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寂しい

「そういう事やったんか。大変やなぁ、変な嫌がらせとかされんと良いけど。ほんで財前は咲本さんが何もされへんように見張ったってるっちゅーわけやな」
「え、そうなんですか?」
「んなわけないじゃないスか。面白そうやっただけです」
「なら俺も一緒におろかなぁ」
「暑苦しいんでいりませんわ」

白石に先程の凡子呼びの事を話すと、三人でチームを組むかの様に一緒に行動することになった。白石の言った通りだとすると財前はめちゃくちゃ良い人だけど、本人が言うように面白半分でついてきてるだけだと思う。私についてきたところで何も起きない気もするけど。

外に出ると離れた所で、柳の横に保健医さんがいるのが見えた。柳って大人っぽいし、何か……お似合い、だなぁ。早く彼と話したいけどあそこに割り込む勇気は私には無い。

「柳君」
「え?」
「気になるんやろ?」
「……はい」
「やっぱりあの先生ずっと彼についてるなぁ」
「……」

白石の言う通り、気になる。とても気になるし、柳に話しかけに行きたい。だけど行けない。すると財前が私の背中をドンと押した。

「引っ張ってきたらえぇやん」
「うぐっ。それは……難易度が高いです。でも私、柳先輩に謝らないといけないことがあって……」
「じゃあ俺らの出番やな。行くで財前」
「あー、まぁしゃーないっスね」

自分の頭を掻きながら白石と共にあちらへ向かう財前。俺らの出番とは一体どういうことなの。状況が把握出来ないまま私から二人は離れて行く。そして彼らは保健医さんに話しかけに行き、代わりに柳が私の方へ向かってきた。

「どうした、咲本。伝えたい事があると聞いたが」
「あっ、えっと……。さっきは、ごめんなさい。怪我してるの気付かなくて。その上だっ、抱きついてしまい……」
「いや。血がお前につかないようにと離れただけだから気にするな。それと、俺がお前を拒絶する確率は10%だ。安心しろ」
「10%あるんですか!?」
「冗談だ」

良かった、ちゃんと謝れた。これも白石と財前のおかげだ。後でお礼を言わないと。優しくしてもらってばかりだなぁ。

「あの先生とは仲良く出来そうか?」
「えっ!? ええっと……」
「フッ、難しそうだな」
「努力はします」

折角女性が来たんだもんね。仲良くなる努力はしないと。午後練が始まる時間になり、柳は一言言って私から離れた。

各コートで中高生達が練習を始める。おかしいな、練習中なのに練習せずに保健医さんと話してる人がいる。赤也にブン太、彼らは何をしているんだ。どこか怪我でもしたのだろうか。


呆れて他のコートを眺めていると、幸村君が私に向かって手招きしていた。小走りで彼のもとに向かう。

「良かったらボール拾いやってくれるかい?」
「はい! 拾います!」
「ありがとう。助かるよ」

ボールが沢山転がっていたので、カゴにボールを入れていく。練習をこんな近くで見れるなんて幸せだなぁ。前にマネージャーしてた時を思い出す。監視役よりマネージャーの方がやる事があるから良かった。ボール拾いがある程度片付いたらタオルも用意しておこう。


「マネージャーしてくれてた時を思い出すなぁ」

不意に幸村君に話しかけられる。同じことを思ってたな、と笑ってしまった。

「私も同じこと思いながらボール拾ってました」
「ふふっ、そうなんだ」
「あの頃は楽しかったです」
「今はどうだい? 楽しい?」
「はい。今もあの頃も楽しいです」
「俺も。変わらず君といられて嬉しいよ」
「私も嬉しいです」

そう答えると幸村君は急に黙った。疑問に思い顔を上げると、こちらをジッと見つめていた。どうしたのか聞いてみるが首を横に振られる。

「幸村くん、ちょっと良いかしら」

背後から保健医さんに幸村君が声を掛けられた。さっきまで離れた所にいたのになと思い周りを見ると、保健医さんの近くにいた赤也とブン太はコートに戻って練習していた。

「はい」
「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、ついてきてくれる?」
「分かりました。……咲本さん、またあとで」
「はっはい!」

幸村君に何か用事だったのだろうか。ポツン、とまた一人になってしまった。
……何か寂しいな。




寂しい


(ボール拾いも今はあまり必要なさそうだし)
(静かにコートから離れよう)


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