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アイスを持って青学に

ーーーー青春学園。


遂にやって来てしまった。大量のアイスを片手に。家から保冷バッグと保冷剤を持ってきていたので何とかアイスは溶けていない。

にしても何人分いるかわからなかった為、肩から下げている保冷バッグは明日筋肉痛になるのではないかと言うくらい重い。


一週間前にブン太と偵察に来た時と同じ道順でテニスコートへ向かう。



テニスコートに近づくと応援している何人かの声が聞こえた。誰にもにばれないように壁に隠れながら覗くように顔だけを出すと、女の子が見えた。

あれは確か、桜乃と朋ちゃん。あの二人は一年だから今の私と同い年か。女の子がいて良かった。男ばかりじゃ死にそうだもん。


『ってあれ!?どこか行っちゃう!あっ……』


あーあ。二人とも何か用事があるのかテニスコートから離れていった。さっきの喜びを返して。


とりあえずコートに近付こう。今は練習してるみたいだし声を掛けちゃだめだ。いや、声を掛ける勇気が私にはないけれども。

あ、顧問の竜崎先生に渡してもらえばいいんだ。そしたら私が青学の部員に話しかける必要がなくなる。ナイスアイディアだ私。





********************


「あんた達!立海のマネージャーが差し入れ持ってきてくれたよ!」


『……何故そうなる』


竜崎先生に先週のお詫びにとアイスを部員に配って下さいとお願いしたところ、先生はアイスを受け取った。
そこまでは良かったんだ。先生が次に発した言葉が、「何ぼけっと突っ立ってんだい行くよ」だった。

というか竜崎先生にも私が立海のマネだという嘘情報が流れていたのか。早く弁解しないと申し訳ないよね。



竜崎先生の言葉で部員が集まり私に大勢の視線が向けられる。そして初めに口を開いたのはゴールデンペアだった。

「あー!ひなたちゃんだにゃ〜」

「そうか、確か立海のマネージャーだったね」



「先週迷惑をかけたお詫びらしいが、こんなに沢山のアイスを持ってきてくれたよ」

「気にしなくてよかったんだが……ありがとう、咲本」

手塚を始めに部員からもお礼を言われ内心少し照れるが、ぺこりと頭を下げ平然を保つ。

「竜崎せんせー!今食べていいっすかー!?」

桃城は大きく手を上げて竜崎先生に向かって質問するが、「アンタは先にもう一度謝っとくんだよ」とため息交じりに言われ、桃城と目が合った。

「先週はほんと悪りぃ!あの後大丈夫だったか?」

『あ、はい』

「俺は桃城武!好きなように呼んでくれていいぜ。アンタは確か咲本だったよな?」

『はい』

覚えててくれたのか。自己紹介するの苦手だから良かった。じゃあアイス貰ってくると言い先生の方へ向かって行った。あいつはアイスにしか目がないのか。こっちとしては有難いんだけど。



「咲本さん」

『は、はい!』

後ろから急に話しかけられ驚きで心臓が高鳴った。返事をしながら振り向くと不二君が立っていた。

「アイスありがとう。僕のこと覚えてるかな?」

『あ、えっと……不二、先ぱい』

「良かった、覚えててくれたんだ。
あ、それとタカさんと海堂の事まだ知らないよね」

いつもの笑顔で連れてきたんだと話す不二先輩が憎くてしょうがなかった。……いや、憎いなんて言ってごめんなさい。でも、自己紹介の為にわざわざ連れてこなくても……。

「やぁ、えっと咲本さんだよね。
俺は三年の河村隆、よろしくね。あとアイスありがとう」

『い、いえ』

照れ臭そうに笑うタカさんは本当に良い人オーラを出していてほんわかした気持ちになった。

一方不二君の隣にいる海堂はものすごく私を睨んでいた。怖いんだけど、どうしよう。
ビクつく私に気付いたのか、タカさんと不二君が口を開いた。

「海堂、そんなに睨んだら咲本が怖がるだろ」

「えっ?あ、すいません」

「海堂はあれが普通の顔だから気にしなくていいよ」

……不二君は何かちょっと失礼な気がする。すると海堂が私の方をもう一度見て、フシューと息を吐いた。

「わ、悪い。その、二年の海堂薫だ」

『えっと、はい』

人が多くて私の人見知りスキルが発動してるよ。肯定か否定しか出来ないよ。でもとりあえずは青学のレギュラーには自己紹介し終わったよね、良かった。



「ねぇ、今日は試合して行かないの?」

『……え"?』




アイスを持って青学に

(一番会いたくない人来た)


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