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分かってくれる

負けない、なんて心の中で意気込んだものの、やっぱりショックは大きい。こんな分かりやすいいじめを受けたのなんて生まれて初めてだし、部室の鍵を無くしてジャージが着れない今、テニス部にも顔を出せない。

暫く体調不良と言って部活を休むしかない。そしてその間に今回の件について自分で調べよう。行動あるのみだ。


放課後、ブン太に部活を休むとメールを入れ、そして自分は誰に虐められているのかを考えた。下駄箱はきのちゃんが掃除をしてくれていたということしか分かっていない。下駄箱をあんな風にするには私より早く来てる人しかできない。しかし私より早くに登校している生徒なんてたくさんいた。それに悪口を書かれていた紙を見る限りおそらく複数の人でやったのだろう。

他にレギュラー達の写真とデータの書かれたノート。これは部室の鍵を持っていないと不可能だ。私が持っていた鍵を持っている人が犯人だろう。それに私の字体そっくりに書かれていたノート。これは私の事をよく知る人物でないと出来ない。


今のところ殆ど何も分かってなく、溜息が出る。鞄の中からジャージを取り出し、切られたあとを見ると恐らくカッターで切られたのだろうと予測がつく。どうしてこうなってしまったのだろうとジャージを抱き締めると、いつもと違う匂いが鼻をかすめた。

『私が使ってる洗剤の匂いじゃない。香水の匂い?』

この匂いどこかで……。でもどこで匂ったのか分からない。溜息を吐き、ふと校内から外を眺めると、水道の水で顔を洗う柳の姿が目に入った。ユニフォーム姿なのを見たところ部活の休憩時間だろうか。そういえば暫く柳と会話していない。レギュラー写真やノートが見つかった時も味方であるとは言えなかったし、やはり怒っているのだろうか。

すると、きのちゃんが柳の元へタオルを持って走ってきた。柳はタオルを受け取り、そのタオルで顔を拭き終わるとチラリと私の方を見た気がした。そしてきのちゃんの頭に手を伸ばし、私にやっていたようにきのちゃんの頭を撫でた。

ズキリと心が痛んだ。

『柳の……バカ』



********************


次の日、私の靴箱はまた前と同じようになっていた。今回は自分で綺麗に掃除をした。手を洗い教室に入ると、チーちゃんは他の子と話している。私の元へはやって来てくれない。私はこのままずっと一人なのだろうかと考え込んでいると、あっという間に昼になり溜息を吐いた。


不意にスマホが震え赤也からメールがきた。「一緒に食べねぇ?屋上で待ってる」と言う内容で戸惑ったが教室で一人で食べるのも寂しいし、お弁当を持って屋上へ向かった。



屋上のドアを開けると赤也が手招きをしていたので、赤也の元へ小走りした。

『あ、あの……』

「良い天気だし外で食べたい気分でさ」

『え、はい』

屋上の端に腰を下ろしお弁当を広げる。何故お昼を誘ってくれたのかは分からないが、何か気をつかってくれたのだろうか。

「卵焼きもーらい!」

『あっ!』

「うっめー。あ、俺のも何かやるよ」

『じゃあ、唐揚げ……』

唐揚げに指を指すと赤也は唐揚げを箸でつまみ、私の口元へ持ってきた。

「口、開けろって」

『えっ、あー』

大人しく口を開けると唐揚げが入ってきた。美味しいけど恥ずかしい。赤也は下を向いてフッと笑い、そして此方に顔を向けた。

「前に俺もひなたに同じことしてもらったよな」

『うー……はい』


それからは授業中の話や先生の話など、赤也は楽しい話をたくさんしてくれた。その中にテニス部の話は一つもなかった。






放課後、私にはやるべきことが一つあった。部室のロッカーを調べなければならない。レギュラーの写真やデータの書かれたノートについての情報を手に入れるために。

しかし部活を休むと連絡を入れ、部室の鍵をなくした私には部室に入るのに一苦労だ。

皆が練習に励んでいるのを確認し、部室の窓から誰もいないかを見てそっと部室に入った。


私のロッカーの中に何か手がかりになるものはないかと、ロッカーに手をかけた瞬間だった。




ーーーーガチャ。




『っ!?』


「……咲本?今日は休みだって」

『ぁ……あの』


部室に入ってきたのはジャッカルだった。

何て言い訳すれば良いのだろうか。今の行動は疑われても仕方がない。休むと言った人が写真やデータが見つかった部室のロッカーに手をかけているんだから。心臓が口から飛び出しそうだ。


「なんでロッカーに……」

ジャッカルは一歩一歩、私の方へ近づいてくる。


「まさかこの前の」

ーーちがう、ちがうの。でも、何も言葉が発せない。否定したいのに……また誤解が。



「ジャッカル!」

そう言って部室に入って来たのはブン太だった。ブン太はジャッカルの表情を見て、頭の上にハテナを飛ばし、ジャッカルの視線をたどり私を見た。

「なっ!?ひなた。……何してんだよ!」

目を見開いたかと思えば、眉を寄せながらブン太は私の腕を引っ張り、部室の外の裏側に連れて行かれる。どうしていいのか分からずされるがままだった。ジャッカルも状況がわからないまま付いてきていた。

「……っの馬鹿!」

『っ!』

「部室で何してんだよ。また誤解されるだろぃ」

『だ、だって……ロッカー、調べ……たくて』

「誤解……?」

「こいつ今誰かにいじめられてんだよ」

「ま、まじか」

ジャッカルとブン太が真剣な表情で話し合っている。ブン太にはこの間、ジャージや鞄がボロボロになって捨てられていたところを見られている。


「皆にばれたくないなら、もっと方法があんだろぃ。今も俺が来てなかったらどうすんだよ」

『はい……ごめ、んなさい』

「この前の写真も誤解なんだろぃ?何か手がかりがないか、俺とジャッカルで調べてやるぜぃ」

『で、でも』

「そういうことなら協力するぜ」

「だから部室のロッカーは任せとけって。ひなたは他にする事があるんだろぃ」

任せろと微笑む二人に、微笑み返す。分かってくれていてホッと安心した。

『ありがとうございます!』


ぺこりと頭を下げると、私はその場を去った。




分かってくれる


(ひなたのために一肌脱いでやるか)
(まさかいじめをうけてたなんて、な)



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