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※ワノ国編前の時系列

間違えてイゾウに声を掛ける



 島に着いて今日こそはゾロ用にリードを買うぞと意気込んだ矢先、毎度のことながらゾロとはぐれ頭を抱えた。もう別の人と行動した方が良いのかもしれない。

 街は賑わっていて前に進むのが大変な状態だった。ゾロが着ていた緑の着物を見つけ、人混みを掻き分け着物に手を伸ばす。

「もう、ゾロ。勝手にどこか行っちゃダメって……」

 ゾロだと思って着物を掴んだが、振り返ったのは別の人物だった。バッと離れて頭を下げる。

「ごめんなさい! 人違いです」
「ああ、大丈夫だ」

 落ち着いていて優しい声だ。顔を上げてその人の顔を確認すると艶やかな黒髪に赤い唇。綺麗な人だ。日本人を連想させるような見た目でどこか懐かしさを覚えた。思わず美人だと口にすると、微笑みながらお礼を言われた。そういえばこの人、手配書で見たことあるような気がする。

「今日は何か催しでもあるのか? 人が多いな」
「さ、さあ。この島はさっき着いたばかりで詳しくなくて」
「そうなのか。すまない、ここの住人かと思っていた」
「いえ。貴方も旅の途中ですか?」
「そんなところだ」

 大勢の人に押されながら半ば強引に足を進める。困っていると道の端へ腕を引っ張られた。人の多い所から解放されてやっと息を吸えた感じがする。

「大丈夫か?」
「ありがとうございます。助かりました」
「困ったな、人がこんなに多いとあっちに行けなさそうだ」

 彼は地図を広げながらそう言うので、地図を見せてもらうと私が通ってきた道にあるお店に用があるみたいだった。

「ここなら来た道なので分かります。人が少ない道を通ってきたのでよければ案内します」

 私も迷子になった仲間を探さないといけない事を伝えると、そうかと笑っていた。彼はイゾウさんと言うらしい。目的地まで何を話そうかと思って彼の顔を見上げる。身長高いな。それに肌がとても綺麗だ。

「あの、お肌のケアはどんな……あとお化粧も何を使われているんですか?」
「ははっ、おれは男だぞ。そんな事聞いても面白くねえと思うが」
「いえ! とってもお肌が綺麗で憧れます」

 「十分綺麗な肌じゃないか」と指の背で頬を撫でられる。突然の事で驚いたのと色気が凄すぎて思わず変な声を出してしまった。

 若いから良いなと付け足されて首を傾げる。私より少し上だろうと思っていたけど、違うのかな。もしかして私、若く見られてる?

「イゾウさんって、おいくつですか?」
「45だ」
「えっ? えええええええ!?」
「驚きすぎじゃないか?」
「だって、えっ? わかっ、若くないですか」
「そうか?」

 私も年齢を聞かれたので答えると、もっと下かと思っていたと言われた。衝撃すぎて何も話せないでいると、目的の場所に着いた。

「ここのお店です」
「ありがとう。場所はわかった事だし、おれも迷子を見つけるのを手伝おう」
「ありがとうございま……あー!」

 少し離れたところに緑頭の後ろ姿を見つけた。街の角を曲がっていきそうなので急いで追いかける。

「イゾウさん、見つかりました! ありがとうございます! それじゃあ、またどこかで!」
「ああ。またな」

 後ろを向きながら走り、手を振ると彼も振り返してくれた。優しい人だった。船に戻ったら手配書確認しようっと。





マルコに運んでもらう



 街を歩いていると突然女性が倒れるのが見えた。大丈夫か尋ねながら駆け寄るが女性は倒れたまま動かない。周りにいる人々は医者はいないかと叫んでいた。

 うつ伏せで倒れる女性の肩を叩きながら呼びかけても返事がなく、顔色が悪い。

 一体どうしたら……どうしてこの人は倒れたの? 何をしたら。この場合は身体を起こして仰向けにしていいの? ……どうしよう、私にもっと医療の知識があれば。人一人救えないなんて情けない。
 視界がぼやけてきた時、肩に手が置かれた。

「まず身体を仰向けにするぞ」
「え、あっ、はい!」

 突然現れたのは変わった髪型をした金髪の男性。倒れた人の状態を確認しながら、彼は女性を仰向けの状態にした。そして肩を強く叩き、大きな声で呼び掛ける。すると女性は薄らと目を開けた。

 そして駆けつけた救急隊員によって彼女は病院へと連れて行かれた。良かった、女性が意識を取り戻して。安堵の息を吐くと斜め上から声が掛かった。

「ただの貧血だ。仰向けにして強く身体を叩いて意識を戻させるんだよい」
「貧血……。ありがとうございます。分かりました」
「……お前は、麦わらの一味の」
「えっ!? も、もしかして海軍ですか!? それとも賞金稼ぎの人!?」
「ブハッ、安心しろい。おれも海賊だ」

 怖い人かと思ったら急に笑い出した。どこかで見たことのある顔だと思ったら、海賊だったんだ。

「それに麦わらとは知り合いなんだよい」

 あ、この人優しい人だ。そう思えるような顔を彼はしていた。

「あの、医者の方なんですか?」
「昔、船医だったんだ」

 昔ということは今は違うのかな。違和感のある言い方だったけど、あまり聞いてはいけない気がしてそれ以上は聞かなかった。

 ふと彼の胸に視線を落とすと、胸元が開かれたシャツを着ていて、刺青の入った胸筋が丸見えだ。船医って言ってたけど、この人もきっと強いのだろう。全身の筋肉が大きいし、大胸筋なんてふっくらしていて素晴らしい。

 いつの間にか垂れていた涎を拭きとって顔を上げると不思議そうな顔をした彼と目が合った。そして私から視線を外して遠くを見たかと思えば、ニヤリと笑った。

「さーて、逃げるぞ」
「えっ、鳥!? どうして逃げるんですか!?」
「向こうの方で海軍に追われてる麦わらが見えるよい」
「ルフィが!? ……って、いやァァァァ!」

 彼は燃える鳥に姿を変え、私を足で掴んで空を飛ぶ。ここから落とされたら死んでしまう。歩いている人が米粒程の大きさに見えるほど上を飛んでいて意識が遠のいた。それからの事は覚えてない。

「お前らの船はあれだな……って気絶したのか。変な奴だよい」