Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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例のドリンク

斎藤コーチからのメールの内容は、寮母になった気持ちで彼らの見張りをお願いします、との事だった。

寮母……。きっと私が誰とでも仲良く会話が出来て活発で明るい性格だったら、皆の合宿はもっと楽しくなっただろうし色んな面で皆の役に立てたんだろうな。私なんて役に立つどころか心配されたり迷惑をかけてばっかり……。

あぁ、駄目だ。今更こんなこと考えたってどうしようもない。

気分転換に何か食べようかな。甘いものとかないかな。食堂に行ったら何かあるかな。




食堂に行くとガランとしていて食べ物はなく、ドリンクボトルが数本置かれていた。周りに誰もいない……貰っても良いかな。


ーーーーそう思い、このドリンクを口にしてからの記憶が無い。




********************


良い匂い。そしてふわふわの何かに包まれてるような感覚。近くで声も聞こえる。

「真田副部長にたるんどるとか言われそうだぜ」
「仕方ないだろ。どこに寝かせておくんだよ」
「柳先輩に相談……いやいやいや!」

赤也と日吉の声……夢? 漫画の世界のキャラの声が近くで聞こえるはずがないし、夢だ夢。

「そんなん言いつつもちゃっかり自分とこに寝かせてるやん」
「ひなたをお前らのベッドで寝かせられるかっての!」

……ん、あれ? 今私の名前呼ばれた? あぁ、私ってトリップしてたんだったっけ。じゃあ今ってどんな状況?


「起きたんじゃねぇのか?」
「おっ? ひなた! 大丈夫か?」
「海堂、気にしてへんふりして気になってたんかいな」
「あぁっ!?」
「えっと、私なんで……?」
「食堂で倒れてたんだってよ」

何で倒れてたんだろう。そういえば気を失う前に何かを口にしたような……。

「多分乾汁を飲んで気を失ったんだ。うちの先輩がすまねぇ」
「あ、あれが……」

あの置いてあったドリンクは乾汁だったのか。本当に気を失うほどの味だったとは、恐るべし……。何が入ってたんだろう。


上半身を起こすと自分がベッドで寝ていたことに気がつく。同じベッドに腰掛ける赤也に、向かいのベッドには日吉と海堂がいる。財前の声も上から聞こえたし、もしかしてここって次期部長組の部屋!?

乾汁を飲んで気を失ったのは分かった。でもどうしてこの部屋のベッドの上にいるんだろう。誰かが見つけてくれたのかな。

「私、どうやってここに……」
「偶々食堂を通りかかった時に、倒れてるお前を見つけたから運んできたんだ」
「はっ、はこ!?」

え、じゃあ日吉が倒れていた私を担いでここまで運んできてくれたってこと!? 覚えてないから恥ずかしいとはならないけど、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「写メあんで」
「え"っ……」

上のベッドから腕が伸びてきて、その手に持っているスマホの画面を見ると日吉に横抱きにされてる私の姿が写っていた。

「なななななななっ!?」

ボンっと顔から火が出たように熱くなる。ああぁ! 覚えてないけどやっぱり恥ずかしい!!

「もういいだろ!」

赤也の手が財前のスマホに向かって手を伸ばした。それによってスマホの画面が見えなくなる。

「おっと危な、怒んなや切原。咲本、写メ送ったったで」

恥ずかしいけど、日吉の写真が私のスマホに……! 有り難や。今更だけど私のスマホ、あんまり写真撮ってないんだよね。皆を撮って撮って撮りまくりたい。どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。

っていやいや! 今はそんな事考えてる場合じゃない。日吉にお礼を言わないと、と思って不意に顔を上げたら、向かいの上のベッドにいた日吉とバチリと目が合った。

「気分はどうだ?」
「ぜっ、全然大丈夫です。ありがとうこざいました。運んでいただいて……」
「あぁ」

良かった、ちゃんとお礼言えた。

「咲本って切原より日吉の方が気ぃ許してるんちゃう」
「「えっ」」

突然の財前の発言に私と赤也の声が重なった。まぁ確かに赤也に話しかけるより日吉に話しかける方が楽かもしれないけど、そんなに態度に出てたのかな。

「そうなのか!? ひなた!」
「……」
「目そらすなー!」

赤也の問いかけにスッと目をそらすと怒られ、周りからは吹き出す音が聞こえた。そして三人が声を揃えて赤也におつかれ、と声をかけた。

「クッソー! 柳先輩に言いつけてやる!!」

そう言って赤也は勢い良く外へ飛び出した。柳に言ってどうなるんだ。日吉は呆れてため息をついていた。

「アイツの相手も大変だな」
「まぁ……。すみません、私部屋に戻ります」

もう一度お礼を言って部屋を出る。ハァ、緊張した。でもベッド良い匂いだったな……って馬鹿! 私の変態!




例のドリンク


(乾汁、恐るべし……)


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