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遊園地で

『どうして私が部活に行けないこと知ってるの……』


きのちゃんは私の靴箱を汚されたことを知っている。何故ならきのちゃんが綺麗に掃除してくれたから。私のジャージがボロボロになり、部活に行けないと知っているのは恐らくブン太だけ。


「良いこと思いついたで」

そう言ってきのちゃんの隣を先程からずっとキープしている忍足。微笑みあう二人は美男美女のカップルにしか見えなくて、周りの人々の注目を浴びている。だが、きっと忍足の方は作り笑い。


「ひなたちゃん何乗りたE?」

『うぇっ!?』

「早くしねぇと何も乗れねーぞ」

先程まで寝ていたジローと、遊園地に来て嬉しそうな岳人が私の腕を引っ張る。引っ張られながらも何を乗ろうかと考えていた時、黄色い声が耳に届いた。振り向くと跡部やその横にいる宍戸と鳳の三人が沢山の女の人に囲まれていた。

ジローや岳人も立ち止まり、呆れた顔でそちらを見ていた。沢山の女の人達に囲まれては私はどうする事も出来ない。「ふぅ」と溜息を吐くと、私は静かに御手洗いに向かった。




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(氷帝side)

跡部は女達を慣れたようにスルーし、ジロー達の元に行くと咲本がいない事に気が付いた。跡部が「咲本はどこだ」と尋ねると氷帝のレギュラー達の顔は青ざめた。忍足と綺乃は別行動なのは皆把握していたが、咲本の居場所を知る者は居なかった。


「こんな広い所ではぐれたら大変ですよ」

「居なくなったのに気付かなかったなんて激ダサだぜ」

「早く探しに行こうぜ!」

そう言って鳳、宍戸、向日は咲本を探しに走り去っていった。


「……ったく、あいつら勝手に行きやがって。樺地、電話だ」

「ウス」

「もしかして捜索依頼を出すんですか?」

「そうだ」

「あまり大事にすると、咲本が嫌がりますよ」

「なんだと?……そうなのか」

跡部は日吉の言葉を聞き入れ、自分の足で探すことにした。そして跡部と樺地、日吉に分かれ咲本探すことになった。




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(主人公side)


『あ、あれ?』

御手洗いから元いた場所に戻ってくると、氷帝のメンバーは誰もいなかった。近くをぶらぶらとしていると、何故かクマの着ぐるみに風船を渡され、風船片手にメリーゴーランドを眺めていた。すると後ろから声を掛けられた。



「ここにいたのか」

いつも通り無表情な日吉は私の持っている風船を見た。

『さ、さっき……クマさんに貰いました』

そう言うと鼻で笑われた。今、絶対心の中で私のこと馬鹿にした。

『あ、あの他の方達は……』

「集合場所決めるの忘れたな」

『え?』

「いや、何でもない。少し回るか?」

回るって、二人で皆を探すってことだよね。私がこくりと頷くと、日吉は足を進めた。


「あの女とは仲が良いのか」

『えっと……たぶん』

「多分か。さっき忍足さんとの会話聞こえたんだが、部活に行けないのか」

『じ、地獄耳……。その、ちょっと学校で色々ありまして』

「……だ」

『?』


「俺は咲本の味方だ。俺に何かできるなら話せ」

ーー俺もアンタがやってないって信じてるし。だからさ、泣くなよ。


『……ふふっ』

「なんだ」

『この間切原先輩にも同じようなこと言われました』

「……」

そう言うと日吉は口を尖らせて黙ってしまった。

『ありがとうございます。でもこの件は自分で、解決したいんです』

そう言うと日吉は頭を軽く撫でてくれた。そして私から視線を逸らすと、何かを見つけたのか眼が光った気がした。


「怖いの苦手か?」

『え?えっと……』

日吉の視線をたどると、そこにはお化け屋敷があった。そういえばこの人お化けとか学校七不思議とかミステリー系が好きなんだっけ。

『大丈夫です』

前にブン太と柳生と入ったお化け屋敷では全然怖くなかったし大丈夫だろう。あの時はお化け役が知り合いだったからかもしれないが。

そして日吉は早足でお化け屋敷の入り口へ向かった。風船は欲しそうに眺めていた小さい子供にあげた。二人で中に入ると真っ暗というほどではなかったが、薄暗くて通路が見えにくかった。チラリと日吉を見ていると、真剣だがどこか楽しんでいるような表情。通路の両側には、奇妙な人形や置き物が並べられていて、驚かせる役の人はいないみたいだ。

「何もないな」

『ですね』

怖い雰囲気だけ楽しむ用のお化け屋敷だったのだな、と出口を出ようとした瞬間ーー


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

『ふぎゃあぁぁ!?』

「!?」

突然後ろから大きな叫び声が聞こえて、一緒に叫んでしまった。後ろには特殊メイクをしたお化け役の人がいて、驚いたことに満足したのかまた何処かへ隠れに行った。

ほっと一息つくと、私は何故か身体が何かに包まれていることに気が付いた。

「大丈夫か?」

『え?……わぁぁぁ!!ごごごごめんなさい』


咄嗟に日吉から離れる。私は無意識に日吉に抱きついていたみたいだ。日吉は安心させるためか、私の肩に手を置いてくれていた。触れていたところが熱い。ていうか、体全体が熱い。

あぁ、もう……恥ずかしい。驚いたからって抱きついてしまうなんて。


私は、もう一度日吉に謝りお化け屋敷を出た。


その頃、跡部達は私を探してくれていたみたいだが、忍足ときのちゃんはどんな話をしていたのだろうか。




遊園地で


(ごめんなさい)
(別に謝らなくていい)

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