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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -







 とある島で開催される「一番強い海賊団を決める」お祭りに参加することになった私達は、その島を目指して航海していた。
 ハートの海賊団との別れ際、ローは私の額にキスを落として去って行った。そこでまたルフィとローとの喧嘩が始まったが皆で何とかして止めた。皆、ごめん。


「え……?」

 航海中のサニー号の前に突如現れたのは、大きな渦だった。海を眺めていたら本当に突然渦が出来たのだ。一番近くにいたルフィに声を掛けるも、昼寝中だったようで寝ぼけている。

「ルフィ、このままじゃ渦にのみ込まれちゃう!」
「んあ? ……なんだあれ!?」

 ルフィがナミやジンベエ達を呼んで、船の指示と操作が行われる。さっきまではのんびりと航海していたのに、突然変化した海と空に全員が驚いていた。

「まずいわ。あの渦に加えて嵐が来る。みんな、すぐに帆を畳んで!」

 ナミの指示に皆が動く。彼女の予報通りすぐに嵐が来て、大きな渦にサニー号は飲み込まれそうになる。目が開けられないほどの雨が降り、船が揺れる。風で飛ばされないように手摺に掴まった。

「フランキー! クー・ド・バーストは使える!?」
「すまねェ! 船の揺れでコーラ樽に穴が開いちまった!!」

 渦の真ん中に吸い込まれるように近づいていき進退両難におちいった。

「お前ら、サニー号に掴まれーー!!」

 最後にルフィの叫ぶ声が聞こえ、私達は海に飲み込まれた。


********************


 気が付くと私達は砂浜の上で寝転がっていて、辺りを見回した者から声を上げて驚いていた。皆が口をあんぐりさせて動かなくなってしまったので、私も今いる場所を確認すると、そこはまるで昔の日本を元にしたような島だった。

「ここって……」
「ワノ国じゃねえか!」
「なんでだ!?」
「おれ達ワノ国から出たはずだぞ!?」
「いつの間にか戻ってたのか!?」
「そんなはずないわ」

 混乱した皆が一斉に話す。どうやら彼らは来たことのある島の様で、海に飲み込まれて流されて移動したのか、と疑問に思うが、ナミが言うにはそんなことあり得ないとのことだった。


「ルフィ!?」
「モモ!!」

 身長の高い黒髪の青年が目を見開いて崖の上に立っていた。何故ここに、と驚いていたが海に飲み込まれて移動してきたことを伝えると、再会の祝いと言って何故か宴が始まった。





「おナミー! 拙者寂しかったでござるよー!」
「やめんかー!」

 大人数での宴が盛り上がる中、ルフィと話し終えたモモの助君はナミを見るなり飛びついていた。なんだかサンジと同じ匂いがする。
 彼はワノ国の将軍らしいが、皆は将軍らしい扱いはしていない。寧ろ小さい子供の様に接していて、そのことをナミに聞くと彼は悪魔の実の能力で28歳の身体になったらしいが中身は8歳の子供らしい。確かに言動をよく見てみれば子供のように見える気がする。

「ぶつなんて酷いでござる! ……ん? お主見ない顔でござるな」
「渚と言います。初めまして。えっと……モモ君?」

 将軍様だけどこの呼び方で良いのかなと首を傾げるとモモ君は私を上から下までジッと見つめた後、両手を広げてこっちに飛んできた。

「おナミにぶたれて拙者頬が痛いでござるー! 慰めてくれー!」
「えっ!? ちょっ!?」

 身体が大きいのと、思ったより力が強かったので押し倒されて頭を床にぶつけた。痛む頭を押さえながら下を向くと、モモ君の顔は私の胸の谷間にうまっていた。表情を見てこの子わざとだ、とピンときた。

「……モモ君」
「何でござるか?」

 顔を上げたモモ君の頭に手を添え、そのまま耳から顎にかけてゆっくり撫でる。

「おイタしちゃダメだよ?」
「よっ、妖艶じゃ……」

 顔を真っ赤にしながらモモ君は私から離れた。中身は子供って言うのは本当の様だ。反応が可愛くて笑っていると、モモ君の後ろに二つの影が出来た。振り向いたモモ君は真っ赤だった顔が一瞬で真っ青になっていた。

