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「この島、やけにカップルが多い……というか、いちゃついてる男女が多いな」
「とにかくメシだー!」

「ちょーっと待ったー!」

 突然目の前に現れた男に、何だとルフィが首を傾げる。男はルフィの行く道を遮るように両手を横に広げた。

「旅人さん達、この島は初めてかな? ここはラブ島と言ってね、将来のお相手を探しに世界中から独り身が集まる島なんだ。そしてお相手を見つけたらこの先のラブラブ島に入れるようになるんだよ」

 つまりここから先に行くにはカップルでないと入れないというわけさ、と付け足す。今いるのがラブ島で、この先にあるのがラブラブ島。見たところ、ラブラブ島の方が華やかな建物が多く、お金が掛かっていそうだ。

「じゃあ仕方ねェな。諦めてこっちの島でメシ食おうぜ」
「でもよー、あっちの島の方が美味しい肉食べれそうだぞ?」
「確かに……。でもおれたちは全員相手がいねェんだ。あっちには入れねェよ」

 肩を落とすルフィの背中を叩き慰めるウソップ。

「この島で相手を探すっていうのはどうやって?」

 ロビンが男に尋ねる。確かに、ただ島にいるだけじゃ付き合うまでいくか分からないし、何かイベントでもあるのかな。男はその質問を待ってましたと言わんばかりに話し始めた。

「まずはこの門を通り、相性診断の道を進んでいくんだけどね、理想の相手の性格と自分の性格を選んで進んでいくんだ。見事性格が合いマッチした男女はカップル成立ってわけさ!」

 面白い企画だなー、と話を聞いていると、ルフィやゾロ、チョッパーは興味なさげにラブラブ島の建物を見ていた。

「そしてなんとカップル成立した男女には祝い金として500万ベリーが与えられるんだ」
「500万ベリー!?」

 ナミの目がお金になった。祝い金高すぎじゃないか。すごいイベントだ。ナミが参加料はいるのか聞いたところ、500ベリーで参加できるとのことだった。

 それなら参加するしかない、との事でナミに背中を押された。あれ、私が参加するの? ナミは?


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 門を通り過ぎて行く渚の背中を見ながら、ナミはゾロに声を掛けた。

「アンタは行かないの?」
「興味ねェな」
「付き合うだけで500万ベリーよ? お金を貰ったら別れても良いんだし」
「テメェがいきゃ良いだろ。こんな面倒なことしてられるか」
「はぁ、バカねェ。別に仲間同士で成立させても良いのよ?」
「ウゲェ」
「失礼ね! 私じゃなくているでしょ、候補が!」
「……」
「頑張んなさいよ!」

 ナミは彼の背中を力一杯叩いた。背中とは別にゾロの頭には大きなたんこぶが一つ出来ていた。



 一方、ハイテンションで門を通り抜けようとするサンジの後ろからロビンは声を掛けた。

「おれの理想の女の子と付き合えるー!? なーんて幸せな島なんだ!」
「あらそれで良いの?」
「ロビンちゅわーん! おれとカップルになってくれるー!?」
「あの子じゃなくて良いのかしら。それにあの子が別の男性と付き合って良いの?」
「……」
「ウフフ、頑張ってね」


 二人の男のやる気に火がついた。ナミとロビンは目の前の男と彼女が上手くいって帰ってくるだろうと踏んでいた。しかし、二人の予想とは別の方向に事は進んでしまうのであった。


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 自分の理想の相手と出会えるなんて面白くて凄い企画だと思う。でも私、理想がはっきりしてるから理想の相手は現れないだろうな。ナミには悪いけど、相手が現れなかったと戻る事になりそうだ。

 門を通って真っ直ぐ進むと、正面にあるスクリーンに質問が映し出された。これに答えていくってことね。

『理想の相手の体型は?』
 勿論、筋肉質!
『理想の身長は?』
 自分より10センチ以上高かったら嬉しいな
『引っ張ってほしいか、引っ張っていきたいか』
 引っ張ってほしいな
『愛の示し方は』
 分かりやすく言葉で!

