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平和な日常

『今日も平和だなぁ』

きのちゃんがこの世界から消えてしまい、一ヶ月が経った。きのちゃんは転校したということになったが、きのちゃんが消えた次の日に立海のレギュラー達は私にたくさん謝ってくれた。きのちゃんの本性を知るために、私を疑うような行動をしたり距離をとったりしていたようだ。何より嬉しかったのは、初めから誰一人私の事を疑っていなかったこと。色々と大変だったが、一ヶ月経つと殆ど忘れてしまった。これは私自身がその事を記憶から消したいのか、それともきのちゃんが消えてしまったからそうなってしまっているのか、どちらが正しいのかは分からない。


「ひなたー!」

お昼休みになると、赤也がうちの教室に来た。チーちゃんに行ってきなと言われお礼を言いながら赤也の元へ向かうと、レギュラーの皆で部室で食べようとの事だった。赤也と一緒に部室へ向かうと、皆がお弁当やパンを机に置いて食べるのを待っていてくれた。

「待ってたよ」

「早く食おうぜ! 腹減った」

「お前はちょっと食べてるだろ」

「るせーよジャッカル」

『す、すいません。お待たせして』

「咲本さん、こっちおいで」

幸村君に手招きされ、隣の空いた席に座らされると皆ご飯を食べ始めた。今日も早起きして作ったお弁当、我ながら美味しい。今日あった出来事や部活の事など色んな話で盛り上がる。ご飯を食べ終えお弁当を包んでいると、横から声を掛けられた。

「今日は君に渡したいものがあって」

『え?』

「少し遅くなったが、これは必要だろうと思ってな」

「見たところ前と同じサイズで大丈夫なはずだ」

『サイズ?』

これからもよろしく、と渡されたのは、新しい立海のジャージだった。ボロボロになったジャージは捨てることが出来ずに家に置いてあるのだが、そのジャージが着れるわけでもなく……。ここ一ヶ月は部活に体育のジャージを着ていた。でも、まさかまたテニス部のジャージを渡してもらえるなんて……。

「ククッ、泣いてるぜよ」

「咲本さん。このハンカチ使って下さい」

『う、あっ、りがとうございます』

「これからも頼むぞ、マネージャー」

『っ、はい』

柳に頭を撫でられると、もう怖い事も辛い事も無いんだ。そう思えてくる。私も、皆に伝えなきゃ。いつも自分の言いたい事は殆ど言う事ができないけれど、今は言わなきゃ。


『あの、そのっ……』

「ゆっくりでいい」

『っ、皆さんありがとうございます。私、これからもマネージャーとして、テニス部を支えていきたいです。このジャージも皆さんの気持ちも大切にしたいです』

必死に思いを伝えて周りを見渡すと皆は優しい笑顔をしていた。……もう涙が止まらないや。




********************


「さぁ咲本さん! 食べて食べて」

『は、はい……むぐっ!?』

「これ美味いだろぃ」

『……はい。美味しい、です』

部活が雨で中止になった土曜日、お寿司が食べたい気分だったらしい皆と一緒に食べに行く事になった。おすすめの寿司屋はないかと聞かれて、思い付いたのが「河村ずし」。一度行ってみたかったので、来ることができてとても嬉しい。


「ただいまー」

「おう! 隆おかえり!」

「うへー、すげぇ雨。こんにちはー」

「っス」

「へいらっしゃい」

タカさんが帰宅しただけかと思ったら、雨でずぶ濡れになった桃城とリョーマが入ってくる。そして私達の顔を見て「あっ」と声を漏らす。寿司に夢中だった皆は反応に遅れたが、三人に気づいたようで気まずい空気が流れる。

「何だ知り合いだったのか」

「あぁ、うん。立海テニス部の人達だよ。桃、越前、ちょっとタオル取ってくるね」

タカさんがタオルを取りに行くと、桃城は何でここにいるんスか?と尋ねてきたので、赤也が寿司食いにきたに決まってんだろ、と返す。

「それは分かってるけどよぉ。あ、咲本も久しぶりだな」

『は、はい』

「そういえばこいつ、ひなたの頭にボール当てたんだよなぁ」

思い出したかのようにブン太が言うと、立海の皆の視線がブン太に集まった。

「なんだいそれ。聞いてないよ」

「データに書き加えておく」

「あはは〜。手元が狂っちまいまして……。偶然咲本の頭に」

「チッ、これだから下手くそは」

うわぁ、赤也が黒い。いつもの天使じゃないよ。悪魔になってる。桃城も下手くそという言葉に反応して今にも喧嘩が始まりそうだ。と、止めなきゃ……。

「下手かどうかはテニスで決着つけようじゃねぇか」

「あぁいいぜ」

「ハイハイそこまでー。お二人さん、寿司で勝負するのはどうじゃ?」

寿司? どういう事なんだろうと思った矢先、仁王が二人の前に置いたのは、皿の上に綺麗に並べられた寿司。

「ロシアンルーレットナリ」

赤也と桃城は勝負だ!とやる気になっていた。仁王は楽しそうに口角を上げていた。……よし、私はお寿司食べるか。サーモンを取ろうと箸を伸ばすと、横からひょいと手が伸びてきた。

「うん。美味いね」

『わ、わたしの……サーモン』

り、リョーマめ……。私のサーモンを取ったな。許さない。

「仁王、こっちも勝負したいそうだ」

「了解ぜよ」

仁王が私とリョーマの前に先程と隣同じように寿司の並べられた皿を置く。まさか、私達にもロシアンルーレットをしろと?

「負けないから」

『わっ、私だって!』



平和な日常


(っ!ゲホッ、からっ!?)
(よかった……勝った)


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