大阪に来てしまいました
跡部に家に送ってもらい、ベッドでくつろいでいた時スマホが振動した。
差出人:切原赤也
本文:
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明日暇?
他校の偵察に行くから
ついてきてほしいんだけど
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偵察かぁ。ていうかマネージャー多分続けることになってるんだよね、私。それなら行かないと駄目かな。
『分かりました……っと』
差出人:切原赤也
本文:
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さんきゅー
ひなたの家、幸村部長の前だったよな?
八時に迎えに行くぜ!
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『えっと……了解です、っと。八時か、ちょっと早めに行くんだなぁ』
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用意を済ませてのんびりと紅茶を飲んでいると、ピンポーンと家のベルが鳴った。そして財布を持ってガチャリとドアを開けると赤也が立っていた。予定より十分ほど過ぎてはいるが、本人が焦っていないのを見たところ別に支障はないのだろう。
「よう」
『お……はよう、ございます』
動きやすいラフな格好をしてきたのだが、赤也もそんな感じだったので安心した。
「じゃあ駅向かうか」
駅?そんな遠い所なのか。バスで行くものだと思ってたけど……ってあれ、どこの学校に偵察しに行くのか知らない。聞いても分からないかもだけど。
『あの……偵察、どこに行くんですか?』
「ん?大阪」
『え!?』
「……あれ?言わなかったっけ?」
『し、知らないです』
「今から大阪行くんだよ。四天宝寺って中学。幸村部長にひなたと行くように頼まれてさ」
う、嘘だろ。今から大阪!?しかも四天宝寺ってあのエクスタシーとかスピードスターとか言ってる人達がいるところだよね。テンションが違いすぎるところでしょ。先に聞いてたら絶対行かないのに。
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着きました、大阪。
「ひなた!大阪だぜ!」
そう言って辺りをキョロキョロ見渡す赤也。可愛い……。
「四天宝寺行く前にちょっと大阪観光しようぜ」
『は、はぁ。て、偵察は……?』
「ちょっとだけだって!その後行く行く」
確かに観光楽しそう。大阪来るのは初めてだ。周りの人達の会話を聞くと関西弁。おぉ……!
「じゃあまずはたこ焼き食おうぜ」
『本場のたこ焼き……!』
「ぷっ。何だよ、ノリノリじゃん」
『……』
いいもん、ノリノリでも。実際心の中ではテンション舞い上がってるからね。
赤也と一緒にたこ焼きを買いに行く。たこ焼きを売る場所の前には長蛇の列。周りも凄い人ですぐに、はぐれそうだ。
……ってあれ?
先程から赤也の声がしないと思い周りを見渡すと知らない顔ばかり。
『えっ……、切原先輩……?』
少し歩いて探してみるが、やはりいない。完全に赤也とはぐれてしまった。
あ、そうだ。メールすればいいんだ。ポケットを探ってみるが財布しかない。どうやらスマホを家に忘れてきてしまったようだ。こんな時に限って忘れるなんてどんだけ不幸なんだよ私。
道の真ん中で突っ立ってても邪魔なので、道の隅に行きそこから赤也を探す。
数十分が経つがまだ見つからない。そして私は連絡するものがなく、公衆電話を使おうかと思ったが誰の番号も分からない為どこにも電話をかけることができない。
『……ハァ、もう、どこ行ったの……バカヤローっ、うぅ』
一人で心細くなり目に涙が溢れた。動揺して今からどの行動を取れば良いか分からない。
『っ、ひっ……くっ、うぅ……』
「どうしたん?どこか痛いんか?」
『っ!?』
道の端の方で誰にも見えないように泣いていると誰かに声をかけられた。……この声知ってる。
もしかして、と顔を上げると予想通りの人物が立っていた。
「大丈夫?」
四天宝寺中学の部長、白石蔵ノ介。
白石は眉を曇らし私の顔を覗いている。あ、何か言わないと。
『だ、大丈夫……です』
「そうなん?何で泣いてんの?」
『や、ちょ、っと……はぐ、れて』
「友達と一緒に来てたん?標準語ってことは東京かどっかから来たんやな〜。まぁ一緒に探したるわ」
『え、でも……迷惑に。いい、です』
「ええねんええねん」
そして笑顔をこちらに向ける白石。……モテる男は違うな、なんてバカなことを考えながらも赤也探しに手伝ってもらうことになった。
大阪に来てしまいました
(赤也すぐに見つかるといいんだけど……)
(ひなたどこ行ったんだよ!)
(手でも繋いどけば良かったぜ)
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