 その後も沢山相手の理想を選択し終わった後、自分の性格を答えていく。そして最終の質問を終えた後、正面のカーテンが上に上がった。少し向こうには同じようにカーテンがある。マッチした相手があっちから出てくるのかな。わー、楽しみ。


 少し待っていると、ざわざわと騒がしくなってきた。多分カーテンの向こう側に相手が現れたのだろう。私の理想の人ってどんな人なんだろう。筋肉量多い人だと良いなー。

「おい! 離せ! おれは結婚する気なんざねェぞ!」
「キャプテン、あの子の事考えすぎなんですってば! 他の子見て気持ち切り替えないと!」
「そんな必要ねェ!」

 カーテンが上がり騒がしく出てきたのは見知った顔だった。

「あれ? ローだ。久しぶり!」

 ローの後ろでペンギン君が口をあんぐりさせている。ペンギン君は付き添いだろうか。

「結婚するか」
「えっ!?」

 一瞬で私の目の前まで移動してきたローに両手を包むように掴まれて求婚された。さっき結婚はしないって言ってるの聞こえたし、もしかして彼もこのイベントの祝い金目的だったり? 顔見知りだしそれならカップル成立させて二人で出て祝い金を貰った方がいいかもしれない。

「はい。お願いします……?」
「!!」

「なななっなんと! カップル成立ー! 美男美女カップルだー!」

 周りから黄色い声が飛んできて、スタッフの人達が私とローの周りを囲み、色々と何かを持たされる。そしてスタッフ達は離れて、花束を持ったローが私に近づく。

「あの、ロー? これ企画だからだよね?」
「んなもん知らねえな。式はどこで挙げたい?」
「ちょっと待って!?」
「二人きりが良いか、人を呼んで派手にしたいかどっちが良いんだ」
「どうしよう。全然話聞いてない」

 花束を渡されて腰を抱かれる。ウゥ、目の前に素敵な胸筋が。上腕二頭筋を押して離れようとしてもびくともしなくて、背中を反らすことしか出来ない。
 見上げると彼は目を伏せていて長い睫毛が影を作っていた。改めて見ると思わず息を呑んでしまうほど綺麗な顔立ちだ。

 刺青の入った長い指が、私の横髪を耳にかけて優しく頭を撫でる。そして綺麗な顔を私の顔に近づけた。どうしよう、このままじゃ雰囲気に呑まれて……。


「だ、だめ……」
「!!」

 びくりと彼の指が反応し、近付いていた顔が止まる。息が掛かるほど距離が近くて、心臓がばくばくと主張をはじめるのが分かった。

 ローは私の後頭部に手を添えたまま、うっとりと私を見つめていた。そんな熱を帯びた瞳を向けられると、目が逸らせない。再び彼の顔が近付いてきて、ゆっくり瞼を閉じた。



「ちょっと待てェェェ!!」

 口と口が触れ合う寸前、大きな音と共にやって来たのはサンジだった。

「何でテメェがここに! ……いや今はンなことどうでもいい。渚ちゃんから離れろ! 今すぐに!」
「うるせェ外野は黙ってろ。おれはコイツと結婚する」
「ハァ!?」

 相性も良いそうだしな、とローは付け加えた。確かに相性は良いらしいけど……。そういえば診断では私の理想って彼になるのか。

 するとサンジは突然頭を抱えながら叫んだ。

「渚ちゃんの理想の男がコイツって事か……?」
「サンジ、診断で出ただけだから。それに私結婚はしないよ」
「そそそっそうだよねェ! じゃあおれとここを出よう」

 確かにサンジと出たら祝い金が全部貰えてナミも喜ぶかも。

「うん、出よっか。ちょっとだけラブラブ島を見て回りたいんだけどいい?」
「もちろんだよー!」
「待て。早速浮気か?」
「あっ、ローも祝い金欲しかったんだよね。どうしよう……」
「祝い金って何のことだ」

