×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -






次の日の朝、全員が揃っていて私のフェチについて打ち明けた。誰も引いている様子はなくて、ルフィはおもしれーやつだなと笑っていた。ほっと胸を撫で下ろした。

「別に隠さなくっても、うちにはあんた以上に変な奴ばっかよ」
「涎垂らしても鼻血出しても引かない?」
「引かない引かない。鼻血なんてサンジ君がいつも出してるじゃない」
「んナミすわぁん素敵だー! 渚ちゃぁぁんおれで良ければ鑑賞でも何でもしてくれェェ!」
「ナミィィィ!!」
「サンジスルーされてるぞ」

嬉しくなって泣きながらナミに抱きついた。隣にいたロビンには「そんな事気にして可愛い子ね」と言われたのでロビンにも抱きついた。ウソップは「おれはもっと凄い趣味を持った奴を見たことがある」と話し出し、それにルフィとチョッパーは驚いていて。

「私は女性を見るとパンツを見たくなります。それと同じですね。ヨホホホホ。……ところで渚さん、パンツ見せてもらってもよろしいでしょうか」
「パンツ? 今日何色だったっけ」
「アンタと同じにするな! 渚もパンツ確認せんで良い!」

ナミがブルックの頭を叩いたが、ブルックはヨホホホと笑っている。パンツを見せてくれと言われたのは初めてだが、いつもの事なのかもしれない。

こうやって笑いに変えてくれる皆は、本当に優しすぎる。

「よーし野郎ども! 島でゆっくりするぞー!」

おー! と船長の声にクルー達が答える。そして皆荷物を持って船を降りていく。今日の船番はフランキーがしてくれるみたいだ。

「渚」
「フランキー? どうしたの?」
「おれのスーパーな筋肉、いつでも鑑賞してくれて良いぜェ!」
「ほんと!? ありがと!」

まだあんまり会話したことないけど、フランキーって身体は大きいけど優しそう。今度あの大きな腕にぶら下がってみたい。フランキーと話していると、後ろからナミの声がした。

「ソイツ変態なんだから気をつけなさいよー」
「おいおい褒めんなよ」
「褒めてないわ! そうだ、はいこれ」

ナミから小さな袋を渡された。ちょっと重いけど何が入っているのだろう。

「服とか下着とか必要なものあるでしょうし買ってきなさい。あと昨日手に入れたこの島の地図も渡しておくわ」
「これもしかしてお金? ナミってしっかりしてるよね」
「まァね。こんなにしっかりしてて何でもできる美人、他にいないわよ。ただし、うちはお金に余裕がないの。無駄遣いはしないでよね」
「それなのにお小遣いくれてありがと。ちゃんと返すから」
「良いわよそれくらい。でも返してくれるなら倍にして返してよね。それじゃ私は行くところがあるから、ゆっくり買い物してきなさい」

船を降りて向かう方向は皆バラバラだ。何人かで一緒に行動するのかと思っていたけど、皆色々目的があるんだな。
地図を広げて街まで歩く。日本とは街も人も服装も売っているものも全然違っていて海外旅行をしている気分だ。

服を買いに行くと街の人は優しくて、色々試着させてくれたり買った服に着替えさせてくれた。ずっとトリップした時のラフな格好をしていたから、この世界になじんだ服装になれた気がする。買い物していくうちに、一人で不安だった気持ちもなくなり買い物を楽しんだ。

色々見て回ったけど島が大きいのか皆と会わないなと思っていたら、ぐぅ、とお腹が鳴った。そろそろお昼かとご飯屋さんに入った。バーのような雰囲気のところだった。怖そうな男の人ばかりで引き返そうかとした時、視界の端に麦わら帽子が見えた。嬉しくなって彼の元へ駆け寄る。

「ルフィ、隣座ってもいい?」
「おう! 渚も飯か?」
「うん。美味しそうなお肉だね」
「うめーぞ!」

ルフィが食べている大きなお肉は今まで見たことも食べたこともないもので、折角だし食べてみようと注文した。熱そうなお肉はすぐに目の前に出されて、嬉しさと一緒にお腹もぐぅぅと鳴り響く。

両手で骨を持って真ん中からお肉にかぶりつく。口の中に広がるお肉の味はとてもジューシーで、ワイルドだなと自分で思いながらルフィと同じようにかぶりつくように食べた。美味しいねとルフィに言うと彼は両頬いっぱいにお肉をいれたまま、うめーだろと笑った。
そのままお肉をまた食べ進めるのかと思いきや、彼は私の顔をじっと見つめたままだ。

「どうしたの?」
「……お前食べ方きたねェぞ」
「ルフィの真似して食べてるんだよ」
「おれそんなじゃねェ」
「私より口の周り汚くなってるよ」

手拭きの綺麗な部分で口の周りを拭いてあげると、彼は子供のように目を瞑った。可愛いねと言うと可愛くねェ!と言い返される。末っ子気質だよなァなんて思いながらまたお肉にかぶりついているのを見て、私もまた真似をした。

思っていたよりお腹が減っていたようで、お腹いっぱいになる頃にはお肉もなくなっていた。隣の彼はずっと食べ続けている。綺麗になった骨が50本以上はあるので大きな胃をしているんだな、と驚いた。

