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能力者に操られて麦わらの一味に迷惑をかけた日から2日後、チョッパーから動いて良いと許可が下りた。昨日はずっとベッドで寝ていて、チョッパーが診てくれていた。皆はまだこの島で楽しんでいるようだった。

「ありがと、チョッパー。もうどこも痛くないや」
「おれは船医だからな。あんまり無理するなよ」
「うん。あ、そうだ良かったら今日一緒に……」
「チョッパー、コイツ借りるぞ」
「ゾロ?」
「ゾロも無理するんじゃねェぞ!」

ついてこいと言わんばかりに、ゾロは船を降りた。一緒に島を回ってくれるんだろうか。彼の腕に巻かれた包帯を手でなぞりながらお礼を言った。

「あの時逃げないでいてくれて、ありがと」
「当たり前だ」

こういう事スラっと言えるのが男前だよなァ。街でお酒を買って、2日前と同じように並んで歩く。今日も街の人達は盛り上がっている。

「これナミがお前に渡せって」

折られた紙を渡された。広げて何が書かれているか確認すると、今晩はここに泊まるから来てねという内容と宿の地図だった。ナミとロビンと3人でお泊まりらしい。嬉しい。
紙をポケットに入れて、隣にいるであろうゾロに声をかけようとしたら、いなかった。

「ゾロー!?」

何でこんなにすぐにいなくなるの。てっきり一緒に行動してくれると思っていたのに違ったんだろうか。もしかして実は私の事嫌い?

また変な人に声掛けられたらどうしよう。操られたらどうしよう。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。早くゾロを探さなければ、と周りを確認しながら歩いていると人にぶつかった。

「ごめんなさい!」
「お前は……」
「えっ、あ、トラ男……くん」

知ってる人で安心する反面、彼に嫌われていることを思い出し不安になった。

「ぶつかってごめんなさい。それじゃ」
「オイ、何故1人で行動している」
「ゾロと、逸れてしまって」

チッ、と舌打ちされた。やっぱり怖いこの人。早くこの場から離れてゾロを探しに行きたいのに、トラ男に手首を掴まれてしまった。

「能力者に操られたんだろう。1人でいるのは危険だと分からねェのか」
「分かってます。分かってるからゾロを探しに行きたいの」
「……おれも一緒に探してやる」
「えっ、大丈夫です。トラ男くん怖いので」
「……」

関わらないよう今すぐにでも離れたいのに、怒らせてしまっている気がしてならない。でも一緒に探してくれるって言ってくれたし、何を考えているのかちゃんと聞いておいた方が良いかもしれない。

「一応言っておくんだけど、トラ男くんは私の事嫌ってるから迷惑かけないようにしようと思ってるの」
「誰が誰のこと嫌ってるって?」
「だからトラ男くんが私のことを」
「別に嫌ってねェ」
「え、そうなの? 良かった」

微笑むと目を逸らされたが、彼の目は一瞬揺らいだように見えた。人見知りなのだろうか。もしそれだけなのであれば、仲良くなれるかもしれないと肩の力を抜いた。

「私が戦えないから嫌ってるのかと思ってた。すぐ目逸らすし」
「逸らしてねェだろ」
「逸らしてるよ。じゃあこっち見て」
「……」

顔を覗き込むようにして目を合わせると、やっぱり彼の目は揺らいでいて、すぐに逸らされた。

「ほら逸らした」
「……お前を見てるとおかしくなりそうだ」
「え、何で? どういう意味!?」
「ゾロ屋を探すんだろ。行くぞ」
「ゾロ屋って何!?」

変なあだ名をつける人だな。
嫌われていないらしいけど、馬鹿にされていることは確かだ。彼は身長が高いので、勿論歩幅も大きくて横に並んで歩くのは難しい。斜め後ろについて歩く。ゾロやサンジと歩く時はいつも隣を歩いていたけど、知らない間に歩幅を合わせてくれていたんだなと嬉しくなった。

「そういえば、トラ男くんの仲間は無事だった?」
「あァ。軽く負傷しただけで今日は島で楽しんでやがる」
「そうなんだ、良かった」

「あー! キャプテンが女連れてるー」

白いツナギを着た人達がこちらを見て騒いでいる。もしかしてトラ男の仲間だろうか。キャプテンって呼んでたし。キャプテンなの? と問いかけると頷いていた。

「あのツナギ可愛い。キャプテンはツナギ着ないの?」
「お前ら、飯にするぞ」
「無視ですか」

ツナギを着た人達から元気の良い声が返ってきて、可愛い集団だなと思った。キャプテンを囲むように皆が集まる。
そして近くにあった薄暗いバーのような雰囲気のお食事処に入った。

