体力作りって大切
私と不二君、忍足と裕太ペアで始まった試合。隣のコートでは桃城と神尾、越前と伊武がダブルスをしている。
サーブ権は忍足達からで私が次にレシーブをするのだが、忍足のサーブ……怖い。不二君は普通に打ち返したけど、ほとんど初心者の私にテニプリキャラのサーブを打ち返すなんて、無理だ。
すると忍足は私に向かってサーブを打ってきた。……が、ボールのスピードで分かる。手加減してくれてる。ありがたや……。
パコーン、と音を立て打ち返すと忍足は一瞬驚いた顔をし、口角を上げボールを打ち返した。
以前伊武とペアを組んだ時もそうだったが、今回も私が前衛なので、後衛の不二君が頑張ってくれている。ラリーが続くのも不二君のおかげだ。
二対一といっても良いぐらいだからね。
そして何と言っても三人の技。これが間近で見れるのはすごく美味しい。
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試合が終わり……というか、私の体力が持たなかった為、強制的に終わり決着はつかなかった。
『ご、めっ……はぁはぁ、なさ……いっ』
息切れしながら謝ると不二君がいつもの笑顔で「大丈夫だよ」と言いながら近づいてきた。
「試合、長引いていたからね。それに咲本さん初心者なんでしょ?気にすることないよ」
『……はぁはぁ』
流石テニス部……。全然息切れしてない。そして向かい側のコートから裕太と忍足がやって来た。
「咲本、大丈夫か?そんなに無理しなくても良かったんだぜ」
『っはぁ……す、すいまっ……せん』
「ひなたちゃん案外やるやん。びっくりしたわ。今度は二人でしようや」
「忍足さん、咲本は俺と先約があるっス」
「そうなん?じゃあその次でえぇわ。またどっかで打とうや」
先約?あれ、リョーマとテニスする約束なんてしたっけ?今体が疲れすぎて何も考えられない。
「二人ともごめんね〜!ひなたちゃんもまた会おうね」
杏ちゃんが此方に手を振り、急ぎながらこの場を去る。どうやらお兄さんとのデートらしい。
「あれ?橘の妹じゃなくてひなたちゃんがいるにゃー!」
「四角関係じゃなかったんだ」
すると英二と大石を始め乾や河村がやって来た。四角関係?何を誤解してたんだろう。
「先輩たちー!何でここに!?」
そう言って桃城やリョーマが青学の先輩達の方へ駆け寄る。
「なんやますます人が多なってきたから場所変えよか」
『は、はい』
忍足にそう言われた為、ラケットを直し帰る準備をする。汗はまだ引かないが呼吸が落ち着いてきた。
「じゃあ俺ら行くわな」
『……ありがとう、ござ、いました』
「ちょっと待ってよ。アンタのアドレス教えて」
『は、はぁ』
リョーマからメアドを聞かれるなんて予想外で驚いた。慌ててスマホを出しアドレスを交換する。
そしてぺこりと頭を下げて忍足とこの場を去る。神尾や伊武や不二兄弟からは「またな」と言われ、英二からは「もう帰るのー!?」と聞こえたが特に気にしないでおこう。
「どや、テニス楽しかった?」
『はい。……でも、私、体力が』
「まぁそこは気にせんでえぇって」
『は、はい』
「話変わるけど、また今度跡部家にでも招待されるんちゃう?跡部が自分の事めっちゃ気に入ってるで。いや、気に入ってるちゅーか気になってる?みたいな」
『えぇ……』
自分って、私のこと?関西弁よく分からないな。
でも、忍足の言ってることは間違ってると思う。前に跡部から私のこと気に入らないって言われたもん。
「ぶっ!」
『?』
「そんな嫌な顔せんでも。跡部が見たら傷つくで」
「あーん?誰が傷つくって?」
『っ!!』
「え……あ、跡部」
歩道を歩いていた私達の横の道路に高級そうな車が止まったと思ったら、窓から顔を出した跡部が此方を睨んでいた。
「咲本、お前は俺が嫌いなのか?」
少し怒りの混じった声で話す跡部に怯えながらも口を開く。
『い、いえ。嫌いじゃ……ない、です』
「……そうか。また家から招待状を送る」
そして「じゃあな」と言って窓を閉め車を走らせた跡部にホット息をつく。
「……びっくりしたなぁ。でもまぁ跡部ちょっと喜んでたで」
『え……』
「最後眉間のシワがなくなってたからな。嫌いじゃないって言われて嬉しかったんちゃう?」
……絶対この人この状況を楽しんでると思う。だって顔がニヤニヤしてるもん。やだな、この黒い人。何考えてるか分からないし。
そして何故か先程の高級そうな車がまた戻ってきてまた跡部が顔を出した。
「何で二人一緒なんだ」
「あぁ、たまたまスポーツショップで会ってな」
何で戻って来たんやろな、とぼそりと呟かれながらも二人の会話を聞いておく。
「家まで送ってやる。乗れ」
そう言われ私は生まれて初めて高級な車に乗った。
体力作りって大切
(朝走ろうかな)
(……やっぱりやめておこう)
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