「おぬしら、何故そんな怖い顔を……!? 渚ー! 怖いでござるー!」
「あ、オイ! 渚ちゃんの後ろに隠れてんじゃねェ!!」
「……」

 サンジとゾロが今にもモモ君に拳骨を落とそうとしていて、「ヒィィィ!!」とモモ君は怯えていた。

「二人とも落ち着いて。そんな怒るようなことじゃ……」
「渚ちゅわーん、おれもその胸に飛び込んでもいいかい!?」
「邪魔だ、エロコック」
「なんだと!?」

 二人の喧嘩が始まったけど、まあいいか。モモ君は泣きながら私の服にしがみついている。身体は大きいけど可愛くて背中を撫でたら、涙目のモモ君はまた私に抱き着こうとした。しかしウソップに首根っこを掴まれて動きが止まる。

「おいモモ。お前のために言っておいてやるけどな、渚にだけは手を出すのはやめとけ」
「な、何故じゃ」
「あいつらの顔、さっきも見ただろ。次やったらぶっ飛ばされるぞ」
「うむ……」

 流石に子供相手にそんなことはしないでしょう、と言いたかったけど、モモ君は何故か納得した様子だった。

「それより、あっちでルフィが腹踊りしてるから一緒に見に行こうぜ。渚も来るか?」
「うん、あとで行くね。お酒飲みたくて」
「おう」

 ウソップとモモ君は一番賑やかにしているルフィと角の生えた人の方へと歩いて行った。私はお酒を飲もうと沢山お酒が置いてある所へ腰を下ろすと、先程までゾロがいた場所だったようでゾロが隣に腰を下ろした。いつの間にかサンジとの喧嘩は終わったらしい。
 ブルックもお酒をもってやってきて隣に座った。

「渚さん、お注ぎしましょうか?」
「ありがと。私もお酌するよ」
「ヨホホ、嬉しいですねェ」

「皆さん、お久しぶりです」

 凛とした声が聞こえて振り向くと、青緑色の髪でたれ目の美女が奥の部屋から歩いてきた。上品な着物に身を包み、思わず「ほう」とため息が出てしまうほど綺麗な人だ。
 三味線の演奏が始まり、騒がしかった皆の視線が演奏に集まる。生で三味線の演奏を聴くのは初めてかも、と感動した。演奏が終わり、彼女は微笑みながらこちらに向かって歩いてきた。

「お久しぶりです。ゾロさん」
「……」

 美人さんが最初に声を掛けたのは隣にいたゾロだった。ゾロはちらりと彼女を見た後、興味なさそうにお酒をまた飲んでいた。

「ゾロ、無視しちゃダメだよ。挨拶はちゃんとしないと」
「お前はおれの母親か」

 彼の僧帽筋をぺちぺちと叩いたが言うことを聞いてはくれなかった。私達のやり取りを静かに見ていた美人さんとぱちりと目が合う。

「貴女は……」
「渚と言います。演奏、素敵でした」
「ありがとうございます。日和と申します」

 彼女は私の反対側のゾロの隣に腰を下ろして酌をしていた。一つ一つの仕草が綺麗で目を奪われてしまう。「仲良いんだね」と言うと、ゾロは無視してお酒を飲んでいたが日和さんはふふ、と笑った。近くにいたブルックも何か思い出したのか笑っている。

「休息中のゾロさんの身体を拭いた仲です」
「ヨホホホホ、あの時はびっくりしました。抱き合って寝てるんですから」
「ただそいつがくっついて寝てただけだろうが。紛らわしい言い方すんな」

 身体を拭いたってことは筋肉触り放題だったってこと……!? ゾロの少しはだけた胸元をジッと見つめる。着物からのぞく大胸筋はふっくらしていて、あれを好きなだけ触れることが出来たらと想像したら鼻血が出てきた。

「う、うらやましい……」
「ヨホホホ……ゾロさんモテモテ」
「こいつはそういうんじゃねェと思うが」

「わー、懐かしー!」

 ナミの声が聞こえて振り向くと、丈の短い水色の着物を着た彼女の姿があった。オレンジの髪に合っていてとても可愛い。

「ナミ可愛い! どうしたの、その服」
「ワノ国に潜入した時の服なのよ。懐かしいって言ってもついこの間の事なんだけど。そうだ、折角だし渚も作ってもらいなさいよ」

 服を作るってそんなすぐに出来るものなの? と思っていたら、錦えもんさんは服を作り出せる能力者らしい。彼は私を上から下までじっくり見た後、にやりと口角を上げた。

「こりゃまた別嬪なおなごでござるな」
「オイ、錦えもん。とびっきりエロいやつで頼むぜ」
「サンジ殿、拙者に任せておけ。妖艶なおなごに変身させてしんぜる!」
「いやでも待てよ、エロい渚ちゃんが他の奴らに見られるのは……。渚ちゃん、おれとあっちの部屋に行かねェか?」
「……アンタ達、全部聞こえてるわよ。渚に変な服着せたらぶっ飛ばす」
「私、普通の着物が良いなァ」

