Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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仲直りする

土曜日、私は前から欲しかったテニスラケットを買いに東京へやって来た。

しかし、私が今最も苦手とする人を発見してしまった。



「どないしよかなー」


ーーーー忍足侑士。



テニスコーナーで一人、グリップテープを選び悩んでいる忍足に私の存在はまだ気付かれていない。早くラケット選びたいのに、忍足がいるから選びに行けないじゃないか。


ハァ、と溜息を吐くと自分の後ろの品物が音を立てて落ちた。忍足との距離はそう遠くはなかったので、勿論忍足はこちらに近づいてくるわけで。


「なんや?」

『……に、にゃー』


咄嗟の判断で品物に隠れながら猫の鳴き真似をしてみたが、これは自分でも分かる。苦しい、無理がありすぎる。


「なんや猫かいな」


そう言ってこの場から離れる忍足。

え、マジでか。信じるのか。忍足も馬鹿だな。……私はもっと馬鹿だけど。

ホッと息を吐き、先程落とした品物を拾おうとすると此方に向かう足音が聞こえた。


「って、んなわけあるか!ここはスポーツショップやで!なんで猫がおんねん」

『ひぃ!!』

「は?……自分何してんねん」

『…………っ』


私だと分かった瞬間一気に声のトーンが低くなった。ハァ……泣きそう。


「あぁ、嫌いなら無理に話さんくていいんやっけ?」

『……ごめ、んな……さっ』

「は?」

『ほ、ほほ本心では、なななかったんです!……ごごごめん、なさい!!』


そう叫び私はスポーツショップから出た。……が、右腕を掴まれその場から動けなくなった。



「いや、俺もあの後頭冷やしてな、中学生みたいなことしてもうたと思っとってん。すまんなぁ」

『……中学生、ですけど』

「あぁ、そやったそやった」

『……』

「まぁ仲良くしようや。……ひなたちゃん、やっけ?」

『……咲本です』

「初めはひなたちゃんの事疑っとってん。男嫌いなフリして実は男好きなんちゃうかて」

『……』


だからか。初めから私の事嫌いオーラを出していたのは。というか咲本だって言ってるのに。


「そういやここに用があったんやろ?中入ろうや」

『あ、はい』


誤解は解けたみたいだけど、いつまたあの怖いオーラと目、そして言葉が出てくるか分からない。少し怯えつつも忍足と一緒に再びスポーツショップに入る。



「ひなたちゃん何買いにきたん?」

『ラケット、です』

「テニスの?」

『はい』

「テニス出来るんや。流石マネージャーってとこやな。あとで近くのコートで打とうや」

『いや、前……にちょっと、打って……ラケット欲しい、なぁ、と』

「へぇ、じゃあ初めてのラケットか。一緒に選んだろか?」

『!!お願いします』

「ぶっ、急に目輝かせて……面白い嬢ちゃんやなぁ」

クククと笑う忍足にイラつき口を尖らせながらもラケットを見る。しかし氷帝の天才と呼ばれる忍足にラケット選びを手伝ってもらうのは嬉しい。




そして忍足と一緒にラケットを選び、購入した。色は黒がベースでピンク色のラインがはいっていて、かっこいい。重さも重過ぎず軽過ぎずちょうど良く、グリップも持ちやすい。えへへ、嬉しいな。


「よし、じゃあ打ちに行こか」

『え、あっ、はい』


「よう、忍足」

「こんにちは忍足先輩。……あれ?咲本さん?」

「宍戸に鳳やないかい。自分らも何か買いに来たんか」


スポーツショップを出ると宍戸と鳳に出くわした。この二人は休日も一緒なのか。


「お前ら仲悪かったんじゃなかったのか?」

「おん。今仲直りしたところや。なー、ひなたちゃん」

『は、はい』


なー、と言って首を傾げられても可愛くない!ジローとかがしたら可愛いと思うけど……!


「そうか、良かったな。……ん?咲本、ラケット買ったのか?」

『は、はい!』

「俺が選んだってん。初めてラケット買うらしくてな」

「へぇ、もう少し早く来てたら俺達も一緒に選んだのにな」

「ですね」

「早くテニス上手くなれよ咲本」

『が、頑張り、ます』



「じゃあまた月曜日やな」

「おう、じゃあな」

「はい、さようなら。咲本さんもまたね」

『はい』



そうして宍戸と鳳と分かれ忍足が言うテニスが出来るというコートに向かう。


「一つ疑問があんねんけど」

『え、はい』

「ひなたちゃんって女の子好きなん?」

『は?……いや、そっち系……ではないです』

「前に独り言で女の子不足、皆女装してくれって言うとったやん?」

『あぁ、その、女子の方が男子……より、人見知り、しないというか……』

「そうなんや。何なら俺が今から女装したろか?」

『やめて下さい』

「ふっ、えぇツッコミやなぁ」


今のツッコミなの?よく分からないなぁ。とりあえず仲良く話せているようで良かった。


「せや、メアド教えて」

『は、はい。どうぞ』

そう言ってスマホを出しメアドを交換する。

そして少し歩くと見慣れた道とテニスコートが見えてきた。


「着いたで」



あれ?ここって……。


「ひなたちゃん?ひなたちゃんよね?久しぶり!!」

『!!』


やっぱり!ここ、ストテニ場だ。久しぶりの杏ちゃんだ!




仲直りする


(この新しいラケットで)
(今から打てるんだ)


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