Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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素敵なプレゼント

はぁ、とため息をつく。目の前には折れたラケット。赤也とリョーマに対してもう怒りはないが、このラケットは忍足と仲良くなったきっかけの物でもあったのでとても落ち込んでしまう。

本日の練習はお休み。外出許可をもらいラケットを買いに出かけよう。跡部に買ってやると言われていたが、お金持ちのぼっちゃんとはいえ中学生にお金を出してもらうのは申し訳ない。

自室を出て外へ向かいながら、悶々と考える。一人で行こうか、それとも誰か誘おうか……。一緒に選んでもらうとしたら、やっぱりお母さん。データをもとに私に合ったラケットを選んでくれそうだ。でも前に選んでくれた忍足もちゃんと考えて選んでくれたし……。

「うん、でもやっぱりお母さっ……わっ!?」
「行くぞ」

外へつながる扉の前には仁王立ちした跡部様がいた。私服だしどこか行くのだろうか。でも今行くぞって言ったよね。

「どこに……」
「決まってんだろ。咲本のラケットを作りに行くんだよ」
「えっ!? でも……」
「アーン?」
「よ、よろしくお願いします……」

威圧がすごくてノーとは言えなかった。っていうか買いにいくではなく作りに行く……?

外にはヘリが止まっていて、中には忍足が座っている。これは乗れという事だろうか……。

「俺らと約束したのに柳誘おう思ったやろ」
「アーン? そうなのか?」
「そっそんなことは……!!」
「動揺しとる動揺しとる」

どうしてばれたんだ。忍足、徐々に私の考えてること分かってきてる気がする。怖すぎる。


********************


そして着いた先は跡部邸。すごいや、大きすぎる。お城じゃないか。中には執事さんやメイドさんがたくさんいて、お金持ちのぼっちゃんってすごいなと感心した。こんなお金持ちな人、漫画の世界だけかと思っていた。

「いや、ここは漫画の世界だった」
「ひなたちゃんなんか言った?」
「あっ、いえ……何でもないです」

案内されたのは大きい部屋。テーブルや椅子が並べられてるので恐らく食事するところだろうか。多分どの部屋も大きすぎて何の部屋か私にはわからないだろう。

席に案内され腰かけると、テーブルには紅茶とたくさんのスイーツが並べられた。おしゃれで豪華。高級ホテルのスイーツビュッフェに来たみたいだ。

「こ、これは……」
「好きなだけ食っていいぞ」
「へっ!?」
「お先いただきますー」
「わっ、私も食べたいです!」

忍足に続いてマカロンを食べると、今まで食べたことのない高級な味がした。美味しすぎてテーブルをバンバンと叩きたいくらいだ。

「どのマカロンが良いんだ」
「えっ、どの……?」
「あぁ。ひなたちゃんはこの中やとどの色が好きなん?」

色とりどりのマカロンから、好きな色を選べという事か。パッと目に入ったマカロンを手に取った。

「えっと、これが好きです」
「ピンクか」
「前と同じのが良いってことやな」
「?」

前と同じ? 私前にもピンクが好きって二人に言ったっけ?
疑問を浮かべていると執事さんが跡部に棒のようなものを渡した。

「咲本、これを握れ」
「え、はい」

よく分からないまま棒を握り、手から離した瞬間また執事さんが棒を持っていた。……何だったんだ。跡部も忍足も特に何か言う事もなく、優雅に紅茶を飲んでいる。

その後も身体検査をされたり、よく分からないことだらけで、あっという間に日が暮れた。……そういえば私ここに何しに来たんだっけ?

静かに部屋に入ってきたメイドさんが跡部に耳打ちしたかと思えば、彼は口角を上げた。何か良い情報だったのだろうか。

「行くぞ」

もう良い時間だし合宿所に戻るのだろうか、と思って跡部と忍足についていくと、行き先は室内のテニスコートだった。

「俺様からのプレゼントだ。使え」

そう言われて渡されたのはテニスバッグ。多分中にはラケット。え、ちょっと待っていつの間に……?

「どうした」
「びっくりして声出ぇへんのちゃう? ひなたちゃん、中開けてみ」

バッグから中のラケットを取り出す。前に折れてしまったラケットとよく似た色だった。まじまじとラケットを見つめ、ぶわっと何かが込み上げてきた。

「……っ、あのこれ、私の、ですか?」

不思議と手にフィットするグリップに、ちょうど良い重さのラケット。まるで私の為に作られたかのような。

「当たり前だろうが。気に入ったか?」
「っ、はい! とてもっ……!」

「喜んでもらえて良かったなぁ、跡部」
「フン、打ちに行くぞ」

テニスコートへ行き、機械から出る球を打ち返す。

「すっごい……。なにこれ」

すごいすごい! 私用に作られたラケットは感動するほどに思った通りに打てる。こんな感覚初めてだ。

「どうだ、使い心地は」
「とても、とても良いです! 本当に嬉しいです!」

こんな嬉しいことがあるだろうか。そしてハッと我に帰る。

「あっ、でも私、お礼……。何を返せば」
「さっきの反応が見れただけで十分だ」
「えっ」
「帰るぞ」

そしてスタスタと歩いて行く跡部。忍足は私の肩にポンと手を置いた後、口角をあげながら彼の後ろをついて行った。

なんて素敵なプレゼントなのだろうか。ラケットを抱きしめながら、私も彼らの後を追った。




素敵なプレゼント


(跡部、顔緩んでんで)
(……。)


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