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ジャージを求めて

英二に青学のジャージを着せてもらった私、咲本ひなたは嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになっていた。

「誰かいないかにゃー。あっ! 跡部に鳳ー!」

えぇぇ!? や、やめてー! 鳳はともかく跡部様には言わないで!

「あーん? どうした」
「あれ? 咲本さんそのジャージ」
「実は二人にお願いがあって!」

英二が今までの経緯を二人に話す。恥ずかしさで耐えれずに逃げたかったが、ガッチリと腕を掴まれているため逃げれなかった。

「ジャージを着てみたいなんて可愛いとこあんじゃねーの」
「ふふっ、本当ですね。あ、俺の持ってきましょうか?」
「いや、ちょっと待ってろ」

えっ、あの跡部様が態々ジャージを取りに? ってその前にジャージを貸してくれるの? あの跡部様が?

「やったね! でも跡部が……意外だにゃー」
「跡部さん、咲本さんの事気に掛けてるんですよ。多分妹みたいに思ってるんじゃないですかね」
「へぇー。良かったねひなたちゃん」
「ええっと、は、はい……」

いやいや跡部の妹なんて恐れ多いし。忍足にも前に同じような事を言われたけど、氷帝の人達の勘違いだと思う。そんな事を話していると跡部が氷帝のジャージを片手に戻ってきた。

「ほら、特別に貸してやる。有り難く受け取れ」
「へっ、はっい」

青学のジャージを英二に返して、氷帝ジャージを着させてもらう。今私が着ているのはあの跡部様のジャージなのか、と思うと緊張して変な汗が出てくる。とても高級なものを身につけている気分。あながち間違いではないけど。あと薔薇の香りがめちゃくちゃする。

「中々似合ってんじゃねーか」
「そうですね」
「……あっ、ありがと、ござっ、います」
「オイ、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「だだだいじょうぶ、です。……ジャージう、うれしい、です」
「そうか。気が済んだら返しに来い」

跡部は私の頭をポンポンと二回叩き、去っていった。跡部さんも嬉しいみたい、と鳳が私に言うがそんな風には見えなかったので首を傾げた。

「ありがとねー。よーし! つぎつぎー!」

鳳とも別れ、廊下を二人で歩いていると段々とこの跡部様ジャージに慣れてきた。しかし本当良い匂いするな。


向かう先には橘さんと千歳がいた。確かあのコンビは九州二翼って呼ばれてたっけ。そういや私さっき橘さんから逃げてしまったんだった。うわぁ気まずい。

「二人とも! ひなたちゃんにジャージ貸してあげて! 着てみたいんだって」
「ジャージ? 不動峰ので良いのか?」
「今は氷帝のジャージば着とるんやね」
「色んな学校のジャージを着せてあげたいんだよね!」
「分かった。取りに行ってくる。行くぞ千歳」
「ファッションショーするばい」

二人ともジャージを取りに行ってくれた。私の小さな我儘を聞いてくれるなんて、ここの人達優しい人ばかりだな。

そして数分後、私に渡された不動峰と四天宝寺のジャージ。こんな贅沢なことがあるだろうか。夢のようです。

先に不動峰のジャージに腕を通す。わぁ、黒色のジャージだ! 黒って強そうでかっこいいんだよね。着てるだけで強くなれた感じがする。

「ん? そういえばさっき咲本が悩んでいた事って……」
「っ、えっと……これ、で、す」
「ハハッ、そうか。解決できて良かった」
「あ、ありがとう、ございます」
「次はこっちたい」
「はっはい」

次に四天宝寺。この学校の人に借りるにしても人選ミスじゃないかな? さっきまでの大きいレベルじゃないよね。

「大きかねー」
「千歳の身長は190超えだからな」
「チャック閉めてみよーよ。……あ、顔半分隠れたにゃあ」
「これも履いてみなっせ」

英二にジャージの前チャックを閉められ、千歳に下駄を履かされる。待ってこの下駄って千歳がいつも履いてる鉄下駄……。確かめちゃくちゃ重いんだよね。

「……う、うっごけ、ない」
「6キロあるばい」

片方で6キロってことは合わせて12キロってこと? そんなのいつも履いていたなんて怖い。恐ろしい人だ、と思って顔を上げれば千歳と目が合う。くろーい笑顔が見えました。私が下駄を履いて動けない様子を見て楽しんでるな、この人!

「どぎゃんした?」
「うぐっ、な、別に……なにも」

ムカつく……けどこの人に私が何か文句を言えるわけがない。

「ひなたちゃんにはこんな重いの無理だよー。ホイ、千歳返すね。二人ともあんがとねー」
「そかー」
「おう。満足できたなら良かった」

英二がジャージと下駄を二人に返してくれた。にしても英二のコミュ力半端ないな。どうやったらそんなフレンドリーな人間になれるのか。その力を少し分けてほしい……。

「どー? 他に着たい学校のジャージある? って言っても学校分かんないかにゃー」
「あ、ありがとうございました! あの、とても嬉しかったです。もう、十分っ、です!」
「よかったよかった! んじゃ俺そろそろ行くね!」
「ほっほんとにありがとうございました!」
「いいよん。あ、これも返しといてあげるよ」

英二が跡部のジャージを持って行ってくれた。自分で返した方が良かったのかもしれないけど、まぁいいか。沢山の学校のジャージを着せてもらったけど、やっぱり私のジャージはこの世界には無いのかな……。

「探し物はこれでしょうか?」
「へっ、あ、これ……」

声がしたと思ったら、スタスタと私の方へ向かって歩いて来た柳生。彼から手渡されたものは、ずっと探し求めていた立海のジャージだった。

「咲本さんが空から降ってきたときに一緒に落ちてきたのですが、少し汚れていたので洗濯させていただきました。返すのが遅くなってすみません」
「え、あっありがとうございます!」

私の……あったんだ。良かった。私がぎゅうっとジャージを抱きしめると、柳生は眼鏡に手を当て微笑んだ。

「色んな学校のものも良いですが、貴女は我が立海のジャージが一番似合いますよ」




ジャージを求めて


(そ、そうですか?)
(えぇ、勿論)


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