分かれたチーム
仁王に膝を貸してから数分。私達は特に何もせず静かな時間を過ごしていた。
仁王の目はタオルで隠されているため、今なら悪戯し放題だ。
……この尻尾(といっても髪の毛だけど)ずっと気になってたんだよね。ちょっと触ってみてもいいよね。
ーーーーサラッ
何だろう、普通の髪の毛なんだけど感動している自分がいる。そういえば私から男子に触れることなんて今までなかったよね。成長したな、私。そのままずっと髪の毛に触れていると、下から笑い声が聞こえた。
「ククッ、咲本も変なやつじゃのぅ」
『わっ!……いやあの、前から、気に……なってて』
「今ならどこでも触っていい「そこの二人!もう練習が始まるぞ。早くコートに向かわんかー!」……ピヨ」
真田に言われ慌てて仁王を膝からどけて立ち上がる。仁王は口を尖らせブツブツと何か言ってたが気にしない。二人でコートに向かうと殆どのメンバーがまだ休憩はしているが近くに集まっていた。すると跡部が周りを見渡し口を開いた。
「次は三チームに分かれ練習するが、今からそのメンバーを発表する」
そう言って跡部が言った三チームはこうだ。
A→跡部、忍足、真田、柳、柳生
B→宍戸、樺地、幸村、仁王、桑原
C→芥川、向日、日吉、鳳、丸井、切原
え、この分け方は良いのだろうか。何というかAチームはしっかりしたリーダーシップのある人の集まり。
「跡部と同じチームかいな」
「跡部がこのチーム分けで何か考えている確率90%」
「あーん?当たり前だろ。俺様を誰だと思っていやがる」
「ふむ、まぁまぁな組み合わせだな」
「このメンバーなら心配はなさそうですね」
Bチームは……チーム名をつけるとするなら「幸村君と従う者たち」……失礼だろうか。うん、失礼だな。ごめんなさい。
「このチームなら幸村がリーダーって感じか?」
「ウス」
「立海の部長だしな。よろしく頼むぜ」
「あぁ、苦労をかける」
「……Cチームは楽しそうじゃのぅ」
そして問題がCチーム。何とも纏まりのなさそうなメンバーで、リーダーシップのないような人達が集まっている。二年、三年の半々のチームであり三年は人任せな人が多い気がする。大丈夫かなこのチーム。
「わー!丸井君と一緒だ〜。嬉C」
「シクヨロ」
「宍戸さん……」
「鳳、お前は少し先輩離れしろ」
「誰が纏めんスかこのチーム」
「クソクソ跡部何か企んでるだろ」
私は何をすればいいんだろう。さっきと同じことをすればいいかな。
「咲本さんはCチームを見る係だって」
『あ、はい』
幸村君にそう言われCチームを近くで見守る。チームごとに今から何をするかを決めるみたいだが、このチームは未だに決まらない。というか話し合いすらしていない。
「ひなたは何すんの?」
『えっと、Cチーム……を見守る、かかり?……です』
赤也が近くにいる私に気付き声を掛けてきた。そしてチラリと後ろを見てハァ、と溜息を吐いた。
今違うところからも溜息が聞こえたんだけど。チラリと見ると日吉が手を頭に当てて疲れたような顔をしていた。
『先輩……大丈夫、ですか?』
「咲本か。このチームは二年が仕切るしかないな。…………」
日吉が私を見て急に黙るので、頭の上に、はてなを飛ばしていると「言いたい事があるなら言え」と言われた。え、何か変な顔してたかな私。
『え、ななな……何も「切原」……ぇ?』
赤也?日吉の視線の先を辿ると私ではなく、私の後ろだった。そして後ろにはいつの間にいたのか赤也がむすっとした顔で日吉を睨んでいた。
「ひなたが変な事されないように見張ってんだよ」
何この子可愛い。でもそれって番犬。
「番犬かお前は」
日吉も同じの事思ってた。それにしてもこのチーム本当何もしてない。ここは喧嘩してるし鳳や岳人は一人でいじけてるし、ブン太とジローは仲良く話してるし。やっぱり仕切れるのはこの二人なんじゃないかな。
『あああの、二人で……協力、して纏め……れば』
「こいつと協力なんかしたくねぇっての!」
『っ、』
勇気を出して言ったのに赤也に却下された。もう何も言葉を発したくない。すると日吉が私の横に来て私の肩にポンと手を置いた。
「お前の言い方はキツいんだ。だからいつまで経っても懐かれないんじゃないのか?」
「なっ!俺キツい言葉なんて言ってねぇよ」
やっぱり日吉って優しい。でもまた喧嘩が始まる。どうしよう。ていうか懐くって何、私ペットみたいじゃないか。二人は睨み合いながらずっと口喧嘩していて、私には止められなかった。
どうするんだこのチーム。誰かヘルプミー……
分かれたチーム
(見守り係辞退します)
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