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波乱の兆し

「んあー! 靴紐切れやがった!!」

部活が始まる前、部室にて大声を上げる赤也。手には切れた靴紐があった。たまたま近くに居たもんだからめちゃくちゃビックリした。

「明日は全国大会決勝戦だというのにたるんどる!」

「すんませーん!」

そう、いよいよ明日は全国大会の決勝戦だ。前日の今日は土曜日なので朝から部活だ。真田に怒られている赤也を横目にマネージャーの作業をしようとしていたら柳に止められた。

「赤也と一緒に買い出しに行ってこい」

『えっ、えぇ……?』

「ドリンクの粉があと三日分しかないだろう。今日買いに行った方が良い確率90.4%だ」

『でも今日の分のドリンク作らないといけませんし』

「咲本さん。良いから行ってきな?」

『い、イエス、ボス……』

面倒だから断ろうとしてたのにいきなりの幸村君の登場と命令に断ることができなかった。だらだらと流れる汗。柳を見ると口を押さえて笑っていたので持っていたドリンクボトルを投げたくなった。魔王様に逆らうことなんて出来ない。

「ひなたも一緒か! んじゃ行こーぜ」

「あ、俺も行くぜぃ。予備のグリップ買いに行かねーと」

「明日が決勝戦だというのに貴方達は……」

「なら俺も行こうかのぅ」

「仁王君は真面目に練習したまえ」

「プピーナ」

結局私と赤也、ブン太の三人で買い出しに行くことになった。他の皆はラケットを持ってコートに向かっていった。買い出し、面倒だなぁ。




********************


スポーツセンターに着きそれぞれ求める物を買って集合しようと決めたのだが、二人とも遅い。グリップテープや靴紐はこだわりがあるのだろうか。私はいつものドリンクの粉を買うだけなのですぐに買い物は終わった。

二人より先にスポーツセンターから出ると、チャラついた男が前から歩いてきた。前を見ていないようだったので道を開けたのに肩がぶつかりギロリと睨まれた。

「いってーな。どこ見て歩いてんだよ」

『え、えぇ……すみません……?』

絡まれてしまった。前見てなかったのはそっちじゃないか、と文句言いたいのはこっちなんだけど。面倒な事になりそうだから言わないけど。

「チッ。金で許してやるよ」

『無理です』

「あ? 金出せっていってんだけど」

あぁ、めちゃくちゃ睨まれてる。でも真田や亜久津の迫力に比べるとまだマシな気がする。ハァ、と溜息を吐いたのが癇に障ったのか腕を掴まれた。

「お前なめてんのか? 女だからって容赦しねぇぞ」


ーーピキッ。


『前を見ずにぶつかってきたのはそっちじゃないですか。私はわざわざ避けたのに、いきなり横に広がってぶつかってきましたよね? 仮に私が悪くても、怪我も見当たらないし服も汚れていないし何に対してお金を出せばいいんでしょうか』


私が口を閉じると、チャラ男は口を引きつらせていた。このまま去ってくれる訳ないだろうな、なんて思っていると握られた拳が私の目の前に来ていた。


これは、やばいっーーーー

咄嗟に目を瞑るが痛みはやってこない。恐る恐る目を開けると二人が私の前に立っていた。

「「俺の彼女に何か用すか」」

『…………えっ?』

「オイ赤也、お前同じ事言うんじゃねー!」

「それはこっちのセリフっス!!」

「うわ、二股かよ」

助けてくれたのはありがたいけど話がややこしくなってきた。そしてまたもや口喧嘩する二人。チャラ男は若干引いてるように見える。

「チッ、ごちゃごちゃやってねーで、金出せや中坊が!」

二人が殴られそうに……! 庇うことなんてできるわけなく私はあわあわと慌てるしかなかった。赤也を見ると赤目になっていてデビルモードになろうとしていたので、相手が危険すぎると判断して二人の腕を引っ張り全力で逃げた。

「うわっ! ひなた!?」

「アイツ、潰してやる!」

『お、お二人は全国大会の試合中なんですよ! 問題を起こしたら試合出来ないんです。分かってるんですか!?』

「あの野郎ムカついたろぃ」

「ひなたも殴られそうになってたじゃん」

『うっ、すみません……。助けていただいてありがとうございました』

私があそこで堪えておけば何も問題なかったわけだしね。巻き込んで申し訳ないや。トボトボと学校に戻ろうと歩いていると、ブン太に「強くなったな」と背中をトンと押され、赤也には髪をくしゃくしゃされた。





「おかえり」

学校へ戻り部室に入ると柳が椅子に座りデータノートをまとめていた。今日の部活は午前中までなので、他の部員は恐らく帰ったのだろうと思う。

「見知らぬ男性と揉めたらしいが、怪我はないか?」

「大丈夫っス!」

「男とひなたが言い合いになっててさ、殴られそうになってた時は焦ったぜ」

『す、すみません……。ってあれ? 何で知ってるんですか? もしかしてずっとつけて』「いたわけないだろう」

『じゃ、じゃあやっぱりその目は何でも見えてしまう……いてっ』

コツンと頭を軽く殴られた。ちょっとふざけ過ぎてしまったかな。

「一年は今日部活が休みだっただろう。偶々その場にいた一年から連絡がきて知っただけだ」

じゃああの場面をテニス部に見られてたってことですか。恥ずかしい。


「柳相手だとボケるなぁ」

「そっスねー」

ドリンクの粉をいつも置いている棚に置いて帰る準備をする。


「帰るぞ」

『はい』

「丸井先輩コンビニでアイス奢ってくださいよー」

「今日だけぜぃ。次からはジャッカルに頼めよな」

「やりぃ!」


いよいよ明日は青学との決勝戦だ。




波乱の兆し


(応援頑張るぞ)


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