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ケーキとヤンキーと

『へ、ヘルプミー……』
「あ"?何か言ったか」
『な、何でもないです』


怖いです誰か助けてください精神が持ちません。只今亜久津仁の後ろを歩いています。
というかこの人威圧が凄い。周りの人が目を合わせないように、必死なのが分かる。

『あ、あの……!』
「……」

呼びかけたら目だけがこっちを向いた。こここ怖い……に、睨まれてる。
頑張れ私!亜久津に負けるな!いや普通に負けるけど。




『あそこのケーキのあるカフェでいいですかっ……?』
「……」

あれ無言。良いのかな良いんだよね?
恐る恐る亜久津より先にカフェに入ると、
沢山のケーキが並んでいた。

『わぁー、美味しそう!』

全部食べたいなぁ。まぁそんなことしたら体重が恐ろしいことになるけど。

『ショートケーキかなぁ、でもやっぱりチョコも……いやでもモンブランも美味しそうだなぁ』

とケーキに夢中になっていたら横に人が。
……あれ私、あれ?

「……」

しまったぁぁぁあ!!
ケーキに夢中で亜久津の存在忘れてた!
今日私死にますさようなら皆さん。


『ななな何にしますか?
ち、ちゃんと奢りますんで!』

「……チッ、何でもいい」

……ツンデレか。今はそっぽ向いてるけど、モンブラン見てたのバレバレなんだけど。


『えっと、じゃあ先に座ってて下さい。
すぐ持って行きます』
「あぁ」


しょうがない、亜久津はモンブランで私は……じゃあショートケーキ!


ケーキを買って亜久津を探す。あれ、いない?何処だろう……。もしかして帰ったのかな。それならそれで嬉しいような悲しいような。じゃあ一人でケーキ食べよ。



「オイ、女」
『はへっ!』

へ、変な声出た……って亜久津いたのか。
すると亜久津が席に向かって行くのでケーキを持ってついて行く。







席に腰を下ろしモンブランを差し出すと一瞬だけだが亜久津の眉がピクリと動き、そしてモンブランにフォークを刺した。
よし、私も食べよう。

『く、口に合いましたか?』
「……悪くねぇ」

美味しかったって事でいいのかな。気持ちを表情に出さない人って分かりにくいな。……私もか。



「テメェ立海生か?」
『は、はい』

急に話しかけてくるからびっくりした。それにしてもこの人目つき悪いなぁ。
ってあれ喋らなくなった。こっちから話し掛けてみる……で、できるかな。
会話を続けるには質問しろ、って誰か言ってた気がするからとりあえず質問質問。まぁ私は亜久津の事知ってるんだけどね。


『な、名前伺ってもよろしいですか』
「……亜久津仁」
『えっと、じゃあ亜久津さん……でいいですか?』
「何年だ」
『一年……です。亜久津さんは三年ですか?』
「あぁ。テメェは名乗らねぇのか」
『あっ、咲本ひなたです』

会話が終わったと思ったら亜久津はフォークを机に置いた。いつの間にかケーキを食べ終わっていたみたいだ。私も急いでケーキを頬張る。

「急いで食うな」
『むぐっ』

口の中に詰め込み過ぎて喋れない……。亜久津の方を見るとポケットに手を入れてゴソゴソしている。
そして立ち上がり机にお金を置く。えっ、とあれ?私が奢るんじゃ……。

「じゃあな、ひなた」
『!?』


亜久津はそのままカフェのドアを開け出て行った。私は勿論、放心状態。
まず一つ目、私が亜久津にアイスをつけたからケーキを奢る事になったのに、机にお金を置いていった。しかも二人分より多い金額。
それと二つ目、何故ひなた。何故名前でしかも呼び捨てで呼んだ。亜久津がちゃん付けで呼ぶのもどうかとは思うけど。いやでも何故下の名前!?わけ分からん。


『また会うかな』

その時お礼言ってお金を返そう。怖いから出来れば会いたくはないんだけどね。

『それにしても今日よく頑張ったな私。偉いえらい』

そう言いながら自分で頭を撫でていると、柳に頭を撫でられた事を思い出して顔の熱が上がったのが分かった。は、恥ずかしい。

ケーキを食べ終わったところで席を立ちカフェを出る。


『今日はもう無駄な寄り道しない方がいいよね。後はスーパーで買い物して帰ろう』

これ以上心臓が縮まる思いをするのは嫌だ。

ーーこの時の私はまさかまだ災難が続くとは思ってもみなかった。



ケーキとヤンキーと

(今日の夜はオムライスにしよーっと)


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