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元の世界に戻る方法が見つかる話



 突然の出来事だった。食糧調達を目的に下りたとある島。森の中心には古びた石像があり、異世界に繋がる方法が記されていた。ロビンが石像の内容を読み上げた後、賑やかだった麦わらの一味はしんと静まり返っていた。そんな中、沈黙を破ったのはサンジだった。

「それは本当なのかい、ロビンちゃん」
「ええ。この石像にはそう書いてあるわ。満月の夜、異世界に繋がると」

 私を含め、再び皆が俯く。すると私の正面にいたルフィが大きく息を吸った。

「何言ってんだ! 渚の帰る場所はここだ!」
「ルフィ……」

 何と返事をしたら良いのか分からなかった。ウソップとチョッパーは気まずそうに口を開く。

「今まで考えもなかったな」
「渚、帰りたいとか全然言わねえから」
「帰る方法が分からなかったし、それにここでの生活は毎日楽しかったから」
「じゃあ良いじゃねえか、このままで」
「でもルフィ。渚にも故郷があるのよ」

 ナミに言われ、ルフィは不服そうな顔をして腕を組む。真剣な顔をしたナミは私の両手を包むように掴んで言った。

「答えを出すのは渚よ。一晩、考えてみて」
「……うん」


 元の世界に帰る方法があるなんて考えもしなかった。もう私はずっとこの世界で生きていくんだって。だから帰るか帰らないかの突然の選択に戸惑ってしまう。

 麦わらの一味は皆何か役割をもっている。それに比べて私は何か得意なことがあるわけでもなく、戦闘員でもないし足手纏いだ。今後の彼らのためを思うなら、私は元の世界に帰った方がいいのかもしれない。


 その日の夜、ナミとロビンはいつも寝る時間に部屋にいなかった。静かな部屋に自分の溜息の声が響く。考えても考えても何が正しい答えなのか分からない。

 キッチンで水でも飲もうかと部屋を出たら、ダイニングの方から複数人の話し声が聞こえて足を止める。

「渚のこと、どうしてあげるべきかしら」
「ルフィは何が何でも止めるだろうぜ」
「もし彼女が帰るという選択をとるなら、ルフィの説得は大変そうね」
「渚……帰っちゃうのかな。寂しいな」
「泣かないで、チョッパー」

 チョッパーが泣く声が聞こえ、目頭が熱くなる。中にいるのはナミとロビン、チョッパーにウソップだろうか。

「しっかし、渚は何て言うんだろうなー。ゾロはどう思う?」
「おれ達が決める事じゃねえ。本人の答え次第だ」
「テメェは相変わらずの冷たさだなマリモ」
「ごちゃごちゃ言ったところで何にもならねェだろうが」
「じゃあ渚ちゃんが帰るって言ったら、テメェは何も言わず見送るだけなんだな?」
「……」

 ゾロとサンジもいたんだ。こんな夜遅くに私の事を皆で話し合ってくれて、申し訳ないな。……どうするのが正解なんだろう。

「アンタ達、渚がトラ男の所にいた時の事思い出してみなさいよ。相当酷かったわよ」
「「……」」
「サンジ君はあの子の分のデザートを間違えて作った挙句、渚がキッチンにくるのをずっと待ってたし、ゾロなんて筋トレする前に渚を探してたでしょ」
「そう言うナミも渚はどこに行ったのよって何回か探してたよな?」
「ウソップ? 余計な事は言わなくていいの!」

 私がいなかった時、寂しがってくれてたってこと? 以前ジンベエから、皆はずっと私のことを探してくれていたって聞いていた。私を大切にしてくれている皆のことを想うと涙が溢れ出てきた。

「これで涙を拭きな、嬢ちゃん」
「フランキー……」

 ハンカチを持って隣に現れたのはフランキー。頬を伝っていた涙を拭っていると、彼が口を開く。

「ゾロが言ってるように決めるのはオメェだ。おれ達の気持ちを優先しちゃァならねえ。こんなチャンス、二度と来ねえかもしれねェからな」
「……うん、ちゃんと考える」
「おう」


********************


 次の日の夜、満月の日。私達は再び石像の前に訪れた。月の光が石像を照らしていて、何とも神秘的だ。

「決まったか?」

 ルフィが静かに私に聞いた。コクリと首を縦に振る。みんな、私の言葉を待っているようだった。

「私がここに残ると皆の足手纏いになる。戦えないし何か出来ることがあるわけでもない。だから、元の世界に帰るのが良いんだろうなって思ったの」

 きっと優しい彼らのことだから、そんな事ないって言ってくれるだろう。でも自分の思っていることは素直に伝えたい。
 ルフィが私の名を呼びながら近づいてきて、私の両肩を掴んだ。彼が何か話す前に言葉を続ける。


「だけど私、ここにいたくて。皆のそばを離れたくなくて。我儘なのは分かってるんだけど」
「……」
「ここに居ても良いですか?」
「当たり前だ!」

 両肩に置かれた手に力が込められる。私を囲むように皆が集まり、声を掛けられる。

「変な言い回しすんな」
「びっくりさせないでよ!」
「そうだぞ、帰るかと思ったじゃねえかコノヤロー!」
「ふふ、ごめんね」
「残るって言ってくれて良かったよ、プリンセス」

 石像に背を向け、私達はサニー号へと向かった。


 最後尾を歩いていたロビンは近くにいるウソップにしか聞こえない声で呟いた。

「異世界に繋がるって記していたけど、渚のいた世界に繋がるかどうかは分からないものね」
「怖ェこと言うなよロビン」