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家に帰る

「明日一日は合宿から離れゆっくり体を休めて下さい。各地域へ向かうバスを用意しています。必要な荷物をまとめてバスに乗って下さい」

へぇー、家に戻れるんだ。今は家に帰ったら両親がいるみたいだし、帰ってゆっくり話すのも良いな。最近モヤモヤしてばっかりだし。

周りからは家に帰るぞー!とか日帰り旅行する? など喜ぶ声が聞こえる。
なるほど、旅行か。大阪や沖縄に向かうバスもあるようだしどのバスに乗るかは自分次第。一日しかないけど旅行も良いかもしれない。

「コシマエー! 咲本ー! 大阪おいでーや!」
「俺はパス。家でゆっくりしたいし」
「えっと、私も家に帰ろうかな……」
「えぇー!?」

青学と四天宝寺はそれぞれ地元へ帰るのか。やっぱり貴重な休みだし実家に戻るのが良いんだろうなぁ。神奈川行きにバスを探そうとうろうろしていると、近くにいた誰かにぶつかってしまった。

「いたっ」
「周りを見て行動しなさいよ」

うわあぁ、木手だ。眼鏡が光って表情が読めない。とりあえず怖い。

「えーしろー。沖縄行きのバスあっちさー」
「今行きますよ」

同じ比嘉中の凛に呼ばれて彼の視線が逸れて一息吐いた瞬間、また此方を見たので思わずひえっと声が出てしまった。何か言うのかと待っていたら、「沖縄は良いところですよ」と言って去っていった。

沖縄の海に入ってみたいけど、比嘉中しかいない沖縄行きのバスに乗るのは精神的に無理な気がする。それにしても神奈川県行きのバスは一体どこに……。

「咲本、うちの部員は全員俺の家に来てゆっくりする予定だがお前も来るか?」
「でっかい風呂に入った後はマッサージしてもらえるんだぜ! その後も豪華料理食べ放題!」
「食べ放題って岳人……間違ってはないけど。ひなたちゃんも特に用事ないんやったら身体休めに行こうや」

すごい、旅行で豪華ホテルに泊まった時のおもてなしの様だ。氷帝の皆は優しい人多いし、行ってみようかなぁ。

「わ、私も行っていいなら……」
「「咲本!」」
「「咲本さん!」」
「!?」

「行くぜ!」
「えっ!?」

立海の皆が私を呼び、赤也に腕を引っ張られる。向かうは神奈川行きのバス……かな? 何に急いでいるのか分からないけど、走る皆の背中を見て笑ってしまった。

「悪いな、跡部。咲本は我が立海と共に神奈川へ帰る」
「真田……。フン、咲本の好きにすれば良い」

神奈川行きのバスは勿論立海メンバーのみで、安心できる空間に包まれる。

「やっ柳先輩、隣座っても良いですか!?」
「あぁ」

柳の隣の席に腰掛けると安心して気が抜けた。合宿所では知らない人が多くて気を張りすぎていたのかもしれない。急に眠気がきて、いつの間にか眠ってしまっていた。




********************


名前を呼ばれて目を覚ますと柳の腕に寄りかかってしまっていた。前もこんな事があったっけ。柳に謝りながら荷物を持ち、バスを出ると外は真っ暗だった。

「今日はここで解散して、明日皆でどこか行こうか」

じゃあ解散! 明日行く場所の案を出しておくように、と解散した。そこでふと考える。私の家って、どこだっけ……と。トリップ前の家ならこの辺ではない事は確かだ。でも私が一回目にトリップした場所に家があるままなら、再びトリップした今も同じ場所で両親もそこに住んでいるのだろうか。

……もし違っていたら、私また移動しないといけない。

「咲本さん? 行くよ」
「……はい」

私の家は、あるのかな。不安でいっぱいなりながら幸村君の隣を歩く。時間を見ると19時だった。

「明日行きたいところある?」
「行きたいところ、あります! あ、でも……」
「どこだい? 遠いところ?」
「えっと、中学校に……行きたいです、なんて」

今の私はもう中学には行けないし。幸村君の顔は驚いたような、納得したような何とも言えない表情をしていた。

「行こうか。みんな制服着て」
「はい! 嬉しいです。でも学校開いてますかね」
「後輩がテニスコートにいるだろうし学校も開いてると思うよ」
「良かった……」
「じゃあ皆に連絡しておくよ。じゃあまた明日ね。迎えに行くから」

幸村君の家に着いた……って事は私の家が正面に…………ある。恐る恐るインターホンのベルを鳴らすと、お母さんが出てきた。

「おかえり、ひなた」
「お母さん! ただいま」
「ご飯できてるわよ。お父さんは今日外で食べてくるみたいだから、二人で食べましょ」
「うん!」

よ、良かったー! 私の家だった。お母さんもいる。荷物を置き服を着替えてリビングに行くとご飯ができていた。いただきますと母と一緒に手を合わせる。久しぶりのようなそうでないような、不思議な気持ちだ。

「テニス合宿は頑張ってる?」
「うん。上手い人のテニスを近くで見れてとても楽しいし」
「そう。そういえばこの間正面のお家の幸村さんとお話ししてね。息子さんもテニスやってるみたいよ。その合宿にいたりしてね、ふふ」
「いるよ。部長だから」
「あら、そうなの? すごいわね。家近いんだしまた連れてきなさいよ」
「えっ、うん。……あ、私の中学制服って置いてある?」

あるわよ、と出された制服は私が前に着ていた立海大附属中学校の制服だった。

「まじか」

思わず心の声が漏れてしまった。自分の部屋に行き卒業アルバムを確認すると、立海の制服を着て友達と写っていた。頭がぐるぐるしてきた。矛盾した世界に目を向けてはいけない。そう言われている気がしてアルバムを閉じた。

再びリビングに戻り、食事をしながら母との会話を続ける。

「明日、それ着て学校行ってくるね」
「何アンタ、コスプレするの? それに今冬休みだから学校開いてないんじゃないの」
「部活やってるから開いてるみたい。……やっぱりキツイかな」
「まぁ良いんじゃない。思い出作りには。楽しんでおいで」
「うん」

制服で学校に行くなんてもう出来ないもんね。大学では私服だし。楽しもう。




家に帰る


(制服着るのドキドキする)


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