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肉を求める者たち

最近嵐が何日も続いている。ずっと外は真っ暗で気分も下がってしまう。食堂にも影響が出ていて、嵐の影響で業者からの食料の搬入が遅れているらしい。

お風呂上がりに食堂でのんびりと幸村君と真田とお茶をしていたが、ラフテーが食べたいだの肉が食べたいだのとても騒がしい。

「……全く、騒がしいな」
「咲本さん、この紅茶の種類なんだと思う?」
「えっと、アールグレイですかね」
「うん。正解」

「ざけんじゃねーぞコラァ!!」
「肉汁ーー!!!」

ずっと騒がしい比嘉中の田仁志に加え、赤也と大石まで叫び出した。正面に座る真田のコップを持つ手がワナワナと震えている。あ、爆発しそう。

「たるんどる! 先程から聞いていればラフテーだの焼肉だのその程度のことで狼狽えよって。嵐が止むまで辛抱すれば良いこと。そもそも肉料理が全て無いわけでもあるまいに」

「あのー、実は他の肉も全部品切れなんっす」

合宿所の雑用係である青学の堀尾がそう答えると真田は衝撃のあまり固まった。

「さ、真田さん?」
「!? ……うっ、一瞬五感を奪われたらしい」
「俺は何もしてないよ」
「ブフッ」

冗談を言う真田に思わず吹き出してしまい、隣に座る幸村君に「こら」と注意されてしまった。

「たわけーー! 貴様、肉を食わずに一体何を食えというのだ!」
「おおおおっ落ち着いてください! 嵐が去るまで辛抱すれば」
「待てん! 一日たりとて待てんわ!!……おい。その中には何が入っている?」

そういえば堀尾は先程からずっと大きなショルダーバッグを抱えている。そのバッグに皆も気づいて、バッグの中を問われるが堀尾は答えようとしない。

「やはりそういうことか」
「肉汁ーー!!」

バッグの中に何が入っているか分からないが、皆が今食べたい肉を隠し持っているのだろうという結論に至り、バッグに四人が飛びついた。堀尾は慌ててその場から逃げていった。四人も追いかけて行ったので、騒がしかった食堂が静かになった。

「皆、お肉が食べたいんですね……」
「ふふっ、そうだね」
「幸村先輩は食べたいもの、ないんですか?」
「そうだなぁ、俺は焼き魚かな。……前から気になっていたんだけどその呼び方、変えないかい?」

一瞬息が詰まった。敬語はいらないんじゃないかと以前柳に言われた事はあったが、そのままが良いと答えた。
私はあまり人の名前を呼ぶ方ではないので、まぁ良いかと呼び方もそのままにしようと思っていたがやはり違和感があるだろう。

「呼び方、ですか。そ、そうですよね。先輩呼びはおかしいですよね」
「うん、おかしい」
「うぐっ」
「咲本さんの方が年上なんだし呼び捨てで良いよ」
「呼び捨て。流石にそんな……」

いきなり幸村って呼ぶの!? せめて君付けで呼びたい。

「ほら、精市って」
「なっなな名前呼び!?」
「うん。呼んでみて?」
「え、あっ、せ、せ…………っ、恥ずかしくて死にます」
「そうだなぁ、じゃあ今のところは名字呼びで許すよ」
「ありがとうございます。えっと、幸村君?」
「うん」

心の中で呼んでいた呼び方と同じなので自然に出てくる。声に出すのは、勿論恥ずかしいけど。

「そろそろ部屋に戻るかい?」
「はい、そうします」


幸村君とわかれ、廊下を歩いていると白い枕が落ちていた。その先には大量の枕を運んでいる、一年のダダダダーン!君とヤンス君だ。名前は確か……壇太一君と浦山しい太君だったかな。壇くんは前に文化祭で見かけたことがあるけど、浦山くんは初めてだ。変わった髪型だ。

落ちている枕を拾い上げて、二人に声をかける。

「あの、枕落ちてました」
「ダダダダーン! ありがとうございます!」
「すみませんでヤンス」
「いえ」

枕を渡して去ろうとしたら、堀尾がこちらに向かって走ってきた。食堂からずっと追われてたのかな。……あれ、木手に追われてたっけ?

「ん? 堀尾くん!?」
「そこまでさ、えいしろー」
「このゴーヤーは渡さないさー」

堀尾の前に凛と甲斐君が木手から守るように立つ。ゴーヤって何のこと言ってるんだろう。

「成程。欲しいものがなくて不自由する人間がいる一方で、なくて助かる人間もいるという事ですか。そこを退きなさい。さもないと…………ゴーヤー食わすよ!!」
「やーは隠れていれ!」

凛が堀尾を枕を乗せた台車の後ろへ隠し、甲斐君は枕を掴み木手に投げる。

「バイキングホーン!」

……あぁ、海賊の角笛。テニス技で見たかったです。


そこから中学生の夜の枕投げ大会が始まった。




肉を求める者たち


(甲斐君の投げた枕が……)
(いつの間にか現れた亜久津の顔面に直撃した)


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