 錦えもんさんに私の声は届いてるかな、多分届いてないだろうな。でもナミの服より際どいのはないだろうし、服が作れる能力が見れるなんて楽しみだから、大人しく頭に葉っぱを乗せた。

「フクフクの術! ドロンッ!」

 なんだか、肩と足、それからお腹が冷える。着せられた服はナミと同じような丈の短い着物だけど、帯がなくさらしが巻かれた胸が見える状態だった。着物を正面に引っ張り前を隠すが、露出が多すぎる。

「待って、錦えもんさん。チェンジ! これはだめ。恥ずか……」

 私が言い終わる前にナミが錦えもんさんを殴り飛ばしていて、サンジは鼻血を噴き出して倒れていた。「悪戯心が過ぎた」と錦えもんさんから謝罪を受けて、普通の着物を着せてもらった。さっきはびっくりしたけど、着物なんていつぶりだろう。紫とピンクのグラデーションが綺麗で思わず顔がにやけてしまう。


「キミもルフィの仲間なんだよね!?」
「へっ、」

 頭上から声が聞こえて振り向くと、突然グっと顔が近づいてきて驚いた。さっきまでルフィ達と楽しそうに話していた、頭に角が生えていてる人だ。

「僕はヤマト! さっきルフィから聞いたよ、渚って言うんだね。この間はいなかったよね!?」
「……あっ! そうです。初めまして」
「僕と一戦やろうよ!」
「ごめんなさい、私、戦えないんです」
「そうなのか……」

 ガックシと肩を落としたヤマトさんの前にお酒を差し出して、「でも、これなら勝てる自信があります」と言うと顔を上げて目を光らせていた。

「いいね、僕と勝負だ!」
「受けて立ちます!」

 それから二人でお酒を浴びるように飲んでいたら、突然ヤマトさんが倒れた。顔が真っ赤だし、酔っぱらっちゃったのかな。床に突っ伏していた顔がこちらを向き、尖った口が開いた。

「キミ強すぎだよ……」

 そう言ってヤマトさんは目を閉じた。すぐに寝息が聞こえてきたので、何か身体に掛ける物はないか探しに宴会場から出た。

 掛布団や薄い毛布はどこにあるか探して廊下を歩いていたら、さっきの錦えもんさんの能力を思い出す。ヤマトさんに暖かい服を着せてもらえばいいんだ。
 宴会場に戻ろうと踵を返したら、何かにぶつかった。

「ご、ごめんなさ……ウソップ?」
「おう」

 後ろにいたのはウソップで、私に声を掛けようとしていたらしい。彼も掛布団を探しに来たようだ。

「あいつら皆酔っぱらって寝ちまってよー」
「錦えもんさん、服作れないかな?」
「錦えもんもぐっすりだぜ」
「じゃあ布団探すしかないね」
「風邪引くような奴らじゃねえから、そのまま寝かせても良いけどな」
「でも探しに来るんだ。ウソップって優しいよね」
「……ま、まーな!」

 ここにはねェかな、とウソップが近くの部屋のドアを開けると、薄暗い部屋の中に布団が積みあがって並べられているのが見えた。

「おっ、あったな」
「良かった。電気どこだろう……わっ!?」
「なんだなんだ? おわっ!」

 足元にあったものに気づかず転んで尻もちをついた。薄暗い中、ウソップも同じものに躓いたのだろう。私に覆い被さるように転んだ。

「わりィ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」

 カタン、と音がして振り向くと、お団子頭の少女が丸い目を大きくさせて私達を見つめていた。私の頭の横に両手をつくウソップ。側から見れば押し倒されている状態だ。これはまずい、絶対誤解している。

「あ、あ……」
「えっと、あの、違うんだよ? 二人して転んだだけで……」
「そうだぞ、お玉。話せば分かる」
「アニキィーーーーー!」
「「待ってーー!?」」

 手を伸ばしても届かず、少女は早々と姿を消したのであった。
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