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再会と約束



月曜日の放課後、また私は出会ってしまった。この……眠り王子に……。


「ぐぅ……」


というか何でまた立海にいるの。放課後久しぶりにテニス部を見に来たら、ジローこと芥川慈郎が草の上で寝転がって寝ていた。

またブン太を見に来たのかな?それならもう練習始まってるんだけど。


どうしようか。このままここでテニス部を見るか、それともこの場から去るか。



前に変な印象を与えてしまったからジローとは関わりたくない。




その場から去ろうとするとテニスコートからブン太の声が聞こえた。

「おーい!ひなたー!」


「……んん? ふわぁ……」

『う"……』

何故気付かれた!ブン太の声に反応してジローも起きちゃったし。




そしてジローと目が合った。


「えっと、確か……男が苦手な子!」

まぁ名前名乗ってないししょうがないとしても、人を指差しながら発言するなよ。


「あれ?芥川もいるじゃん」

「あ!丸井くんだC!!」



『……立ち去りたい』

「おいひなた、聞こえてんぞ」

『っ!』

「ひなたって名前なんだ!そういえば、俺自己紹介してないC。俺は芥川慈郎。ジローでいいよ」

『は、はぁ』


この二人はテンションが高いからついていけない。遠くから見るだけだったら可愛いんだけど。


「芥川は何しに来たんだ?」

「丸井くんのテニスの見学ついでに、日曜の練習試合の連絡を……ってあれ?鳳は?」

「あぁ、あの二年なら今さっき来たぜぃ」

「Aー!!じゃあ俺もテニスコート入っていい!?」

「入ればいいだろぃ。連絡があるなら柵の外にいる方がおかしいぜぃ」


お、鳳もいるのか。ちょっと見てみたい……って気持ちもあるけど、私はここからでいいや。ジローもブン太もテニスコートに戻ってくれるみたいだし。


「ひなたも来いよ」

『え、で、でも!……わっ!?』

腕を強く引かれテニスコートの入り口に入ってしまった。え、部外者が入ったら皆怒るってば!部員とかファンクラブの人達とか。

強引にブン太に連れていかれ、ブン太とジローと私の三人でレギュラーが集まっているであろう部室へと向かう。先程までレギュラーも打っていたのに部室にいるということは、鳳は今さっき来たということになる。


部室のドアを開けると私達三人に一気に視線が集まった。見事にレギュラー陣が揃っておられる。


「あ、芥川先輩!何処で寝てたんですか!?」


……寝てた前提なんだ。というか鳳身長高いけど可愛い。この天然キャラって立海にはいないよね。宍戸さんって呼ぶところがすごく見たい。


「Aー。ごめんねー」


「ひなたじゃん。何でいんの?」

「丸井が強引に連れてきた確率90%」

赤也からの疑問は柳の予測によって返答されたが、私は今からどうすればいいんだろう。


「こんにちは咲本さん」

『ここ、こんに、ちは……』

ゆ、幸村君。持っている紙から私に視線を移すとニコリと微笑み挨拶した。その微笑みには未だに慣れない。勿論恐怖という意味での。


「えっと……、じゃあ鳳君。日曜は氷帝で練習試合ってことでいいよね?」

「はい!よろしくお願いします」

「ふふ、こちらこそ。跡部にもよろしくって言っておいて。あと、面白いものを持って行くとも……」

「?はい、分かりました」


最後の一言が凄く気になるのと同時に恐怖を感じる。隣を見ればブン太とジローが仲良く話している。こっちは平和だなぁ……。


「では失礼します。芥川先輩も帰りますよ」

「Aー!丸井君ともっと話したE」

「日曜にまた会うだろぃ」

「そっかぁ!じゃあね、丸井君!」


そのまま二人は部室から去って行った。そして真田が「では練習に戻るか」と言ったが、幸村君は制止の言葉をかけた。


「咲本さん。今の話聞いてたよね?」

『え……は、はい』

き、聞いちゃいけない内容だったのかな。でも日曜に練習試合するってだけだよね。部外者は聞いてはいけないのか。





「練習試合の時、マネージャーしない?」

え、っと……、マネージャー?いや立海のレギュラー陣に少し慣れてきたとはいえ流石にそれは難しいと思う。私の心臓が爆発します。

周りの反応を見てみると真田でさえ嫌な顔はしていなかった。うん、何というかとても嬉しい。でもマネージャーってしたことない。


『……したこと、ない、ですし』

「咲本は真面目だからな、大丈夫だろう」

「マネージャーの仕事なら教えてやるから大丈夫だぜ」

「ジャッカルの言う通りだぜぃ。それに前に俺の天才的妙技見るって約束しただろぃ」

あぁ、そういえば約束したな。でもそれなら放課後柵の外から見れるし。ってちょっと待って。何でマネする方向になってるの?


『いやでもあの「じゃあ練習に戻ろうか」……』


あれ、わざとだよね。幸村君、わざと私の言葉を遮ったよね。

そしてそれを分かっていながらレギュラー陣はぞろぞろと部室から出て行き三強が残る。出て行く途中に「プリ」とか「アデュー」が聞こえたのは気のせいだと思いたい。




「じゃあ日曜日、朝七時半に迎えに行くね」

「人見知りを克服するいい機会だろう。少し俺達にも慣れてきただろう。咲本、頑張れよ」

『でも迷惑かける、かと』

私がそう言うと幸村君、真田、柳の三人は軽く微笑み、私の頭にポン、ポン、ポンと順番に手を置き部室から出て行った。ドアの閉まる音が放心状態の私には、やけに大きく聞こえた。





『…………え?えぇ!?』




再会と約束


(幸村、少し強引すぎではないか?)
(いいのいいの)
(日曜が賑やかなる確率96%)

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