到着を待って
私は今ユウ君こと一氏ユウジ君にガン見されてます。というか睨まれてます。
「……何で小春が喋りかけてんのに目合わせへんねん」
『っ……』
無理なんですよー!そして殺気むき出しで睨まないで下さい。た、助けて誰かー……お母さーん……。
「何してはるんですか、ユウジ先輩。めっちゃ怯えられてますよ」
ざ、財前……。この人毒舌だから嫌なんだよね。そんなことを思っていると財前が無表情で近づいて来て、私の両頬をつねった。
……地味に痛い。って何で私つねられたの?
「お前こそ何してんねん!」
「いや、緊張ほぐしてやろか思いまして」
やだ、この二人……。ていうか早く部活始めてよ。私端の方にいるからさ。
「立海の切原と何しに大阪来たん?」
不意に財前が私に聞いてきた。
どう答えようかな。偵察って言うのもなんだし……。
『か、観光……に』
「ふーん。それで、はぐれるとか馬鹿とちゃう?うちの学校にまで迷惑かけて」
『……』
「こら財前、咲本さんをあんまいじめたあかん。ごめんなぁ咲本さん。別に迷惑やなんて思ってないからな」
「せやで、俺なんかいつもこいつに毒吐かれてばっかりや」
『は、はい』
白石と謙也が私と財前の間に入ってくれて助かった。でも財前の言う通りだよね。私が赤也とはぐれなければ……そしてスマホをちゃんと持って来ていればこんな事にはならなかったのに。
「気にすることあらへん」
『えっ、』
今どこから声が聞こえたんだろう。優しくて温かい声だ。神様かな?なんて馬鹿なことを考えながら見上げると、銀さんが立っていた。
わっ、身長高い。そして頭が太陽の光に反射して眩しい。……失礼ですねごめんなさい。
「困った時はお互い様や。自分を責めたらあかんで」
『……グスッ、ありがとう、ござ、います』
銀さん優しい。優しすぎてちょっと泣きそうになった。すると白石がこちらに近づいてきて口を開いた。
「咲本さん。立海の方から切原君に連絡いれてもらうことなったから、ちょっとしたらここに来ると思うわ」
『あっ、ありが、とうござい、ます』
良かった。赤也、早く来てくれないかな。
そして四天宝寺のレギュラー達は練習する準備をし始めた。白石と謙也が来るまで一体何してたんだろう。
「何で咲本は一年やのに二年の切原と知り合いなーん?」
金ちゃんが首を傾げて聞いてきた。可愛い……。あ、目線同じくらいだ。ちょっと私の方が身長高いよね!身長高い人ばっかりだったから何か安心。
『んー、マネージャー……してた、から?』
「マネージャーしててんや!白石ー!咲本、マネージャーしててんてぇー!」
『ちょっ、』
声でかっ!そして皆に聞こえるように言わないで。
「へぇ、立海のマネやったんや」
「部長、切原を待ってる間この人にマネの仕事させたらどうです?うちマネいませんし、今日はレギュラー以外もおらへん」
「いや、うーん。でも悪いしなぁ」
『あっ、の……迷惑、かけました、しっ!何……でも言って、下さい』
よし、よく言った私。頑張ったぞ。
「白石ー!わいマネージャー欲しかってん!やってもらおうや〜」
「……せやな。じゃあ咲本さん、悪いけど切原君来るまでマネやってくれる?」
『はっ、はい!』
それで何すればいいのかな?何か指示してくれるのを待っていると、白石は無言。周りを見渡すが周りのメンバーも無言。……えっ?
『えっ、あの……』
「マネージャーって何させればいいんや?」
「分からへん。マネージャーおったことないからな」
「何言っとんのですか。雑用させればいいんとちゃいます?」
「え〜?応援とちゃうんー?」
「汗を拭いてあげればいいんちゃう?はぁ、イケメンの汗を拭いてあげたいわぁ……」
「俺の汗拭いてーや、こはるぅ!」
「ドリンク作るんちゃうん?」
「「「「……」」」」
そうそうドリンク作るんだよ。……って、
「「「「アンタだれや!」」」」
「なんでやねん!!」
本当誰ですか。頭がツンツンしてる……こんな人見たことないなぁ。ていうかいつからいたんだろう。
「副部長の小石川や!あほ!」
「いつからいたんすか、全然気づきませんでしたわ」
副部長さんだったのか。あぁ、何か可哀想な人だなぁ……。周りも財前の言葉に同意するようにこくこくと頷いている。
「よし、じゃあ部室にドリンクの粉とボトルがあるからお願い出来る?」
『り、了解です』
そして部員達は練習を始め、私は部室へと向かった。
部室のドアを開けて中に入ろうとすると、壁に当たった。何故。
よく見てみると壁ではなく人で、目線を上げると千歳千里が立っていた。身長がすごく高いです。はっきり言って怖い。
「ん?何か当たったばい」
頭を下に向けた千歳と目が合った。
「誰と?」
到着を待って
(四天宝寺でマネージャーを)
(することになりました)
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