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テニスじゃなかった


『こちら咲本、柳生先輩はスーパーを右に曲がりました。どうぞ』

「こちら柳、柳生はハンカチを落とした女性にハンカチを拾い声をかけた。どうぞ」




今日は日曜日。街で偶然見かけた柳生を柳と追跡中です。



遡ること数十分前ーーー


今日は日曜日だし前々から買おうと思っていたテニスラケットを選びに外出。
そこで偶然ラケットケースのようなものを持って歩いている柳生を発見し、近くにテニスコートやスポーツショップがあると予想し一人後を追っていた。

途中で柳に驚かされ事情を説明すると「俺も一緒に追跡しよう」と言い出しそこで現在に至る。

不思議と柳には緊張しなくなったというか、普通に話せるようになった。


『あのバッグってラケットケースですか?』

「いやあれは…………、そうかもしれないな」

何か違和感を感じるような返事だったが特に気にせず、柳生に視線を戻した。


「今日は暑いな」

『そうですね。雲が、ない』

柳の一言で空を見上げると雲一つない青空だった。何か冷たいものが欲しい。今日はまぁまぁの金額が入ったお金と昨日買ったスマホのみ。自動販売機があったら何か買おう。今は柳生を追跡中だ。
……あれ?何で追跡してるんだろう。一人だったら声を掛ける事が出来ないからコソコソついて行こうと思ったが柳がいる今、別について行く必要はないんじゃ。

でも柳も乗り気だしまぁいいか。

『今日は私ラケットを買いに来たんですけど……、ってあれ?』

柳がいない。一人で話しててめちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか。うーん、飽きたのかな。私も追跡止めようかな。そう思っていると後ろから「咲本」と声を掛けられ驚きで肩をビクつかせた。

振り向くと柳が手にソフトクリームを二つ持って立っておりそして片方を差し出した。

『あ、あの』

「近くにアイスが売ってあったからな」

『いやそうではなく』

「まぁ食べろ。アイスが溶ける」

『あ、すいません。ありがとうございます』

どうやらアイスを買ってきてくれたみたいで男子に初めて物を貰ったという感動と喜びがあった。勿論申し訳ない気持ちもあるけど。


『……美味しい』

「フッ、そうだな」

チラリと横を見るとソフトクリームを舐める柳。中身は大人びているがやはり中学生。とても可愛い。口元を緩ませていると柳は私からの視線に気づいたのか、軽く私の頭を叩いた。

「柳生が見えなくなるぞ」

『あ、はい!』


柳生が右に曲がったのを見るとそれを追うように私達も右に曲がった。

「何をしてるんですか。咲本さん、柳君」

『わわわっ!』

曲がるが道は見えず視界の殆どが柳生だった。

「いや、暇つぶしで後をつけていた」

「ふぅ全く。真面目なあなた達がこんな事をするなんて」

『ごごごごめんなさい』

頭を下げながら謝ると「別に怒ってませんよ」と聞こえたので安心した。

チラリと柳生に視線を戻すとラケットケースだと思っていた物に視線がいった。


『あ、あれ?テニスじゃない』

「?……あぁ、これですか?これはゴルフバッグです」

『ご、るふ?』

「えぇ、柳君は知っていたと思うのですが」

「あぁ知っていた。柳生は時々休日にゴルフをする」

『…………』

「そう拗ねるな咲本。柳生、実は咲本はそのバッグがラケットケースだと勘違いし、この近くにテニスコートかスポーツショップがあると思っていたみたいだ」

「それで後をつけていたのですか。声をかけて下されば良かったのに」

『うぅ……』

「咲本にそんな勇気はない」


そんなにはっきり言わなくても……。確かにそうなんだけど。


「私が行こうとしていたのはあそこです」

そう柳生が指差したのは大きくゴルフと書いた看板があるゴルフ練習場だった。


『ゴルフ……』

そういえば私ゴルフした事ないな。テレビで見たことあるくらいだし。柳生にこのままついて行くかそれとも二人と別れてラケットを買いに行くか。どうしようかな。


「良かったら見て行きますか?」

『えぇっと……』

柳生と二人きりというのはとてつもなく気まずい。柳も来てくれると嬉しいんだけどな。
来てくれるかな、と視線を柳に向けると「俺はどちらでも構わない」という顔をしていたので、頭を縦に振ることにした。




********************


『おぉ……』

柳生ゴルフ上手いんだけど。周りで打ってる人達も柳生の上手さに感心している。テニスよりゴルフの方が見た目的に合っているのではないかと思ったことは誰にも言えない。


『あの、柳生、先輩はゴルフ何であんなに』

「上手いのか?とお前は言う。柳生はテニス部に入る前はゴルフ部だった」

『ほ、ほう』

そうだったんだ。テニス部にいるのが勿体無いってくらいゴルフが上手い。でもテニスの腕も相当だ。どちらもあんなに上手いなんて不公平だ。

すると柳生は打ち終わったのか、少し離れた所で椅子に座っていた私達の元にやって来た。


『お、お疲れ様です』

「ありがとうございます」

『その、とても上手いです!』

あれ、何か文章おかしかったような……。柳生は微笑みながらもう一度「ありがとうございます」と言った。
柳が小声で「柳生には慣れそうか」と聞いてきたので当分は無理です、と返しておいた。

しかし少し柳生と話すのに恐怖は感じなくなったと思う。




テニスじゃなかった

(ラケット買うのはまた今度でいいや)

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