「ゾロを探してくれるんじゃなかったの?」
「飯を食った後にな。お前も食うだろ」
「うん、ご馳走になります」
「奢らせるのか」
「ありがと、キャプテン」

食うだろっていうから奢ってくれるのかと思ったけど違ったのかな。でもきっと奢ってくれるだろう。キャプテンだし。そうと決まればハートの海賊団の人達にご挨拶しておかなければならない。

「渚といいます。お世話になります」
「キャプテンの女?」
「いやちげェ」
「おー、白熊だー……」

1番に口を開いたのは、大きな白熊だった。すごい、喋ってる。

「お前のところにもトニー屋がいるだろう」

トニー屋って誰だ、と暫く考えてチョッパーの事かと1人で納得した。目の前の喋る熊はフランキーと同じくらい大きい。でも可愛い顔をしていて毛並みも触ったら気持ちよさそうだ。

「おれペンギン。よろしく、渚ちゃん」
「うん。よろしくね」
「あっ抜け駆けはズリィぞ。おれシャチ」

次々に自己紹介をしてくれるハートの海賊団の人達。トラ男とは違い、皆気さくな人だ。良かった。椅子に腰かけて、適当に注文する皆を見ていたらお酒は飲めるのかと聞かれたので、飲めると答えたら沢山お酒を注文してくれた。

「渚ちゃんってこの島の人?」
「ううん、ルフィ達のところでお世話になってるの」

ペンギンくんとシャチくんの間に呼ばれて2人と話をする。2人とも私と同じくらいの年齢だろうか。話しやすい。

「麦わらの? へー、そうなんだ。何でキャプテンと一緒に?」
「1人で出歩くのは危ないからって。心配性なのかな」
「優しいよなーキャプテン」
「うんうん」
「あと人見知りだったりする?」
「え? いや全然。まあ愛想良いとは言えないけど」
「あれ、そうなんだ。じゃあ女嫌いとか?」

2人はうーんと首を傾げた。違うらしい。トラ男の事はまあ良いか、と話題を変える。

「そのツナギ皆お揃いで可愛いね。仲間って感じで良いよね」
「動きやすくて皆気に入ってんだ」
「筋肉が見えないのが残念だけど」
「「え?」」

驚く2人を見て、あれ何かまずいこと言ったっけと自分の発言を思い出し頭を抱えた。すると近くの席にいたトラ男が2人に声をかける。

「そいつ変態だから離れた方が良いぞ」
「え」
「キャプテン」
「離れた方が良いぞ。襲われる」

何で2回も言うの。それに襲われるって何だ。トラ男はやっぱり意地悪な人だ。彼の圧に負けて2人は別の席に移動した。そして私の隣の席にトラ男が腰掛けた。

「誰が変態ですか」
「お前しかいねェだろ」
「前開けて胸筋と腹筋を曝け出してるトラ男くんの方が変態だと思いますけど」
「おれは普通だ」
「トラ男くんって意地悪だよね。ここに来て出会ったことないタイプだ」

彼の眉がピクリと動いた。意地悪って言ったこと怒ったのだろうか。

「出身はどこだ」
「遠い世界から」
「二度も言わせるな、どこだ」
「……」

日本と答えると聞いたことねェふざけてんのかと返される。大真面目に答えてるんだけど。まあ確かに信じる方が凄いと思う。私だって元の世界にいてトリップしてきましたって言われても信じられないだろうし。

「すみませーん、ハイボール下さい!」
「おい、おれの質問に答えろ」
「だってトラ男くん信じてくれないんだもん。ルフィ達は信じてくれたのにな」

店の人にハイボールを渡されてグイッと飲む。隣の彼に睨まれて怖いけど、アルコールを飲んでいるせいか気分は悪くない。


突然、食器の割れる音が聞こえて女性が倒れた。店主の男性が女性に駆け寄る。何か出来ることはないかと思って彼等に近付いたら、トラ男も歩いてきた。

「診せろ」
「アンタは?」
「おれは医者だ」

本当に? という疑いも彼の行動を見てすぐにかき消された。女性を診て彼は溜息を吐いた後ギックリ腰だと言った。

「お前はゆっくり休んでくれ」
「私が休んだら誰が働くんだ。あんた1人ではこの店回らないよ」
「困ったな。お前のギックリ腰が治るまで誰か雇いたいところだが……」

店主と奥さんであろう女性の会話を聞いて、トラ男に話しかける。

「トラ男くん、ギックリ腰って1週間くらいで治るよね?」
「安静にしてればな」
「店主さん、奥様が動けるまで私のこと雇ってもらえませんか?」
「本当か!? じゃあよろしく頼む」

