緊張の連続
ふおおおお!友達出来たよー!嬉しいよ!
クラスの人達も優しくて良かった。
今は体育館での学年集会が終わって授業して、昼休みです。
お弁当作ってきてないから売店で買わないと。
「ひなたちゃん!こっち来て一緒に食べようよ」
『わ、私売店だから……!誘ってくれてありがとう』
こんな会話を交えて教室を出る。今の会話でもそうだが、自分は言葉足らずなんじゃないかっていつも思う。もっと気の利いた断り方があるだろうが直ぐに出てこない。
一年の教室は四階。二階の売店に近づくと賑やかな声が聞こえる。食べ物がなくなると困るので、私は急ぎ足で売店へ向かった。
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『ふぅ、買えた』
良かった、パンを二つとジュースを買うことが出来た。教室に戻っても皆食べている途中だと思うし、一人寂しいけど屋上で食べよう。
今日は本当緊張してばっかりだな。
テニプリの世界……というかトリップって凄く大変。そして家族や頼る人が居ないから非常に寂しい。
『私此処でやっていけるのかなぁ』
ぼそりと呟きながら私は屋上のドアを開けた。
ドアの先には花、花、花!凄い綺麗。
そういえば幸村君が世話してるんだっけ。アニメか何かで見た気がする。昼ご飯食べて時間が余ったら花をじっくり見よう。
……やっぱり一人は寂しい。屋上にはそれなりの数の人が昼食をとっている。勿論皆友達と。あまり他の人に見られないような隅の方で昼食をとろう。
『よいしょ』
パン美味しそうだなぁと思いながら地べたに腰を下ろし、売店で買ったパンを一口食べる。
『わっ、美味しい!』
思わず声が漏れてしまった。だって美味しいんだもの、しょうがない。
二つ目のパンを食べながら、美味しいなぁとかまたパン買おうとか、私は寂しさを紛らわすために独り言を言う。
数十分後パンを食べ終わり、花を見に向かう。どうやら屋上で食べていた人達は教室に帰ってしまったようだ。
『この綺麗な花を一人で……何て贅沢な』
花を見ながらふと思う。
大学生になる予定だった私が、昨日からテニプリの世界にトリップして立海に入った。テニプリの知識はまぁまぁ知っている程度。トリップさせられて何か意味はあったのだろうかと。男嫌いを治せということだろうか?
今のところ関わったテニプリキャラはジローにブン太、そして仁王。もう一度言うが、私は男が苦手なのだ。
心の中では関わりたいという気持ちもあるが、キャラを目の前にすると関われない。だから私は姿を見てるだけでいい。テニス技にも凄く興味があるし生で見てみたいというのもある。つまり私は傍観でいい。
「君、花に興味があるのかい?」
第一テニプリキャラに関わるなんて、私の心臓がもたない。また今日も放課後テニス見に行って見ようかな。今回は昨日とは別の場所で。
「ねぇ!」
『わぁぁぁぁぁあ!!』
いきなり耳元で声が!自分でも分かる、オーバーリアクション過ぎた。は、恥ずかしい。というか誰!?
「ふふ、そんなに驚かなくても」
……あれ、この声聞いたことがある。ほんの少しだけそちらに顔を向ける。やっぱりだ、この人魔王……否、幸村精市。
「で、どうなの?」
『へっ?』
「花に興味があるのかってこと』
どうしよう、正直に答えるべき……だよね。
だって花の種類も全然分からないもん。
『い、いえ……その、い、い癒されに……』
ががが頑張れ自分……!!声がどんどん小さくなっていくのが分かる。
「そっか。ていうかそんなに緊張しなくても」
ね?と微笑みながら幸村君は私の顔を覗き込む。綺麗な顔……じゃなくて、近い近い。
『は……はい』
私は幸村君から離れて目を逸らしながら答える。冷や汗凄くかいてるな、今。
「俺、三年の幸村精市っていうんだ。君は?」
『えっと咲本 ひなたです。一年です』
「咲本さんね。で、何でさっきから目を合わせようとしないのかな?俺何かした?」
『…………』
ストレートに聞いてきたー!怖い、怖いよ。泣きそうだよ、もうやだ誰か助けてっ!
「はぁ、全く」
溜息……ズキン、心が痛い。あぁやだ、これだから男子は嫌なんだ。元はと言えば私がこんな態度とるからなんだけど……でもやっぱり無理なものは無理なんだもん。
「いるんでしょ?仁王」
「ばれちょったか。流石幸村じゃ」
『……ぇ』
どういう事?もしかして今の溜息って仁王に?……いやでも、私に溜息吐かれても理解出来る状況だったし。
「いや、さっき君の尻尾が見えたんだよ」
「これは尻尾じゃなか」
どうしようこの場から今すぐに立ち去りたい。逃げようかなと考えていると仁王と目が合った。
「咲本 ひなた、覚えとくぜよ。あの後ちゃんと体育館に行けたじゃろ?」
『は、はい。ありがとうございました』
仁王って実は良い人なのかな。……でもまだ信じられない。
「仁王は咲本さんと知り合いなのかい?」
「朝、体育館の道を教えてやっただけぜよ」
「騙さずに?」
「おん」
「へぇ、珍しいね」
「因みに男が苦手らしい。あと独り言が多かったのぅ」
『っ!』
私の方を指差しながら答える仁王。な、何故知っている。あれ、独り言が多かったのぅって……!
ままままままさか、私がパン食べてる時に近くに居た!?
「……だからか。何か普通の子とは反応が違ったから不思議に思ってたんだよね」
そしてちらりと此方を見る幸村君。やめて、綺麗な顔で二人して見るな。
すると昼休みの終わりを告げるチャイムが屋上に鳴り響いた。ナイスタイミングと思いながら小さくガッツポーズした。
教室に戻ろうと屋上のドアを引こうとした瞬間、幸村君に声を掛けられた。
「またね、咲本さん」
軽く手を振る幸村君にどうすれば良いか迷いながらも、一応彼は年上なので頭を軽く下げておいた。
こうして私の昼休みが終わった。
緊張の連続
(ふふ、面白いねあの子)
(目を逸らすスピードが凄いナリ)
(男が苦手……ねぇ)
(…………プリッ)
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