Noウェイ!?とりっぷ | ナノ
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おかえりなさい

コートの何処かで聞き覚えのある声がした。今、皆練習中だけど気になるし少し離れてもいいかな。


「帰ってきたでー!」

「えっ?」

使われているコートとは少し離れた場所まで歩くと、誰かが元気よく飛び回る姿が見え目を疑った。あれは、金ちゃん? ここにいないはずの彼がどうして……。確かシングルスに不参加だった金ちゃん、それにリョーマはこの合宿から脱落しているはず。

「咲本ー!」
「へっ、はっはい!」

私の姿を見つけて走ってくる金ちゃん。後ろにリョーマが付いてきているのが見えた。二人ともボロボロなんだけど、どうして!? それに二人が着ているあのジャージ……。今練習してる皆のジャージと色が違う。

「ど、どうしてここに……」
「いやー、崖登ったり鷲に追いかけられたりで大変やったでぇ」
「崖? 鷲? えぇ」
「まっ、色々あったけど戻って来たってわけ」
「へ、戻って……?」

どうしよう訳が分からない、けど二人の後ろにはぞろぞろと脱落してしまった人達が歩いてくる。ということはつまり、皆が戻ってまたこの合宿に参加するの?

「戻って来たんだけど、何か言うことないの?」
「あっせやせや!」

二人に言うこと? 戻ってきた二人に……あぁ。

「おっ、おかえりなさい!」
「「ただいま」」

格好はボロボロだけど、二人の笑顔は太陽のように眩しかった。


「!!」

歩いてくる人達の中から柳を見つけた。柳だ……! 久しぶりのお母さんだ! ブワッと嬉しさが込み上げて、目頭が熱くなった。すぐに柳の元へと駆け寄ると彼は微笑んだ。

「おかえりなさい!」
「あぁ、ただいま。寂しかっただろう?」

そう言って柳は私の頭を撫でる。……でも、あれ? なんか撫で方が違う気がする。

「にっ、仁王先輩、ですよね?」
「……」
「あ、あの」
「プピーナ」

「よく分かったな」

柳に変装した仁王の後ろから本物が現れた。ウィッグを外しジャージの前チャックを下げる仁王に「俺の変装をするな」と注意する柳。本当に、帰ってきたんだ。

「……っ」
「咲本? どうし……」
「……ヒュー。大胆じゃのぅ」

脱落してからも彼らは強くなる事を諦めなかったんだろう。身体中は傷だらけだし服もボロボロになっている。何故帰ってこれたのかは分からないけど、今はそんな事気にしてられない。
ここにいる皆は優しい。でも柳が居ないと不安で不安で仕方なかった。自分がどれだけ彼を頼っているのか改めて分かった。

暖かい腕が後ろに回った瞬間、ハッと我に返った。目の前には柳の胸板。もももっもしかして私は柳に抱きついてしまったのか。どうしよう、早く離れないと!

「どうした?」
「わ、私! すみませっ……ブッ!?」

顔を上げて離れようとしたら大きな手で後頭部を抑えられ、そのままきつく抱きしめられてしまった。

「咲本が寂しがっていた確率、96.42%」
「……ひゃく、パーセント、です」
「そうか。今顔が赤い確率も100%だな」
「あ、当たりです。けど、恥ずかしいので離して、ください」
「お前から抱きついてきたのだろう?」
「そ、それは体が、勝手に」
「なら俺も体が勝手に動いてしまったという事にしておこう」

今日の柳は意地悪だ。でも嬉しい。柳の温もりを感じて口角が自然と上がる。それをバレないように彼の胸板に顔を埋めた。

「お熱いところ悪いんじゃが、周りから誤解されるぜよお二人さん」
「っ!?」

仁王の言葉に驚いて周りを見ると、帰ってきたメンバーが数人立ち止まって此方を見ていた。バッと柳から離れる。最初に口を開いたのは氷帝の岳人と宍戸だった。

「お前らそんな仲だったのかよ」
「前から仲良いと思ってはいたけど、まさか付き合ってたなんてな」

誤解されてるー! 否定する前に彼らは去って行ってしまった。去り際に「跡部も忍足も悲しむだろうぜ」とか聞こえたんだけど! 何で悲しむのかは分からないけど誤解なんです!

「面白くないナリ」
「えっ?」

隣にいる仁王がぼそりと呟いた。口を尖らせていてどこからどう見ても不機嫌な顔をしている。そっとしておいた方が良いのか、何か話しかけた方が良いか……。うーん、思い切って声を掛けてみようかな。

「にに仁王先輩!」
「?」
「また合宿に参加、するんですか?」

私の問いかけにコクリと頷く仁王。喋ってくれないー! 助けてお母さん……。助けを目で訴えると柳は気にするなと言っていたので、気にしないことにする。

帰ってきた皆は二番コートを乗っ取りにいくらしく、私もついて行った。向かう途中で柳から今までの事を教えてもらった。

試合で敗北してしまった後、何故か山奥へと連れてこられたらしく、そこで崖に登ったり、崖の上のコートで試合したり鷲から逃げる特訓もあったらしい。ぶっ飛んでるなぁ、と思いつつもそういえばテニプリは色々とぶっ飛んでるんだったな、と一人で納得してしまった。

何はともあれ強くなって帰ってきた脱落組は、また合宿に参加する。とてもうれしい事だ。




おかえりなさい


(嬉しすぎて)
(にやけが止まらない)


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