バイト代は弾むよ、という店主の言葉にガッツポーズをした。それからハートの海賊団に見守られながら、夜までお店で働いていた。店の片付けをして一息つくと、店主が厨房から出てきた。

「これ今日のバイト代だ。要領良くて助かったよ。また明日もよろしく」
「ありがとうございます。はい、明日また来ます。奥様にもよろしくお伝え下さい」

店を出るとトラ男が待っていてくれたのか、壁にもたれ掛かって立っていた。外はいつの間にか真っ暗で、歩く人はいなかった。

「待っててくれたの?」
「何故そうなる。船まで送る」
「待っててくれたんじゃん。でも今日は宿をとってるの。ちょっと歩いた所だから大丈夫だよ。ありがと」
「……宿まで送る。どこだ」

やっぱり彼は心配性なのかもしれない。あっち、と指差すとその方向へと彼は歩き出した。

「昼間の話だが」
「うん」
「悪かった」
「いいよ、別に信じなくても。私も信じられないし」

彼は少し黙った後、私の元の世界の話を色々と聞いてきた。多分彼は頭が良いのだと思う。知らないことを知りたいタイプ。少しロビンと似ているな、と思った。

もうすぐ宿に着きそうな時に緑頭が正面から歩いてきた。

「どこだここは……」
「ゾロ!」
「あ? 渚にトラ男。何してんだここで」
「それはこっちのセリフだ。まさか迷っていたのか」
「迷って……ねェ」
「ありがと、トラ男くん。じゃあね」

トラ男にお礼を言ってゾロの方へと駆け寄る。トラ男は何か言いたげだったけど、そのまま去って行った。

「トラ男とずっと一緒にいたのか?」
「うん、トラ男くんの仲間の人達もだけど。ゾロがどっか行っちゃったから」
「……気をつける」
「ふふっ、素直だね」

ナミとロビンと約束していた宿に着いた。もう2人はいるだろうか。

「ゾロって今日泊まる宿、決まってるの?」
「いや、決めてねェ」
「ここにする?」
「おー」

宿の中に入り、受付にいたお爺さんに話しかける。

「泊めていただきたいのですが、一部屋空いてますか?」
「ああ、ちょうど一部屋だけ空いてるよ」
「良かった。ゾロ、泊まれるよ」
「あ? あァ。……渚はどうすんだよ」
「私もここに泊まるの。お爺さん、ベッドは大きめだと有難いのですが」
「キングサイズだよ。君たち2人で寝ても余るくらいだよ」

突然ゾロが噴き出した。どうしたのかと顔を確認したら、ほんのりと頬が赤くなっている。

「良かったね。広いベッドだって。寝相悪くても大丈夫だよ」
「お前も、ここに泊まんのか?」
「そうだけど、……?」

もしかしてゾロは私も同じ部屋に泊まると勘違いしているのでは。もしそうなのであればちょっと揶揄ってみよう。お爺さんにお金を渡して、言われた部屋に向かう。部屋までも迷いそうだから案内してあげよう。

「オイ! 俺は違う宿を探すからお前がその部屋使え」
「どうして? 私と一緒の宿じゃ嫌なの? いつも同じ船で寝てるのに」
「それとこれとは話がちげェだろ!」
「一緒だよ」

同じ宿なだけで部屋は違うし。やっぱり勘違いしてそうだ。笑ってしまいそうなのを抑えて、ギュッとゾロの腕に絡める。太くてしっかりしている腕でずっとこうしていたい。上腕筋最高。

「なっ!? 何してんだ! 離せ!」
「私と一緒じゃイヤ? 私はゾロと一緒が良いんだけど」
「おまっ、何言って……」

イヤ? ともう一度聞いてみる。身長差があるので自然と上目遣いになっているだろう。そしてコテンと首を傾げ、腕の力を強める。ゾロは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせていた。可愛い。
すると彼は一息吐いて目の色を変えジッと私を見つめる。

「本気で、言ってんのか?」
「ふふっ、じゃあ私の部屋こっちだから」
「は!? お前別の部屋取ってたのかよ!?」
「うん。ナミとロビンと同じ部屋だよ。ここに集まろうって約束してたの」
「お前……覚えてろよ」
「おやすみ、ゾロ。可愛かったよ」
「ふッッッざけんな!」

