Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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仕返しはドリンクで

昼食を終えのんびりと歩いていると、後ろから肩を掴まれた。驚いて振り向くと少し息を切らした様子の跡部がいた。えぇ、何。怖いんですけど。

「咲本! 話は聞いたぞ。俺様が新しい物を用意してやる」
「っ!? なな、何の話……もしかしてラケット……?」

昨日のことで新しい物って事はラケットしか思い浮かばない。混乱していると跡部の後ろからひょっこりと忍足が出てきた。

「すまんなぁ。昨日のこと偶々聞いてしもて、跡部朝からずっとひなたちゃんのこと探しててん」
「へっ……えぇ!?」

ずっと探してたって、わざわざ私のために!? 信じ難いけど申し訳ない。ちらりと跡部を見ればドヤ顔の彼と目が合う。やっぱり跡部様にはまだ慣れそうにない……。目を逸らし自分の服の裾を引っ張りながら話す。

「あ、でも、あっ新しいのはいいです」
「アーン?」
「おおっ、忍足さんに、選んでいただいたものですし。そ、それに私は選手ではないので……必要ない、です」
「ひなたちゃん……。また一緒に選んだるわなー!」
「んぐっ!? やややめっ離してください!」

横から私に抱きついた忍足を引き剥がそうと必死に体を横に逸らす。しかし彼は中々離れてくれない。


「そうか……」

抵抗をやめて跡部を見ると珍しくしょんぼりしているように見えた。

「お前だけのラケットを用意してやろうと思ったが」

私専用のラケットだと……! そう言われれば気持ちが揺らいでしまう。でででもさっき自分で言ったように私は選手ではないんだ。毎日ラケットを握るわけでもないしそんな専用のラケットなんて……。

「ブハッ! めっちゃ欲しそうな顔してるやん。分かりにくいけど!」
「あっ、いやそんな……!」

これじゃあ欲望が丸出しじゃないか。

「選手じゃなくてもテニスが好きなら必要だろ?」
「うぐ……。そそそれはそうですけど」
「なら決まりだ。次の休日、お前のラケットを作りに行く」
「俺も行くでー」

そしてスタスタと歩いて行った跡部に頭を抱える。どうしよう、話が進んでしまった。

「ここは甘えるところやで。頼ったってぇな」
「えぇ……」
「跡部も好きでやってることやって。そんな気にせんともっとわがまま言って周りに迷惑かけぇな」
「……」
「第二のオカンからのアドバイスや」
「……は、はい」

そんな頼ったり我儘を言ったり、自分から行動するにはまだ怖い気持ちがある。立海の皆には沢山頼ってきたように思うけど、慣れない相手には難しいな……。


********************


「咲本」
「えぇっと。こ、これは?」
「乾汁じゃ。昨日の二人に仕返しぜよ」

ホイ、と仁王からドリンクを二つ渡される。成る程、理解してしまった。それぐらいの仕返しはして良いよね。別に味が不味いだけで栄養はたっぷり入ってるわけだし。

「悪い顔じゃのぅ」
「え、あっ……」
「ちょうど赤也が前から歩いて来とる。ほら行ってくるぜよ」
「はい!」

近づいてくる赤也にドリンクを持つ手が強まる。

「あっ! ひなた! 昨日はほんっとにごめん!」
「いえ、気にしないでください。……あの、これどうぞ」
「すげぇ色してっけど、これは?」

「栄養満点のドリンクです。その、今日は……元気がなかったので」
「サンキュー! ひなた!」

パアッと笑顔になる彼に罪悪感で胸が痛むが、ドリンクを口付けると同時に私は後退した。そしてダッシュで逃げる。後ろからは赤也の悲鳴。

今までありがとう……! さようなら!
私は涙を浮かべてその場を後にした。


終始見ていた仁王は私の知らないところで笑い転げていたそうな。


次にやって来たのはリョーマだった。桃城と一緒だ。

「あ、咲本じゃん。そういえば越前、コイツのラケット折ったらしいじゃねぇか」
「……何で桃先輩が知ってんスか」
「噂だようわさ!」
「広まるのはや」

いや、本当に。誰だ噂流した人。跡部や忍足も知っていたし、合宿所というのもあってか話が広がるのが早い。

「あ、えっと……これ差し入れ? ……です」

「「それってまさか……」」

流石青学、乾汁には敏感だ。一つしかないドリンクを見て二人が冷や汗をかきながら目を合わせる。

「勿論それは越前にだよな?」
「ちょっ、桃先輩でしょ」

これってそんなに恐ろしい飲み物なんだ。私も一度意識を失ってるから分かるけど。

「昨日怒鳴ってしまいましたし、その、お詫びに越前君に……」
「ゲッ……」
「よっしゃあ!」
「そのドリンクさ、乾先輩から貰ったもの?」
「いえ、違います」

私ではなく仁王が。

「嫌な予感しかしないんだけど」
「折角なんだから飲めよ! 越前!」

桃城は私の手からドリンクを受け取り、リョーマの口に無理矢理突っ込んだ。桃城さんナイスです。

ドリンクを口にし、倒れてしまったリョーマを見てから桃城は私を見る。そして笑顔で手を高く上げた。

「ホイ。ハイタッチ」
「えっ、はい!」

ジャンプして彼とハイタッチをした。




仕返しはドリンクで


(リョーマは医務室に運ばれていった)


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