×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -






 麦わらの一味は海賊に襲われていたとある一つの島を救った。島の住民達は彼らの優しさに酷く感動し、島全体で彼らをもてなすとのことだった。
 沢山の料理と酒が並び、盛り上がる中心には船長が楽しそうに笑っていた。

「まだ飲んでねェのか?」

 楽しそうな皆を見ながら少し離れたところで腰かけていると、お酒をたくさん持って上機嫌なゾロが隣に腰かけた。

「うん。どれが一番美味しい?」
「どれも美味いが、これが一番だな」
「じゃあもーらいっ!」
「ハァ!? お前それ全部飲むのか!?」
「ゾロはもうたくさん飲んだでしょ」

 大きな瓶に入ったお酒を抱きしめながらお猪口に注いで口をつけると、辛口で美味しい。もうこのお酒は渡さない。ゾロは呆れた様子で綺麗な女性に美味しい酒があると呼ばれて行ってしまった。


「……」

 皆、楽しそう。賑やかな皆を見て、私は疎外感を感じていた。戦って島を救ったのは彼らで、私は避難誘導くらいしかしていない。こんな事考えたって仕方ないとは分かっているけど、つい考えてしまう。

 駄目だだめだ、ネガティブな考えはやめよう。頭を横に振って、ちょびちょびとお酒を飲んだ。サニー号で一人でいる時はいつもサンジがドリンクを持ってきてくれるのにな、と思ってサンジを見ると綺麗な女の人達に囲まれて鼻の下を伸ばしている。
 ……私に気があるようなことしておいて、なんて嫉妬心が募る。こんな気持ちはずるいって分かってる。彼らの好意に答えてもいないのに嫉妬はするなんて自分勝手にも程がある。

 静かな場所に行って気持ちを切り替えようと思って立ち上がると、腕を掴まれ引っ張られる。振り返るとゾロがいてまた沢山のお酒を抱えている。どこに行くんだって顔をしているから顔を逸らして下を向く。

「ちょっと暑くなってきたから、風あたりに行こうかなって」
「お……「おーいゾロー!」」
「呼ばれてるよ」

 腕を払って立ち去ろうとしたら、私の腕を持つ手に力が込められた。ぶんぶんと腕を上下に振っても離してくれる様子はなく、諦めてゾロを見ると口角が上がっていた。

「拗ねてんのか?」
「なっ!? す、拗ねてない!!」
「へェ」
「は、はなして! ルフィが呼んでるよ、行ってあげて」

 沢山のお酒を足元に置いてゾロはルフィの元に歩いて行った。去り際に私の頭に大きな手をポンと置いて。……私、年上なんだけど。
 静かな場所へ移動しようと歩き出したら後ろから呼び止められた。

「あら、お酒はいいの?」
「ロビン……」

 私の表情を見てロビンは「少し話をしましょう」と言って腰を下ろしたので隣に座る。

「浮かない顔をしてるわね」
「うん……。こんなこと言っても仕方ないんだけど……、何も……出来なかったなァ、ってちょっと考えたりしちゃって」
「そうね、そんなこと考えても仕方ないわね」

 彼女の容赦ない言葉に痛む胸をおさえる。だけどロビンは「でも……」と言葉を続けた。

「渚にしか出来なかったこともあったはずよ」
「……私が出来ることは皆出来るよ」
「島の人、貴女の事を探していたわよ。避難誘導をしていた女性は君達の仲間か? 逃げ遅れた子供を助けてくれたからお礼を言いたいって。それに怪我人の応急処置も的確にしていたからチョッパーが褒めていたわよ」
「そっか……」
「自分が思っているほど、何もしていないわけじゃないと思うわ」

 ロビンの言葉に目頭が熱くなってくる。それと同時に自分の発言が恥ずかしくなる。

「私、たまに面倒くさくなっちゃうの」
「ええ、知ってるわ」
「いつもロビンに元気づけてもらってる気がする。ごめんね」
「貴女には笑っていてほしいから」
「ロビン好きィ……」

 ギュウと彼女に抱き着くと目の前にお酒が差し出された。彼女の能力で生えた手がグラスにお酒を注いでくれる。ゾロが持ってきたお酒、全部飲んじゃおうっと。戻ってきたときビックリするかもしれない。

「ふふっ」
「元気になったみたいね」
「うん、今日はいーっぱい飲むね!」
「ええ、好きなだけどうぞ」

 酔いたい気分だからハイペースで飲んだ。段々と体温と気分が上昇してきて、呂律が回らなくなってくる。でもきっとロビンが介抱してくれるから大丈夫、そう思ってお酒を飲み続けた。





「ロービーンー、だいしゅきー! もうロビンがいらいと〜、いきていけら〜い」

 一時間後、彼女は泥酔状態になっていた。ロビンに抱き着きながら、好きだ好きだと同じ言葉を繰り返していた。そんな彼女に最初は可愛いと思っていたロビンだったが、流石に飲ませすぎたと思い、水をもらってくると言ってその場を離れた。一人になった彼女はお酒を抱えながら千鳥足で賑やかな方へ歩いて行った。

