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鎌をかけよう

「ひなたちゃん、今日遊ばない?」

土曜の朝、インターホンが鳴り外へ出てみれば、お洒落な格好でニコニコと微笑んでいるきのちゃんが家の前で立っていた。

『え、えっと……うん。家の中で待ってて』


話を聞くとどうやら、今日は一日暇らしく一緒にどこか出掛けようということらしい。服装に悩んでいると、きのちゃんが可愛くコーデしてくれた。

「うん。これが良い」

『ありがとう。えっとじゃあ、出掛けよう。どこか行きたい所ある?』

「私、こっちに来た時から東京に行きたかったの!」




ーーーーというわけで、東京にやってきました。



「やっぱり元の世界とそんなに変わらないね」

『う、うん。だよね』

「東京と言えば青学に氷帝に、他にもいっぱい。はぁ〜」

自然に顔がにやけている彼女に、私も同じ行動をしていたなぁと思い出した。


「ひなたちゃんは跡部様見た!?」

『う、うん。前に氷帝と練習試合して……』

「どうだった!?」

『意外と優しい人……だったかな。想像してたより』

「へぇー。私も見るだけでいいからこの目で見てみたいなぁ」

目を輝かせる彼女に「跡部が好きなの?」と聞くと、少し悩んでから口を開いた。

「ううん。一番好きなのは幸村先輩」

そういえば、各校の部長が好きだと言ってたっけ。

「おい」

『あ、そういえば東京で何か用事でもあったの?』

「ううん。どんなところだろうって見たかっただけなんだ」

「おい」

『じゃあ色々見て回ろう』

「おい咲本」

『は、はい!?』

何処からか跡部の声が聞こえて、周りを見渡すと道路に止まっていた車の窓から顔を出した跡部が目に入った。

跡部に呼ばれ、高級そうな長い車に走る。「跡部様だ」とぼそりと呟いたきのちゃんの声が耳に入った。


「何処か行くのか?」

『えっと……とっ、特に用事は……な、ないです』

「なら乗れ」

でも今はきのちゃんも一緒だし……と思って下を向くと、跡部は察したのか二人とも乗って良いと言ってくれた。


「わぁ……すごい」

『し、失礼します』


「あ、咲本じゃん」

車に乗ると、岳人の声がしたので車の中を見渡すと氷帝のレギュラーが見事に揃っていた。

端っこに座ろうとしたら、日吉と宍戸の間に私、跡部と忍足の間にきのちゃんと座らされた。きのちゃんは驚いた様子で、皆に自己紹介をしていた。


「友達いたのか」

不意に日吉から失礼な言葉が出る。

『いっ、います!』

「ふん」

鼻で笑われた。チーちゃんとは今喧嘩中だけど……私友達いない子だと思われていたのか。


「さっきよ、跡部が急に車を止めろなんて言ったもんだから何かあったのかと思えば、咲本を見つけたんだな」

「普段は見れない反応でしたね」

宍戸と鳳が私を見つけた時の跡部の反応を話してくれた。その割には跡部や忍足はきのちゃんと話してばかりだが。チラリと見ると、あの三人はとても絵になることに気付いた。美男美女とはこの事だろう、と感心した。

「馬鹿なこと考えてるだろ」

『なっ!?考えてません。その……絵になるなって』

「興味ない」

『自分から言ってきたくせに……』

そう、ぼそりと言うと「毒舌になったな」と言われた。日吉には負けるよ。



『あ、あの……何処に行くんですか』


そう質問すると日吉から「未定だ」と返ってきた。


そして数十分後に着いた場所は、遊園地だった。土曜日ということもあり、遊園地には大勢の客でいっぱいだった。



「貸し切るか」

スマホを片手にそう言う跡部に、忍足や宍戸が止めに入る。何とか跡部を抑えたところで、皆で遊園地をまわる。


「そういえばひなたちゃん最近部活休んでるけど、大丈夫?」

『えっ?う、うん』

「何かあったん?」

不意にきのちゃんが話しかけてきて、忍足も話に入ってきたので三人並びながら歩く。他の皆は貸切にすると言って聞かない跡部を無理矢理引っ張っていって、はしゃいでいる。

「ひなたちゃん、学校で色々あって部活に来れないみたいで」

「……それほんまなん?」

首を縦に振ると「立海の連中は何してんねん」と舌打ちした忍足。

『あ、違うんです。わ、私が、何もしないでって……』


黙って眉をひそめる忍足を見て、前のような冷たい目が自分に向けられるのではないかと忍足から顔を逸らす。

「あっ、呼ばれてるみたい」

きのちゃんが手を振って待っている皆の方へと走る。私達も後に続こうとしたが、気になることが一つあった。

『テニス部に行けない理由、教えたっけ……』

確かに汚された靴箱を綺麗にしてくれた事は一度あった。でも虐めを受けているからといって、部活を休む理由にはならない。もしかして部活に行けない理由を知っているのだろうか。

「学校で色々って、虐められてるって事やんな?」

『その……はい』

「あとあの嬢ちゃんとはいつから仲良うなったん」

『え、えっと、二週間程前にきのちゃんが転校してきて、それですぐに仲良くなって……。い、虐めを受けているのは、最近……です』

「ふーん。……あ、良いこと思いついたで」

『?』




鎌をかけよう


(任せときぃ)
(え?えぇ……?)


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