×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






スモーカーさんと絡む





「二人とも逃げろ! ここはおれが何とかする!」
「で、でも……!」
「大丈夫だ。おれも隙を見て逃げる!」
「渚、おれの背中に乗れ」

 ウソップとチョッパーと島で必要な物を買いまわっていたら、海賊狩りの集団に襲われてしまった。ウソップが相手をし、私は脚力強化したチョッパーの背中に乗ってその場から離れた。

 しかし海賊狩りの中に飛行能力をもつ能力者がいたようで、足止めを食らった。

「ごめん、渚。安全な場所に逃げてくれ。絶対あいつをお前の元には行かせねえから」
「分かった。無事でいてね」
「うん」

 どうか二人とも怪我をしませんように。
 ポケットに入れている子電伝虫を取り出して、ナミに連絡を入れる。彼女は近くにいたサンジとブルックに応戦に向かわせると言って電伝虫を切った。

 人の多い安全な場所を目指して走る。しかし突然、地面から出てきた手に足首を掴まれて体勢を崩した。他にも能力者がいたんだ。両足を掴まれて体を地面にたたきつけられる。地面から出てきた男はにやりと口角を上げた。

「もう逃さねえぞ」
「ひっ、」
「オイ」

 怒りの混じった低い声が聞こえて顔を上げると、私の前に立つのはーー忘れもしない、あの素敵な筋肉。私の理想が詰まったあの身体! 名前は確か、スモーカーさんだったっけ。

「お前、海賊か?」
「何言ってるんすか。おれは海賊狩りで海賊はこっちの女。1000万ベリーの賞金首っすよ」

 彼は私の顔をジッと見た後、手配書の私の顔を思い出したらしい。多分以前私が道を尋ねたことは記憶にないだろう。

「お前は麦わらの……」
「たっ、助けてください!」
「……おれもテメェを捕まえる側の人間だが」
「ハッ!」

 スモーカーさんが「こいつはおれが預かる」と言えば、海賊狩りは不服そうな顔をしていたが大人しく身を引いた。彼に腕を引っ張られて地面に足をつく。怖くて体が震えている。

「手錠を付けるぞ」
「えっ!?」

 涙を浮かべながら見上げれば手錠を持った手の動きが止まり、手錠をしまった。そして持っていた棒を私の腕に押し当てた。意味が分からず首を傾げる。

「能力者じゃねえみてェだな。いいか、妙な真似をしたらすぐ拘束するからな」

 ブンブンと勢いよく首を縦に振るとついて来いと言われる。多分このまま海軍本部に連れていかれるんだろうな。逃げたくても逃げれないし、困った。皆が助けに来てくれることを信じて少しでも到着を遅らせなければ。

 それにしてもやっぱり筋肉がすごい。正面でじっくり見たい。さわってみたい。でもおかしな行動をしたら手錠をかけられてしまうし……見るだけなら。横から覗き込むように彼の大胸筋と腹筋を見る。隊服が揺れてちらりと見える腹斜筋も素晴らしい。思わず拍手してしまう。

「何してんだ。それとその口から出てるものを何とかしてくれ」
「へ、あっ、ごめんなさい。イイ身体過ぎて……」
「……」

 彼の眉間のしわが深くなった。大きな手が私の頭を掴み、無理やり正面を向かされる。

「これじゃ筋肉が見えな……」
「見なくていい……。それより麦わらはどこにいる。一緒じゃねえのか」
「一緒に行動してなかったので、わからないです。すみません」
「こっちから言うのもなんだが、全く抵抗しないのは何故だ。仮にもお前には1000万ベリーの手配書が出てるんだぞ」
「私の戦闘力はゼロなので、逃げるのも無理かと」
「潔いな」

 確かにこのままじゃ海軍に捕まって終わりだ。私はどうなるのだろう。

「麦わらの仲間じゃねえのか? どう見ても一般人にしか見えねェな。もし海軍の手違いなら手配書の取下げを申請してみるが」
「私、戦えないし1000万ベリーの価値はないかと思います。でも……彼らの仲間ではあります」

 以前までは言えなかった言葉を自信をもってそう言えた。

「おれの仲間を返せー!」
「麦わら!?」
「ルフィ!!」

 大きな声とともに伸びてきた腕がお腹に巻き付く。見つけてくれたことにひどく安堵した。大きな家の屋根の上に立つルフィに抱えられているが、スモーカーさんもすぐに追いつく。体を煙にして……。彼も能力者だったのか。素晴らしい筋肉が煙で見えなくなってちょっと残念。

「渚は返してもらうぞ、ケムリン!」
「テメェらまとめて拘束してやる」

 彼らが戦闘態勢に入ったとき、近くで爆発音がした。その一瞬の隙に私達はスモーカーさんから逃げ切った。

「来てくれてありがと、ルフィ」
「おう……ってお前怪我してんじゃねえか! ケムリンにやられたのか!?」

 ルフィが私の額と膝を見てぎょっとした。そういえば転んだんだった。怪我を意識したら痛くなってきた。

「ううん、賞金稼ぎの人に」
「あとでチョッパーにみてもらえよー」
「わかった」

 そして私達はサニー号に戻った。ウソップもチョッパーも皆無事で安心した矢先、海軍船から砲弾が飛んできて慌てて出港した。
 ああ、やっぱり彼は素晴らしい筋肉だったな。


prev-back-next