お疲れ様でした
ひなたは笛を手に入れた!
これでこのチームの指揮をとることが出来る。
……って出来るかぁぁぁぁあ!
纏まりのないCチームをどうしようかと考えていたところ、横のコートから仁王が来て「使いんしゃい」と私に笛を渡した。しかし今からすることを決めて指示することは出来ないし、一年でマネージャーという立場の私が指示を出したところで誰も聞かないだろうし。でもこのままじゃ時間の無駄になるのも目に見えている。
周りを見渡すと喧嘩にお喋り、もう勝手に打ってる人までいる。……ハァ、やるしかないか。
「ピィーーーーー!!」
大きく息を吸い笛を鳴らすと、Cチームのメンバーは一斉に視線をこちらに向けた。
「何なに〜?」
「どこから持ってきたんだよその笛」
『れれ練習、始めないと……!誰かが仕切らないと、出来ま……せん、よ!』
ああああ、言った!言ったよ私。頑張ったよ私。身体中の熱が上がりこのシンとした雰囲気に耐えられなくなった私は、その場から逃げるようにして去った。
「あーん?まさかマネージャーに言われるとはな」
「三年が仕切らなくてどうするんだ。全く、たるんどる!」
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逃げて部室に来たのは良いものの、何もすることがない。とりあえずドリンクを飲んで心を落ち着かせよう。Cチームの方はどうなっただろうか。私に対する愚痴は言っていないだろうか、等と不安に駆られる。
あまり休み過ぎるのもいけないし、もうそろそろ行った方がいいかな。
テニスコートに戻るとCチームはブン太や岳人が指示を出していて、練習を始めていた。良かった、ちゃんと練習してる。
「咲本さん、苦労をかけたね。頑張った頑張った、よしよし」
そう言って幸村君は近付いてくるなり私の頭を撫でた。ちょっと、また顔が熱くなるんだけど。
「本当は部員達で何とかしないといけなかったのに、まさか咲本さんが注意してくれるなんて驚いたよ。……あ、ほらあっちで君を呼んでるよ」
『あ、はい』
呼んでいるブン太達の方へ駆け足で向かうと、Cチームの数人から謝罪の言葉を言われたが、「こちらも出しゃばってしまってすいません」と謝っておいた。
Cチームも全員で練習をし、無事今日の練習試合が終わった。練習試合というか殆ど合同練習だったけど。色々あったけど結構楽しかった。忍足との出来事については出来れば誰も触れないでほしい。
立海全員で帰る準備をし整列する。正面には氷帝メンバーが整列している。
「今日はお互いに刺激し合う一日になった。礼を言う」
「こちらこそ。また機会があれば」
「そうだな。……おい咲本。次の練習試合までマネ辞めるんじゃねーぞ。まぁ今日の働きぶりなら大丈夫だと思うがな」
『え、っと、あの……今日まで、です』
「あーん?何がだ」
『ま、マネー……ジャー、するの』
「は?」
予想外の返答だったのか、跡部は確かめるかのように幸村君の顔を見る。幸村君は眉を垂らしこくりと頷くと、跡部はもう一度私の顔を見た。
「おい咲本。マネ辞めるんじゃねぇ。俺様からの命令だ」
『え、いやっ……あの』
「うーん。跡部からのお願いじゃ守らないとダメだよねぇ」
幸村君は困ったなぁと言いつつも、顔をニヤつかせ楽しんでいるのが分かるのですが。
『……』
「まぁマネを続けるか続けないかの話は置いといて、今日はしっかり休めよ咲本」
「咲本さん。今日はありがとう」
『はい。こちら、こそ……です』
宍戸と鳳が微笑みながら言う。本当にこの二人は癒しキャラだなぁ。立海にも欲しいです爽やか系癒しキャラ。
「あ、そうだ!メアド教えてほC!」
「あ、俺も俺も」
『は、はい』
ジローと岳人が携帯を出すので私も鞄からこの間買ったスマホを出そうとしたら、横から驚く声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと待てよ!ひなた、スマホ持ってたのかよ。早く教えろぃ」
「早く言えっての!」
何故かブン太と赤也から怒られる。別に聞かれてないし怒ることないんじゃ……。
四人とメアドを交換すると「他の奴等にも教えるぜ」とブン太と岳人が言ってきたので「はい」と答えておいた。
ど、どうしよう。男子のメアドがアドレス帳の中に入る。トリップ前も含め人生初です。
因みにチーちゃんとは前にメアド交換してあるので、二番目からテニス部がアドレス帳に書き込まれる。こっちでは親がいないし、それに友達もあんまりいないからアドレス帳の名前が増えて嬉しい。
「じゃあな、咲本。頑張れよ」
『はい。あの、ありがとうございました!』
日吉は優しいからすぐに慣れることが出来た。別れの挨拶をしバスに乗り込むと柳に呼ばれた。
「先程の事について詳しく聞こう」
先程の事?……あ、忍足との出来事についてだ。嫌だなぁ、話したくない。少ししかめ面になりながら私は柳の隣の席に座るのでした。
お疲れさまでした
(やっと終わった)
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