Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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コーチからのミッション

合宿所から少し離れた山奥で、コーチからの指令により中学生達は宝物探しをしていた。高校生を含む戦いたい相手を指名できる権が報酬とされている。
謎解きをしながら宝物は何か、どこにあるのかをペアで考え、見つけるゲームだった。

「宝物とやらを勝ち取れば、誰とでも試合が出来るのだな」
「ペアは誰でも良いのかな」
「組むペアについてあの箱に何か入っている確率69.2%」

木の下に不自然なテーブルが置いてあり、その上に箱が置いてあった。立海の三強がそれを見つけ、皆に呼びかける。箱の中に入った紙を取って中学生達はペアを作っていった。

「ペアになったは良いけどよ、何をどうしたら良いんだよ」
「あの木を見てみぃ、岳人」
「木?」
「次の指示か? 読め、樺地」
「ウス。”中学生諸君。ペアは作れただろうか。謎を解いて次へ進め。宝物はその先にある”」

紙に書かれた問題はこうだ。

下のアルファベットはある法則に従って正しく並んでいます。「?」に入るアルファベットは何?

M M C M M ? M


頭の柔らかい者たちは瞬時に第一関門を突破し、次に進む。

「なぞなぞか、簡単だったね」
「はい」

COOLに第二関門に向かう幸村、財前ペアを走って追い抜こうとする真田・越前ペア。

「のんびりしている暇はないぞ、越前!」
「分かってるっス!」
「答えはK。長さの単位を表しているな。……俺達も急ごうか」
「はい。……下剋上だ」

俊敏な判断で進む柳・日吉ペア。この三ペアに続き、他の中学生達も続く。


********************


一方、ひなたは斎藤コーチに山に行くよう指示され地図を渡され、指定の場所に来るように言われていたが、何も目印のない山奥では今自分がどこにいるのかさえ分からない状態だった。その上、連絡手段であるスマホはコーチが預かっており、ひなたは道に迷って途方に暮れていた。

「はぁ……。一体どうすれば……」

コーチ達は中学生とひなたの様子を監視カメラで確認していたが、ひなたの絶望した顔を見て斎藤コーチはクスクスと笑っていた。そして彼は森に設置したスピーカーを通してひなたに呼びかけた。

「咲本ひなたさん。そのまままっすぐ歩くと大きな木があります。それが地図の右下にある大きな木です」
「!? 一体どこから……」
「君も頑張らないとこのゲームは成立しないので頑張って下さい」
「ゲーム!? こ、この木まで行けば良いんですか!?」
「ーープツン」
「え、切れた?……はぁ。君も、ってことは他にも同じ目にあっている人がいるのかな。かわいそう」

目印を教えてもらったひなたは、地図を確認しながら足を進めていた。大きなため息を吐いて。


********************


中学生達は、謎解きをしながら指定された場所に向かっていくが、先に進んだ者達は足を止めていた。

「越前、これは何だ」
「落とし穴っスね」
「何故落とし穴があるのか聞いている」
「自然にできるわけないし、誰かが掘ったんじゃないスか?」
「俺達の邪魔をするのは誰だキエェェェイ!」

真田と越前の目の前にある落とし穴は、コーチに指示された高校生が掘ったものだった。

「下が通られへんのやったら上を通ったら良いやん! 先行くでコシマエー!」
「じゃあな、真田ぁ!」

まるでターザンの様に二人の上を通りすぎていく遠山と跡部。

「っにゃろ……!」
「ツルを木に引っ掛けて渡ったのか。跡部に先を越されるとは!」


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地図の印がある場所に何とか辿り着いた。しかしコーチどころか誰一人いないし、周りの景色は変わらず木に囲まれている。

もしかしてここがゴールじゃないのかな。どこかで道を間違えた?
どこからか変な音も聞こえてきた。

ガサガサとその音が近づいてくる。何だろう……、野生の熊だったら死んじゃうな……ってそんなこと考えている場合じゃない。逃げないと!


バッと走り出した瞬間、木の根元に足を引っかけて転んだ。終わった。私は今日、森の中で死ぬんだ。

「……」
「……咲本、何をしている」
「え? おおおお母さん!!」

上半身を起こして振り返ると柳と日吉がいた。

「え、あ、なんで?」
「それはこっちのセリフだ」
「俺達と同じように宝物探しをしているのか? 咲本は別の指令を受けている確率が高いが」
「宝物探し? えっと、楽しんでますね……?」

こんな森の中で何故そんなことをしているんだと疑問をぶつけたら、柳が丁寧に説明してくれた。そして日吉がその後に続く。

「最後の課題がターゲットを丸めること。ターゲットはこの辺にいると予想して来たが、それらしきものはないな。咲本は見ていないのか?」
「えっと、ターゲットって何ですか?」
「それも問題に含まれているようだ」

じゃあ二人は何か分からないものを探していて、それを丸めることができたらクリアってことか。難しい。


「地図だとこの辺りかな」
「そっすね」
「あ、柳。もしかして負けちゃったかな」

幸村君と財前だ。四人も集まったって事は、やっぱりターゲットはここにある物なんだ。

「俺達もまだクリアしていない」
「そうなんだ。咲本さんは何でここに?」
「私もコーチの指示で。地図を渡されてここに辿り着きました」

それから十分程、五人でターゲットを探すも分からず途方に暮れていたら、財前がジッと私を見て口を開いた。

「咲本はコーチの指示でここに来た。俺達はターゲットがここにいると予想して来た。っちゅーことはコイツがターゲットちゃいます?」
「えっ、私!?」
「確かに咲本さんの可能性は高いね」
「咲本、丸まれ」
「!? は、はい!」

財前に上から頭を押されたので乱暴だなと思いながらも、その場に座り両膝を抱えて全力で小さくなる。しかし何も反応はない。

「ちゃうか」
「別の意味がありそうだね」

「……ターゲットをくしゃくしゃにするというから、紙のようなものだと思っていたが、そういうことか」
「! くしゃくしゃってその……」
「?」

柳と日吉が何か閃いたようだ。二人して納得した顔をしている。

「咲本、たくさん歩いて疲れただろう」
「え? はい、疲れました」
「頑張ったな」

柳は私の頭の上に手をポンと置いて、その手で優しく撫でた。

「……」

ほんとこの温かい手が落ち着くんだよなぁ。ぶわっと疲れが吹き飛んでいって、力が抜ける。日吉に大丈夫かと心配されたけど、心配ご無用だ。

「優勝は柳君・日吉君ペア! 見事咲本さんの顔をくしゃくしゃに笑わせることができましたね」




コーチからのミッション


(咲本さん、夕飯一緒に食べよう)
(えっ、はい。ぜひ!)




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