壁を壊しそうな勢いで怒っていたけど、笑いながら彼から離れて紙に書いていた部屋に入る。ドアを開けるとナミとロビンが椅子に座って寛いでいた。

「あら、おかえりなさい」
「ゾロの声も聞こえたけど、一緒だったの?」
「うん。ふふふっ、ほんとゾロって可愛い」

さっきまでの事を2人に話すと、2人とも大笑いしていた。ナミなんて笑いすぎて目に涙が溜まっている。

「それにしても渚ってゾロにべったりよね」
「えっ! そうかな。……確かに言われてみればそうかもしれない」
「サンジともよくキッチンで話しているわね」
「うん、話してる」
「ぶっちゃけどっちがタイプなのよ」
「どっちと言われても……うーん。ゾロは筋肉が素晴らしいと思う。筋トレ見るの好きだし、口は悪いけど優しいし。サンジの作るものは何でも美味しくて毎日食事やティータイムが楽しみ。それに女性の扱いが丁寧だから一緒にいて心地良い」

ナミもロビンも微笑みながら聞いてくれる。飲み物を入れてこようと席を立って、3人分の飲み物を入れる。ナミはこちらを見ながら言葉を続けた。

「恋愛感情はあるの?」
「異性として? そんな風に見たことないなァ。2人とも可愛いし」
「あの2人が可愛い!?」
「分からなくもないわ」
「ロビンまで」
「だよね。ゾロは揶揄い甲斐があって可愛いし、サンジは素直で可愛い」

ナミも妹みたいな感じで見てるよと言うと彼女はえ、と目を見開いていた。

「ちょっ、ちょっと待って? 私達そんなに年変わらないと思ってたんだけど違うの?」
「どちらかと言えばロビンの方が年齢近いよ」
「そうね」

ロビンとは前に皆の年齢について話したことがある。

「渚、いくつなの?」
「27だよ」
「えーーー!?」
「フフッ、私も初めて聞いた時驚いたわ。ナミと同じくらいだと思っていたもの」
「年齢の割に落ち着いてないよね。自覚はある。だからゾロもサンジも可愛く見えるんだよね。そもそも年下は恋愛対象外だし」

ドアの向こう側でガタリと物音が聞こえた。確認しに行こうかと思ったらロビンに大丈夫だと手を掴まれたので大人しく座る。ロビンとナミが笑っているけど、私何か変なことを言ったっけ。なぜ笑っているのか聞いても二人で顔を見合わせてまた笑っているだけで。何に笑っているのか私だけわかっていないのはとても悲しい。

「仕方ないわね。ネズミ達のためにももうちょっと聞いててあげようかしら」
「ネズミ?」
「渚は気にしないで。それで渚の好きなタイプは? やっぱり筋肉量の多い人?」
「好きなタイプかー。外見で言えば私の中で理想の筋肉があって、その理想に近い人かな。筋肉量が多いだけじゃ駄目なの。性格は、私の我儘を聞いてくれてたくさん褒めてくれる人が好き」
「ウフフ、可愛い。相手に甘えたいタイプね。だったら年下は対象外なの納得だわ。……かわいそうね」
「年下だと私が面倒見なきゃって思っちゃうんだよね」

かわいそうってどういうことなの。あ、もしかして。

「ナミ……、ごめんね」
「突然どうしたのよ」
「私の事、好きなんで「アホかァ!」……痛いっ!」

真剣な顔をしてそう言うと、ナミに頭を殴られた。多分たんこぶ出来てる。

「絶対勘違いしてるでしょ。アンタの事は勿論好きだけど、恋愛的な好きじゃないわ!」
「じゃあネズミって、可哀想って何なの……」
「気にしなくて良いって言ってるでしょ」

両頬を外側に引っ張られて何も喋れなくなる。意味深な言葉はスルーした方が良いのかと諦めて、2人の好きな異性のタイプを聞いて、その後恋愛話で盛り上がった。



次の日、宿から出ると宿の入り口でゾロとサンジが喧嘩していて、ナミが2人に拳骨を落としていた。サンジは頭にタンコブを作りながらも私達に挨拶して今日も綺麗だと褒めまくっていた。

私は昨日あった事、バイトをすることになった事を皆に話した。
バイトの時間まで皆で島を回ることになり、サンジが隣に来て私の名前を呼ぶ。

「今日も可愛いね、渚ちゃん」
「うん。ありがと」
「今日は白い服なんだね。まるで天使のようだ。ショートパンツも似合っているよ。眩しすぎるくらい綺麗な脚だ」
「う、うん」

今日はやけに褒めてくれるな、なんて思いながらナミ達の後をついて行った。そんなサンジの様子を見て、ナミとロビンは笑っていたらしい。