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ペテン師

「……折れたのぅ」

『ご、ごめん……なさい』





今日、日直だった私は早めに学校に来た。
まさかこんな不幸な事が起こるなんて。



数分前私は黒板消しを綺麗にする為、黒板消し同士を叩いていたら自分でも鈍臭い事をしたなと思うけど、自分の手を叩いてしまい黒板消しを外に落としてしまった。



朝だから誰もいないと思い込んでいたのが間違いだった。
階段を下りている途中、私はある男とぶつかってしまった。



ーーーー仁王雅治だ。



勢いよく私がぶつかってしまったようで、仁王は尻餅をついた。

その瞬間仁王の手が変な音を立てた。
そう、ゴキっと。


そういえばこの人細身の体だったと思い出す。
私のせいで多分手首が折れてしまった……。

どうしよう。テニプリキャラに、しかも立海のレギュラー……。





「……利き手か」

左手を見つめながらぼそりと恐ろしい事を呟く仁王。

て、テニスが出来な、い……。


『す、すいません』

「とりあえず保健室、行くかのぅ。
咲本手伝ってほしいナリ」

『は、はい』

目に涙が溜まるのが分かった。
これからどうしようかと不安に思いつつ、仁王の背中を見ながら保健室へと向かう。








『あ、あの……私に、て、手伝える事は……ありませんか?』

幸い保健室は開いていたが先生はいなかった。
仁王の左手首を保健室にあった雑誌で固定し包帯を巻いてタオルで腕を吊った。
少しだけどこういう知識があった自分に感謝した。



「じゃあ暫くの間、左手の代わりをしてほしいぜよ」

『は、はい。わ、わかりました……』

それって暫くの間仁王と一緒に行動しないといけないってことだよね。
で、でも今はそんな事考えてる場合じゃないんだ。




私のせいでテニスが出来ないーーーー









********************



一時間目が終わり休憩時間に入ると私は急いで三年B組に来た。
勿論そのクラスにはブン太もいるわけで、仁王のノートを代わりに書いてる時ブン太が近づいて来た。


「何でひなたがうちのクラスにいんだよ」

『え、えっと……』

「朝言ったじゃろ、骨折したから不便なんじゃって」

「で、原因のこいつに色々世話してもらうって事なのかよ?」

「そういうことぜよ」

「仁王に虐められたら言えよ、ひなた」

『は、はい』

そう言ってブン太は少し不服そうな顔をしていたが自分の席に戻っていった。






そして休み時間には毎回三年B組に行き、とうとう長い昼休みになってしまった。


「どこで食べるかのぅ」

パンの入った袋を片手に呟く仁王。
テニス部のレギュラーは前に屋上で食べてたけど、いつもじゃないのかな?


「そういえば理科室はサボるには最適の場所じゃったな」


仁王は行くぜよ、と言いながら理科室へと向かう。

理科室のドアを開けるとやはり誰もいなかった。



仁王がイスに座ったので、私も机を挟んで向かい側の席に腰を下ろした。
そして弁当を広げると視線を感じた。勿論正面からの。

「咲本の弁当ちょっと欲しいナリ」

『えっと、何が欲しい……ですか?』

「その肉巻き」

あ、どうやってあげればいいんだろう。

あっちは箸がないしそれに箸が持てない。
でも肉巻きは手で取ったらタレがついて汚れるし……。


「口ん中入れて欲しいぜよ」

あーんと口を開ける仁王。うぅ、可愛い……。

しょうがなく肉巻きを箸で掴み仁王の口の中に入れる。
何これ……凄く恥ずかしい。顔に熱が……。


「ん、美味しい」


良かった。ちょっとホッとした。

それから仁王はパンを右手で食べ、私は朝から作ってきたお弁当を食べ始めた。




……気まずい。何このシンとした空気。
この人そんなに喋る人じゃなかったな。
クールキャラだっけ?

まぁ私もそんな話し上手じゃないからいいけど。

「仁王雅治」

『……ぇ?』

いきなり口を開くから声が裏返った。
恥ずかしい。


「名前言っとらんかったじゃろ?」

『あ、はい。に、仁王先輩……ですね』

「ん」

こくりと頷きまたパンを食べる。
その仕草が可愛くてつい可愛いと口に出してしまうのをなんとか抑えた。






********************


放課後また仁王の元へと向かっていた私は、ある場面に出くわした。


『あ、れ……?』

仁王の左手が、動いてる。
ど、どうして?何で?


三年B組のドアに触れて音を出してしまい、仁王に存在を気づかれる。

「プリッ」

『あ、あの……』

「折れてないぜよ」

『でででも!あれ?』

こここ混乱してきた……!
でも朝グキっと音を立てて折れて。

「咲本が俺を避けちょるのが分かったから、ちょっと悪戯したくてのぅ。
そしたら今朝ちょうど咲本を見つけて…………!?」

『……』

「何で、泣いとるん?
す、すまん。騙したのは悪かった」

『テニス……出来ないかもって、ずっと心配で……。でも、良かった、です』


仁王の左手首が折れてない。テニスが出来る。
そう考えると涙が止まらなくなった。
本当は怒るところなんだけど折れてなくて本当に良かった。


「泣き止んで」

そう言って頭を撫でてくる。
凄く動揺してるから泣き止まないと。

『大丈夫です』

「泣くなんて思わんかった。
でもそこまでテニスに対して心配してくれるなんて嬉しいナリ」


『はい。でも私騙されたんですよね』

「お、怒っとる?何でもするから許してほしいぜよ」

『お、怒ってます。……でも許します』

「え?」

『なので が、頑張って下さい』


「仁王!!部活に早く行かんかぁー!
委員会会議のあった俺と同じ時間に行くとは何事だ!!」


「え"……?」

遠くの方で真田がこっちに向かって叫んでいる。が、頑張れ仁王。




ペテン師


(エロいだけじゃなく)
(可愛いことも分かったけど)
(やっぱり苦手だ。近付きたくない)


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