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仁王の企み

月曜日の放課後、部活終わりの柳に声をかけられた。


「咲本も今から帰りだな。一緒に帰るか?」

『あ、はい。部活お疲れ様です』

「あぁ」

二人で通学路を歩く。空を見れば薄暗くなっている。
因みにマネージャーの件は、跡部から続けろと言われたが幸村君は「今週は休んでいいよ」ということなので休ませてもらう。……あれ?マネ続ける方向になってる?

『私ってマネージャー続けるんですか?』

「多分そうだろうな」


『えぇー……。あ、そうだ。前にレギュラーの弱みを教えてくれるって言いました、よね?教えて下さい』

「……?」


柳は訳の分からない顔をしている。もしかして……

『忘れたんですか?』


「いや、……あぁ、教えてやろう。誰の弱みを教えてほしいんだ?」

『うーん、幸村先輩って言いたいですけど弱みを握ったところで何も出来ないような気がする……。じゃあ仁王先輩!』

「何故仁王なんだ?」

『前に腕折れたとかで嘘つかれましたし』

「……まだ気にしていたのか」

『え、何か言いましたか?』


ぼそりと何かを言う柳に聞くと「何でもない」と返された。何か今日の柳は変だな、部活で疲れてるのかな。


「そうだな、仁王の弱みは女だ」

『えっ、』

「女が寄って来過ぎる故に女とのスキンシップを苦手とする」

『そ、そうなんですか』


そういうものなのか。モテる人は違うなぁ。異性が苦手だという事なのか?私と一緒?いやでも仁王は違うよなぁ。

『えっと、じゃあどうすれば……?』

「後ろから抱き着くというのはどうだ?」

ななななんてこと言うんだこの人は。私が男苦手な事知ってるくせにそんな事できるわけないだろう。そんなに男子と密着するなんてしたことない。ましてや手を握るだけでも緊張し過ぎて頭が真っ白になるのに……。



『む、無理ですよ!』

「しかし前の仕返しがしたいのだろう?」

『や、でも……仁王先輩の反応が怖いです』

「ふむ、ではどれくらいのスキンシップならいける?」

『つ、つつくくらいなら』

「手ぐらい握れ」

『えぇぇ!?私には無理です!』


「……フッ、まぁ出来る限り仁王に触れてみろ」


不安を残しつつも柳の言葉に私はこくりと頷いた。




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(仁王side)


「……プリッ」

咲本に別れを告げ、トコトコと歩く後ろ姿を見つめる。



数十分前、部活帰りに咲本を発見したのはいいが、自分は多分苦手意識されている。なのでレギュラーの中で一番慣れているであろう柳に変装して咲本に声をかけてみた。柳は自分が部室を出る時、まだ着替え中であったので当分出てこないだろう。


柳の格好で話すと咲本は嫌な顔も吃ることもせずに普通に話していた。


「(流石参謀じゃ)」


少し羨ましいななんて思っていると、レギュラーの弱みを教えてくれと言ってくる。前に柳と約束したのだろうか。


氷帝との練習試合の時には行きのバスで隣の席を座ることができたが何を話したら良いのか分からず、ずっと考えているといつの間にか氷帝に着いてしまっていた。休憩時間では咲本に膝枕をさせ、咲本は自分の髪に興味を持ち距離を少し縮めたように感じた。しかしもう少し自分に慣れて欲しい。

そう、少しでも自分も柳のように慣れてほしいと俺はお得意の嘘を咲本についた。自分の変装に気付かない咲本は疑うことなく信じる。


後日「仁王に触れる」ということになった。




どうなるかは分からんが、


「ククッ、楽しくなりそうじゃ」




仁王の企み


(手を握られたら握り返してやるかのぅ)




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