 カップルになると500万ベリー貰えることを伝えたら、そんな事知らねェしどうでもいいと言われた。でも他にここから出たい理由って……。

「ロー、私と結婚したいの?」
「さっきからそう言ってるだろ」
「だってさっき結婚する気ないってペンギン君と話してたでしょ。だからてっきり祝い金目的なのかと」
「お前以外の女とはする気はねェ」
「ええ!?」
「離せ。彼女はおれとここから出る」

 左手にロー、右手にサンジに手を掴まれて動けなくなる。困った。彼には悪いけど、今手を取る方は……。


「お姉さん。もし選べないんだったら、三人でお付き合いってことでも良いですよ」

 後ろからスタッフの人に声を掛けられる。グーサインをしながら、そんな愛の形もありですよと微笑んでいた。

 彼らを両手に外へ出て祝い金をもらったら、目の前にはラブラブ島の入り口。


「二人とも、ちょっと遊んでいこ」

 この島に行きたがっていたルフィやウソップ達には悪いけど、ちょっと楽しんでから船に戻ろうっと。

「トラ男は邪魔だが渚ちゃんの頼みだ。一緒にまわってやる」
「それはこっちのセリフだ、黒足屋」


********************


 島を満喫し船に戻ることにした。美味しそうなものをいっぱい買ったしルフィ達、喜んでくれるかも。サニー号の近くにポーラータング号もとめてあるらしく、ローも一緒に戻ることになった。

 サニー号には皆戻っていて、食べ物を買ってきたことを伝えると早速ルフィが肉にかぶりついていた。

「じゃあなー、トラ男。何でここにいんのか分かんねェけど。あと渚は渡さねェから手ェ離せ」

 ルフィに言われてローの手に力が入る。「ならこれは貰っておく」と彼の手にあるのはドクドクと動く……。

「しししっ心臓!? だだだ誰のー!? なななななんで手に!?」
「何してんだトラ男! 渚の心臓返せ!」
「えっあの心臓私のなの? えー! 私の胸に穴がー!?」
「渚が今まで見たことないくらい焦ってる」
「そりゃそうだろう。自分の胸に穴が開いてんだ。動揺するに決まってる」

 チョッパーとフランキーが冷静に会話している。心臓がないのに何で息できるの。私死ぬの? え、どうしよう。

「お前の能力ずりィぞ! やめろ!」
「知るか」
「無理矢理は良くないわね、トラ男くん」
「ニコ屋……」

 ロビンの能力で私の心臓が返ってきた。おかえり心臓……本物の心臓が手の上にあるなんて生まれて初めてだ。
 ローは不服そうに私の胸に心臓を返した。そして自身のポケットから紙を取り出した。

「お前のビブルカードを作っておいた。それとこれはおれのだ」
「え、ありがと……?」
「ちょっとトラ男! 勝手に作らないでよ! って言いたいところだけどでかしたわ。私も貰っておくわね」

 ナミは私のビブルカードを破いた。そして皆は私を囲み、次々にビブルカードを破いていく。小さくなった最後の一枚はルフィが手にした。手元にあるのはローのビブルカードのみ。

「ニシシ! これで渚が何処にいるか分かるな!」
「ビブルカードって位置情報発信機なの!?」

 後でロビンがビブルカードについて教えてくれて、不思議なものだなとローのビブルカードを見つめながら思った。




↓おまけ ナミとロビンの会話

 サニー号に戻ってくる彼女を見てナミはロビンに500ベリーを渡した。

「私の負けね」
「でもトラ男くんもいるわ。どうしてかしら」

 彼女の話によると、相性が良かったのはトラ男でサンジは後から乱入したのだと知り、ロビンは先程のお金をナミに返した。

「残念。サンジだと思ったのに」
「全く、ゾロは何してたのよ。まさかイベント会場まで辿り着けなかったんじゃ……。あの道を真っ直ぐだったってのに」

 ナミの予想通りゾロは会場へ辿り着けず、参加さえ出来ていなかったのであった。