 数分後、ロビンは水を持って戻ってきたがそこにいたのは渚ではなくゾロだった。ゾロは驚いた様子で空になった酒瓶とロビンを交互に見た。

「これ、全部飲んだのか?」
「ええ、飲ませすぎちゃったわ」
「……渚か。アイツどこ行ったんだ……」
「さっきまでここにいたんだけど。相当酔っていそうだから水を持ってきたの」
「酔ってんのか?」
「ええ、とっても」
「……」

 酔った彼女の以前の行動を思い出し、ゾロは無言で頭を抱えた。そして近くにいないか辺りを見回すが彼女の姿は見当たらない。

「……探してくる」
「お願いね」


 彼女の声が聞こえる方へと足を運ぶと、お酒を持ちながら島の住民に絡んでいるのを見つけた。

「それでねェ、私のちゅうをうばったの〜」
「あらそうなの。青春ねえ」
「おい酔っ払い、水飲め」
「あ〜ゾロだァ〜」
「……っ、」

 自分を見て嬉しそうに微笑む彼女を見てゾロは一瞬言葉が出てこなかった。その様子を見て島の住人である高齢女性は楽しそうに笑う。

「この人があなたの唇を奪ったっていう?」
「そーなの〜」
「なっ!? お前何話してんだ!」

 面白い匂いを嗅ぎつけたのか、なんだなんだと周りにいた島の住民たちは彼らの周りに集まった。周りからどうなのか問いただされたゾロは、怒りと恥ずかしさで顔を赤くさせた。

「あれは人工呼吸で……って渚も気にしてなかっただろ!」
「うわーん! 私のくちびるー!」
「ウソ泣きすんな! めんどくせえ!」
「めんろくさいって言われたー!」

 彼女がかわいそうだとゾロは周りから冷たい目を向けられた。「ゾロサイテー」「ひどーい」「渚がかわいそう」と住民に紛れ自分を責める仲間の顔が見え、ゾロは額に青筋を立てていた。
 そこへ女性を両側に引き連れてサンジが歩いてきた。彼を見つけた瞬間彼女は「あー!」と声を出しながらサンジに向かって指をさす。

「サンジにもうばわれらのー!!」
「えっ」

 彼女の隣にいる女性は「唇を奪ったもう一人の彼よ」と周りの人々に説明しており、周りの人々は「なんだ三角関係か?」と状況を楽しむ中、サンジは訳も分からず目をきょろきょろさせていた。

「渚ちゃん、もしかしてめちゃくちゃ酔ってる?」
「よってるわけらいれしょ〜!」

 酔っている彼女の姿を見て、サンジは周りにいた女性の腕から抜け出し彼女の元へ駆け寄って膝をついた。

「涼しいところで休もうか」
「やら」

 プイとそっぽを向く彼女にサンジは顔を手で覆い、悶えた。

「ンンン! 酔っぱらってる渚ちゃんも可愛いー!」

 そこへ水の入ったグラスが彼女の目の前に勢いよく差し出される。グラスを持ったゾロに彼女は視線を向けた。

「飲みすぎだ、水飲め」
「やらー!」

 彼女の腕を無理矢理掴み、水を飲ませようと口にグラスを持っていく。子供の様に拒否する態度と周りからの視線、そしてサンジも彼女にキスをしたということ。ゾロは我慢の限界であった。

 しかし今の彼女の視線の先はサンジで、彼に向かってニコニコと楽しそうに微笑んでいる。

「さんじー、おすわりー」
「えっ、わ、ワン!」
「えへへ、かわいい〜、じゃあお手」
「ワン!!」
「えらいねェ、よくできました〜」

 えらいえらいと言って彼女はサンジの頭を撫でまわすと、サンジは喜びながら倒れた。その様子にゾロは呆れながらも、彼女を片手で持ち上げる。周りから「どこに連れて行く気だ」「襲うなよー」と茶々を入れられながら、ゾロは人目のつかない場所へ彼女を運んだ。


 ベンチに彼女を座らせてゾロはグラスを渡し、自分も隣に腰かける。

「ぞろ、筋肉さわりたい」
「水飲めよ」
「うん」

 彼女は左手でグラスを持って水を飲み、右手でゾロの上腕筋を揉んでいた。

「一つ聞かせろ」
「んー……?」
「ぐる眉としたのか、キス」
「んん、そうだねェ。んー、なんれそんなこと聞くの」

 虚ろな目で自分を見つめる彼女の顔がやけに色気を感じた。しかし彼女に触れたいという自身の欲求を抑え、ゾロは真剣な顔で言った。

「お前の事が好きだからに決まってんだろ」

「……ふふ、わたしのことすきらの。かわいいな〜ぞろ」

 にへらと笑い彼女はそのまま眠りについた。