Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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あーん。

昨日の放課後のプール掃除は疲れた。
結局柳以外の全員が全身ずぶ濡れになり、どうすることも出来ず幸村君達はテニス部の練習に戻り、私は早足で家に帰った。
勿論プール掃除は最後までやり遂げた。




『はぁー……』

「溜め息つくと幸せが逃げちゃうよ〜。折角のご飯が不味くなるよ〜」

『はーい』


チーちゃんと屋上で昼ご飯中です。平和だなぁ。こうやって緊張せずにのほほんと過ごすのが一番楽だ。

初対面の人や男子がいると緊張して疲れるし……。


途端屋上のドアが開く音が聞こえた。そして聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。


「ひなた!」

赤也が私の姿を見つけるなり此方に向かって来た。チーちゃんはえっ!と驚き、私の制服の裾を軽く引っ張り小声で話し掛けてきた。


「切原先輩じゃん。ひなたちゃん仲良かったの?」

『いや、その図書室で会って……』


「先輩達ー!ここにひなたがいるっス」

……待って。赤也一人じゃないの!?
だ、誰と一緒に来たんだ。

恐る恐るドアの方を見ると、柳と仁王、柳生がいた。何このメンバー……。
三人とも此方を向いていて目が合ってしまったので、つい背を向ける。


「相変わらず無愛想じゃのぅ」

仁王は少し離れた距離にいるが、その言葉ははっきりと聞こえた。
……わ、分かってるもん。でも治らないんだよ。



「ひなたちゃんいつの間にテニス部と仲良くなってたの」

『……いつの間にか、かな』


すると柳生が近くまで来ていて私達を見て微笑みながら口を開いた。


「こんにちは咲本さん。
お昼ご一緒してもかまいませんか?」

『は、はい!』


緊張しながら返事をすると柳が少し笑っているのが見えた。
しょうがないだろ柳生とあんまり話した事ないんだから。


私とチーちゃんそしてテニス部の四人、計六人で円になり食事をすることになった。
誰か何か話さないかなぁと思っているとチーちゃんが話を切り出した。


「先輩達はどうやってひなたちゃんと仲良くなったんですか?
ひなたちゃん極度の人見知りだし。男子は特に」

「よく咲本の事を理解しているな」

では俺が全員分話そう、と柳がチーちゃんに私とテニス部の出会いを話し始めた。

……あれ、何で全員分知ってるの?怖いんだけど。



「咲本の弁当に今日は肉巻がないぜよ」

『あっ、はい』

「え、ちょっと仁王先輩!今日はってどういう事スか!?コイツの弁当食べた事あんの!?」

「美味かったぜよ」

赤也は少し悩む仕草をし、気まずそうな顔をしながら私に向かって大声で話しかけた。


「……ひなた!!」

『ははははいっ!』

「俺さ、今日パンなんだよ」

『はい』

「……パンだけなんだよ」

『はぁ』

何この俺パンだよアピール。
……あ、もしかして仁王先輩におかずあげたんだから俺にもくれよみたいな感じかな。

本当にそうだったら、ものすごく可愛い。他の人だったら絶対イラっとしてると思うけど赤也は可愛い。


『あの、何か……いり、ますか?』

お弁当の中身を見せながら言うと赤也の目が少し輝いた気がした。そして隣では仁王が喉を鳴らしながら笑っており、柳生はお弁当を食べながら微笑ましく此方を見ていた。

「いいの!?じゃあそのハンバーグ!」

『あ、はい』

ハンバーグを一口サイズに箸で切り、ハンバーグを箸でつまみ赤也の方へと持っていく。



「「「!!」」」



あれ何かハンバーグ変?赤也が目を見開いている。赤也だけでなく仁王や柳生も驚いた顔をしている。
えっと……手作りなんだけどハンバーグってこんなのだよね。もしかしてこの世界では違うの!?





「ひなた、食わせてくれんの?」

『!!』


そそそ、そういう事かぁぁぁぁぁ!!!


この前の仁王にこうしたから、つい同じ行動をしてしまった。
ど、どうしよう凄く恥ずかしい……。顔が火照り過ぎてちょっと涙が出てきた。


『ご、ごめんなさ……「あーん」い、え?』

恥ずかしくなって手を引っ込めようとしたが、赤也は私の手を掴んでパクリとハンバーグを口に含んだ。


「……ん、うめーなこのハンバーグ!」


サンキュー!と言いながら笑う赤也。男前過ぎてどうしよう。キュンときたよ。



「咲本も大胆じゃのぅ」

「からかうのは止めたまえ、仁王君」


本当自分の行動が恥ずかしい。でも元はと言えば仁王のせい……ハァ、言い返せない自分が憎い。


「咲本さんはご自分で弁当を?」

『あ、はい』

「まだ一年生だというのに偉いですね」

そんな事ないですよ、と言うつもりで軽く首を横に振った。上手く会話ができるようになりたい。



「ひなたちゃーん!」

『うっ!』

横からチーちゃんに抱きつかれた。ご飯を口に入れてたから軽く喉が詰まった。
どうやら柳との話は終わったみたいだ。


「ひなたちゃんってほんと偶然で運命的な出会いばっかりだったんだね!」

『あ、うん。多分』

「ひなたちゃんの事もっと知れて嬉しいな〜」

えへへと笑うチーちゃんにつられて私も笑うと、周りも微笑んでいた。何か幸せだなぁ。

こうしてほんわかとした雰囲気のまま昼休みが終わった。




あーん。

(さっきの事思い出すと恥ずかし過ぎて)
(顔が熱くなる)


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