振り回されるゾロ
島に着くと各々目的の場所へ歩き出す。私は刀が見たいと言うゾロの付き添いに任命された。行くぞと言って歩き出す彼に指差すとゾロは何だと振り返った。
「今日はぜーったい! 迷子にならないでね!」
「勝手に逸れるのは渚だろ」
「自覚なしかァ、困ったな。手繋いでてあげようか?」
「ガキじゃねえんだ。必要ねえ」
それから数十分後、私達は逸れた。私が振り向いた瞬間、ゾロはいなかった。だから言ったのに!
そして運悪く前から歩いてくるのは海軍。私って賞金首になったんだよね。って事は海軍に見つかったら捕まるって事だよね!?
早くゾロを探さなくちゃ……!
ゾロを探しに走って走って走りまくってようやく見つけた緑頭。彼も多分私を探しているのか、辺りを見回している。その背中に大きな声で呼びかけた。
「ゾローーーッ!」
「渚! どこ行ってたんだよ」
「それはっ、こっちの、セリフ……!」
体力の限界で息は切れるし涙は出てくるしでもうボロボロだ。両手を膝につき息を整える。
「……大丈夫か?」
「ずっと、探してたんだから……、いなくならないで」
肩で息をしながら睨みつけると、ゾロは「わりィ」と言って顔を逸らした。何故か耳が赤い。
ゾロの前に手を差し出すと、この手は何だと彼は首を傾げた。
「手、繋いでくれるよね」
「……」
「私が迷子にならないために」
「仕方ねえな」
いつもいつも勝手にどこかに行くのは彼の方なのに、呆れる様子を見せながら私の手を取ろうとするので、差し出していた手を引っ込めて彼の腕に絡ませた。
「なっ!? おい!」
「私を不安にさせた罰」
「こりゃ罰っつーより……」
「これで逸れないね」
逆の手で自身の顔を覆うように顔を隠し上を向くゾロ。罰が効いただろうか。この前腕筋に免じて今回の事は許してあげよう。
武器屋を見つけて腕を引っ張りながら歩く。ゾロは何故か疲れた様子だった。小さな武器屋の中で逸れることはないと思って手を離す。刀を見に行ったゾロを横目に私は外の様子を見ていると、遠くから歩いてくるのは先程目にした海軍だった。
「どうしよう! 海軍が!」
咄嗟にゾロの背中にしがみついた。しかし背中だと思っていたら彼はこちらを向いていて、目の前に大胸筋があった。
「んなに騒ぐこたァねえだろ」
私を隠すようにゾロは私の腰に手を回した。ふわふわの大胸筋がより近くに。どうしよう、鼻血が出そう。自然と開いた口から涎を垂らしながら、あることに気付いた。
「あれ? ゾロ。大胸筋、前より成長したよね?」
「知るか。っておい、揉んでんじゃねえ」
両手を彼の大胸筋の上に置いてペタペタと触ると拳骨が落ちてきた。こんなに良い筋肉を目の前にして触らないなんて無理だ。
「ハァ、なんでお前なんだ」
「何が?」
「……何でもねえ」
急に訳のわからないことを言うゾロ。なんだか馬鹿にされているような気もするけど、気にせず私は再び彼の大胸筋に手を伸ばしたのであった。