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 ゾロとローが睨みあって数分。声を掛けても二人とも無反応。いったいどうしたものか。右を向いても左を向いても美しい大胸筋。今すぐにでも飛びつきたいけど、告白されたわけだしちゃんと返事はしないといけないよね。

「ゾロ。私ローと話すことがあるの。だからちょっと待ってて」
「……」

 ローと二人で話さないと、と思ってゾロに伝えたが彼は私の手首をがっしりと掴んだまま。そんなゾロを見てか、ローは溜息を吐いた。

「ゾロ屋。年下扱いされるのはそういうところだぞ」
「…………、わりィ」
「うん。ちょっと待っててねー」

 背伸びをしてゾロの頭を撫でようとしたけど届かなかったので、行き場のない私の手を見てゾロは首を傾げた。

「どうした」
「ちょっと屈んで」

 訳の分からない顔をしたゾロは素直に屈んでくれて、私は彼の頭をよしよしと言って撫でた。

「お前な……」

 呆れた様子だけど大人しくなったゾロ。ローに話がしたいと伝えて少し歩いた。
 彼に自分の思いを伝えなくては。広い海では次またいつ会えるのか分からない。曖昧にさせては彼に迷惑だ。

「ごめんロー。気持ちは嬉しいけど、貴方についていくことは出来ない。私はこの世界にいる限り、救ってもらったルフィの元で麦わらの一味として生きていくって決めてるの」
「……そうか」
「でも好きって言ってくれて嬉しかった。ありがと」
「それなら麦わら屋を説得か。無理矢理連れ去ったところで麦わら屋たちと戦争だからな。別におれはそれでもいいが渚が悲しむだろ。ただ麦わら屋に話が通じるかどうかが問題だな」
「んん?」

 突然饒舌になったローについていけず混乱する。彼の独り言は止まらず待つこと数分、いつも通り冷静な彼に戻ったのか、真っ直ぐな瞳と目が合った。

「まだこの島にいるんだろ」
「うん。ナミから連絡があるまでは」
「そうか」

 ローは「麦わら屋を探すか」と言って去って行った。さっきルフィを説得って聞こえたけど、流石に喧嘩はしないよね。大丈夫だよね。


「ゾロ、お待たせ」
「……終わったのか、話」
「うん」

 さっきいた場所に戻るとゾロが腕を組んで待っていた。良かった、どこにも行ってなくて。迷子になったらまた探さないといけないし。

「街の方行く?」
「……」
「……ローの所には行かないよ。前にも言ったけど、下りろって言われるまで離れないから」
「……別に聞いてねえ」
「気になるって顔してたもん」
「そうかよ」

 街へ行く前にゾロに聞かなければいけないことがあったんだ。朝から不機嫌だった彼を私はずっと探していたのだから。

「ゾロ、昨日の事なんだけど」
「アー……。忘れろ」
「でも、ずっと怒ってたでしょ」
「お前がおれ達を選んだだけで今は十分だ」

 私の頭をわしゃわしゃと少し乱暴に撫でて、「さっきの仕返しだ」とゾロは笑った。ゾロが昨日何を言ったのか気になるけど、本人が良いって言うなら良いか。

 街の方へ歩くと、建物の陰からナミとウソップがひょっこりと顔を出した。まるで私達を待っていたかのようだ。

「渚、買い物に行きましょ! ウソップとゾロは荷物持ちね」
「ナミ。うん、行こ行こ!」
「おれ達荷物持ちだってよゾロ。逃げたら殺されっかな」
「あー、がんばれよウソップ」
「おい逃げんなよ!? ゾロ!」

 逃げ出そうとするゾロに焦るウソップ。ナミは手をグーにして殴る準備をしているのが見えたので、ゾロの服の裾を引っ張って見上げた。

「ゾロ、私に似合う服選んでくれる?」
「…………、仕方ねェな」 

 なんとか引き留めることに成功し、四人で買い物をすることになった。ナミの隣を歩くと腕を引っ張られ耳打ちされる。

「わっ、どうしたのナミ」
「渚ったらまるで猛獣使いね」
「ええ? そうかなァ」

 それじゃあ行くわよーとナミは私の手を掴み、走り出した。急に走り出した私達を見て後ろから焦った声が聞こえ笑みがこぼれる。こんな平和な時間が続けばいいのにな、と雲一つない空を見て思った。


 洋服店に入るとナミは沢山の服を手に取っていく。そしていつものように価格交渉していた。服を選びながらその様子を横目で見ていると、こちらに話が振られる。

「二万ベリーは高いわよね、渚」
「えっ、うん。そうだね? ウソップ、ゾロが迷子にならないように見ててね」
「おう、任せろ」
「おれはガキか」

 ウソップにゾロを任せてナミの元へ歩くと、小声で「五千ベリーまで下げるわよ」と言われた。

「それは無理があるんじゃない?」
「何弱気なこと言ってんのよ。ちょーっと色仕掛けすれば値下げしてくれるタイプの店員よ」

 ナミに一緒に交渉しましょと誘われて、交渉術を伝授される。上服を下へ引っ張り鎖骨から谷間まで露出させ、胸の下で腕をクロスして値引き交渉をする。店員は私とナミの胸元に視線を落とし鼻の下を伸ば……したように思えたが、私の後ろを見てすぐに顔が真っ青になった。

「ナミ、こいつに変なこと教えんな」
「あら。ボディガードが来たわ」
「お前もバカなことしてんじゃねえ」
「痛ッ!」

 ゾロにこつんと頭を小突かれた。乱れた服を直して頬を膨らませていたら、またもやゾロに頬を外側に引っ張られる。ナミの真似してちょっと遊んでただけなのに。結局服は半額の一万ベリーまで下げることが出来た。


********************


「何よこの状況は」
「皆、ボロボロだね」

 買い物を終えサニー号に戻ると、ルフィとロー、そして二人に巻き込まれたのかそれとも止めようとしていたのか、チョッパーとベポがボロボロな状態だった。

「トラ男に渚は渡さねェぞ!」
「分からねェのか。おれの船に乗せる方が安全だって言ってんだろ」

 ルフィとローの発言から察するに、喧嘩の原因って……。

「原因はアンタみたいよ」
「……」

 二人の喧嘩を止めないと、だよね。ルフィとローの間に向かおうとしたら、怪我するぞとゾロに止められた。

「近々開催される海賊レースに勝った方が渚を手に入れる。それでどうだ麦わら屋」
「海賊レースゥ? 何だそれ」
「ある島で開催される、何でもありの命懸けレースよ。一番強い海賊団を決めるお祭りみたいなものね」

 本を持ってサニー号から出てきたのはロビンだった。命懸けのレース……そんな危険なことはしたくないところだけど。「一番強い海賊団!?」「おれ達は参加するが、麦わら屋達は勝てる自信がねェみてえだな」「おれ達が一番強いに決まってんだろ! 参加する!」とローの口車に乗せられてルフィは承諾するのであった。そのやり取りを見て私とナミ、そしてウソップとゾロは頭を抱えた。

「おいおい、それで負けたら渚はトラ男のとこに入るってことだろ!?」
「あっ! お前ら戻ってたのか! レース参加すんぞ!」
「ルフィ、仲間を賭けた試合をそんな簡単に承諾するもんじゃねえだろ」
「大丈夫だってウソップ。おれ達が勝つ!」

 どんなレースかもわからないのに何故か自信満々の船長。怒るべきなのか呆れるべきなのか、何とも言えない感情が私の中で渦巻いていた。