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プール掃除

「咲本さんも美化委員だったなんて驚きだなぁ」


……か、帰りたいです。
今の状況を説明すると、美化委員である私と幸村君が体操着でプール掃除をしています。


何故二人きりかって?皆サボったんだよ!!
面倒くさいし先生の見張りもないし。


くそぅ、私はどうして帰宅部なんだろう。
そしてテニス部で忙しいはずの幸村君が掃除に来てて他の人は来ないんだろう。


「それにしてもこの大きさを二人でするのは大変だよね」

『は、はい』

幸村君は一瞬悩む仕草をし、そして何か思い付いたのか辺りを見渡した。


「おーい!そこの人!」

『!?』

「は、はい!!」

ど、どうしたんだろう。
門に向かっている男子生徒に、突然大声で声をかけるものだからすごく驚いた。


「君、テニス部のレギュラーに幸村が呼んでるって言ってくれないかい?」

「わ、わかりました!!」

幸村君を知っているのか否かは分からないが、男子生徒は焦りながらテニスコートの方へと走っていった。

あれ?テニス部のレギュラー?
何で呼ぶ必要が……

『!!』

ま、まさか手伝ってもらうつもりじゃ……。

「大人数の方が早く終わるよね」

ニコリと微笑む幸村君。
か、かっこいい……ってそんなこと考えてる場合じゃない。

いやでも、このまま二人きりっていうのも気まずいし。
きっと私相手じゃ話も続かないだろうし。
それを考えると大勢になった方がいいのかな。









「咲本さん赤也とは仲良くなった?」

『えっと……』


昨日の昼休みに勉強を教えて、前よりはマシな関係になった気はするけど。
仲良くなったと聞かれると迷うというかなんというか。


「幸村部長ー!!」

「来たようだね」

あ、赤也だ。プールサイドを走りながら幸村君に手を振っている。

「あ!ひなたじゃん!
アンタもプール掃除させられてんのかよ」

『えっと、……はい』

「いつの間にか仲良くなったようだね」


そして他のレギュラー達もぞろぞろとユニフォーム姿でプールサイドに集まってきた。


「幸村、今日は委員で部活に遅れると言っていたが、今俺達を呼びだした事に関係があるのか?」

「プール掃除を手伝ってもらう為に俺達を呼びだした確率95%」

「ふふ、正解」


微笑みながらレギュラー達にブラシを渡す幸村君。部長恐ろしや……。

皆断ろうにもそれが出来ないから顔引きつってるし。


「さぁ始めようか」

幸村君の合図で皆が掃除を始めた。
なるべく関わらないように一人で掃除しよう。
そして早く終わらせて帰ろう。


ブラシで床を磨いていると近くで掃除していた柳が近づいて来た。

「赤也とは仲良くなれたようだな」

『はい』

「どうやって仲良くなったんだ?」

『えっと、一緒に勉強をしたんです』

「そうか」

後でデータに加えておこう、と呟き柳はまたブラシを持つ手を動かした。


すると少し離れた場所から赤也の声が聞こえた。

「やめて下さいよ丸井先輩!」

「掃除してて暑いだろぃ?ちょうどいいじゃねーか」

見るとブン太が持ってきたホースで水を赤也にかけているようだ。
何故かジャッカルも巻き添えだ。いつも可哀想だなぁ。

そこに仁王がブン太の後ろからホースを奪い、ブン太にも水をかけている。
ハァ、真面目に掃除して早く終わろうよ。


「もうそろそろ水で汚れを流してはいかがでしょう」

「そうだね。仁王、水を入れてくれるかい?」

「了解ナリ」

ずっと真面目に掃除していた柳生の提案により水をプールに少しためる事になったが、またブン太や仁王がいる方で水の掛け合いが始まった。


「コラー!真面目にやらんかー!」

「!!」

キーン……。
うぅ、耳が痛い。そんなに大声出さなくてもいいじゃないか真田。

って……あ、いきなりの大声に驚いたのか、仁王の手からホースが落ちた。
当たり前だがホースからはまだ水が出続けているわけで、ホースが暴れて真田の顔に水が直撃した。


「……大丈夫っスか?真田副部長」

「たるんどる!!」

真田のたるんどる、聞けた。ってそんな事思ってる場合じゃないか。
まぁでもこっちは安全だろうし。




「咲本」


『はい?……ぶっ!!』

み、水!?ななな何で?
柳に呼ばれて振り向こうかと思ったらいきなり顔面に水が直撃した。さっきの真田のように。


「……精市がふざけてお前を狙っているぞ」

『お、遅いです。言うの』


体操着の袖で顔をぬぐいながら幸村君の方を見るとニコニコと微笑んでいるし、柳は忠告してくれるのは有難いけど言うの遅いし……。


「ほら咲本さんも水浴びたいのかなーって思ってさ。ずっと真田達の方見てたし。そしたらちょうどホースがもう一本あったんだよ」

ふふ、と笑う幸村君に少しドキリとしながらも平然を保つ。イケメンってやだな、ずっと緊張する……。


「じゃあ次は真面目にやってる柳生かな」

『っ!?』

幸村君の手!手!手が触れててて、繋いでる!?
うぇ!?こここ、混乱してきた!
男子と手を繋ぐなんて、よ、幼稚園以来というか……!!
ていうか私も行くの!?

幸村君は混乱している私に気づかず、手を繋ぎながらホース持って柳生の方へ向かおうとしてる。


私の仮の母である柳に助けを求めようと目で訴えるが、苦笑いを返されるだけだった。

うぅ、母に裏切られた……!


「ほら柳生の事呼んでみて」

小声で言う幸村君の表情はどこか楽しそうだったので、私も少し楽しくなってきた。めちゃくちゃ緊張してるけど。

えっと、柳生……先輩でいいよね。


『や、柳生先輩……!』

「!はい、何でしょ……っ!?」

あぁ、柳生も顔からずぶ濡れになってしまった。無言で眼鏡を掛け直す柳生に罪悪感を感じたので一応謝罪しておく。

『ご、ごめんなさい』

「いえ怒ってません。
……ただ、今逃走中の幸村君に仕返ししてさしあげましょう」


く、黒い……。それに結局皆水遊びしちゃってるし。
柳も赤也に水をかけられてずぶ濡れになってる。


やっぱり中学生だなぁ、と感じる一日だった。




プール掃除


(見てて楽しかったからいいけどね……っ!?)
(ひなたも参加しろぃ)
(……)


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