ』


謙也をチラリと見ると少し顔が赤くて緊張してるように思える。うん、うぶな人だな。相手が緊張してる為私の方は何故か緊張が和らいだ。

そしてシャッターがきられる。


「あ、ありがとうな」

『いえ』


「よし、これでええやろ……送信っと」


顔を強張らせながら送信ボタンを押す謙也に対し、財前は相変わらず楽しそうな顔をしている。



数分後、謙也の携帯は先程とは違う音が鳴った。


「もしもし。なんや?……え?ひなたちゃん?もしかして侑士、知り合いなん?」

『えっ……』

ま、まさかメールの相手って忍足侑士だったの!?


「え、変われ?おん分かった」


そして謙也が私に謝りながら携帯を渡す。

『えっと、咲本です』

「ひなたちゃん、謙也と付きおうてたん?」

『い、いえ』

「そうか……何や、安心したわ。嘘かいな。あいつと付き合うなんて絶対やめときや」

『あ、はい』

「それでな、メール見た瞬間驚いて声出してもうて、氷帝のレギュラーに……ちゅーか跡部に誤解が……あ!跡部さっきの誤解やでー!あーあ、行ってしもた」

『……』


何か大変な事になってない?……うん、私は知らない知らないぞ。


携帯の電源を切った私は謙也に携帯を返す。


「すまんなぁ。大丈夫やったか?」

『多分、誤解……解けた、と』


うん、多分ね。ハァ、早く帰りたい。




そしてまた誤解がうまれた


(赤也を見ると)
(楽しそうにテニスをしていた)



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