「ルフィお肉何個食べたの?」
「んー、数えてねェ! でもまだまだ食えるぞ」
「流石船長」
「渚もいっぱい食って大きくなれよ」
「うん。まだ食べてるよね? 私もうちょっと街を見てみたいから先行くね」
「おう! 後でな」

お金足りるのかなと不安になりながらも、自分の分だけ支払って外へ出た。必要なものは買えたし、買うものもなくぶらついていると突然数名の男達に道をふさがれた。

「お前、あの麦わらの仲間か」
「えっと、どなたでしょうか」
「仲間であろうとなかろうと知り合いであることは違いねェ。悪いが人質になってもらうぞ」

そうだ。ルフィ達には懸賞金がかけられていて色んな海賊達から狙われるって言ってたっけ。さっきルフィと話していたところを見られて後をつけられていたんだ。逃げれるほど足も速くないし、どうしよう。相手は腰に剣をぶら下げているし逃げたりしたら殺されかねない。

「どう……すれば良いですか」
「ものわかりの良い嬢ちゃんは嫌いじゃないぜ」
「私、こっ怖くて。痛い事はしないですか?」

一番派手な男に近付いて、目に涙いっぱい溜めて上目遣いで見る。この表情には男は弱い。効果はあったようで男は赤面している。

「痛い事はしないよォ。ジッと待ってくれているだけで良いさ。オイ、おれはこの嬢ちゃんを連れて行くから、お前らは麦わらに人質は預かったと伝えておけ」
「了解です。キャプテン」

逃がしてくれないかなと思ったけど、そう甘くなかった。どうしよう。男に手首を掴まれ引っ張られる。人質になってルフィ達に迷惑かけてしまうのかな。誘拐なんてされたことないし、抵抗すれば殺されるであろう状況も経験したことがない。怖くて体が震える。

「あの、何処に行くんですか?」
「うちのアジトさ。アジトに着いたら嬢ちゃん、おれとイイことしような」
「えっ」

男は私の耳元で囁き、肩に手を置く。体中から冷や汗が噴き出た。

「いやっ、だっ誰か……」
「おっと、逃げない方が身のためだぜ」

掴まれた腕を振り解きたいのに、男の力が強くて振り解けない。街の人に助けを求めても皆私から目を逸らす。そりゃそうだ、誰だって武器を持っている海賊相手に歯向かおうとはしない。

「オイ。うちの船員に何してやがる」
「!!」

聞いたことのある声だ。振り返ると予想通りの人が立っていてひどくほっとした。

「海賊狩りのゾロだな。武器を捨てろ。この嬢ちゃんがどうなっても良いのか」
「どうなるんだよ」

そう言うと同時にゾロは剣を抜いて私が息する間もなく一瞬にして男を倒し、気づいた時には剣を鞘におさめていた。

「すごい……」
「怪我はねェか」
「うん、大丈夫。ありがと」
「おう。行くぞ」
「待って。ルフィのところに、この人の仲間が行ってるみたいで」
「アイツなら何とかするだろ」

そっか、ルフィは強いから。そう答えたかったのに声が上手く出せなくて戸惑う。

「オイ」
「ひゃいっ」
「……震えてんぞ」
「こわ、くて、止まらない」
「そういやお前の生まれ育った国には海賊も海軍もいない平和なとこだって言ってたな」
「先、行ってて」
「あ? 何でだよ」
「震え、止めてから戻る、から」
「……ったく、仕方ねェな」
「ちょっと!? ゾロ!」
「また狙われでもしたらどうすんだよ」

ゾロは私を持ち上げて肩に担いだ。視界に映るのは地面で、目から溢れ出るものは誰にも気づかれず下に落ちていく。

「船は……あっちだな」

ここから船までそう遠くはない。船に戻る頃には震えは止まっていると良いけど。ゾロが来た安心感でもう怖くはない。それなのに体の震えは止まらなくて笑えてくる。


それからどれくらい彼は歩いたのだろうか。体の震えも止まって、担がれたままの私は頭に血が上りめまいがしてきたので、下ろしてほしいとお願いした。自分の足で立って見た景色は、さっきまでいた街からは離れた森の中だった。

「ゾロ、船に向かおうとしてたんだよね?」
「あァ。こっちで合ってるはずなんだが」
「もしかして方向音痴なの?」
「んなわけねェだろ」
「地図確認したら、ここは船とは逆方向っぽいんだけど。北どっちか分かる?」
「……あっちだろ」

南を指さしている。どうやら彼は方向音痴っぽい。

「こっちだよ。ついてきて」
「おう」

その後ついてきているかと確認して後ろを見たら勝手に違う方向に行ってるし、声もかけずに立ち止まってお店を見に行ってたり。主人の言うことを聞かない大型犬を散歩している気持ちになった。

「リードないかな」
「リードってペットに使うもんだろ。必要か?」
「うん、ゾロにつける。勝手にどっか行くから」
「いるわけねェだろ! なめてんのか」

服でも引っ張ろうかと思ったけど、彼の服は半袖で引っ張りにくい。かといって手を繋ぐのも嫌がるだろうし……あっ。

「迷子になるといけないし、腕掴んでても良い?」
「良いぜ。迷子になられちゃ困るからな」

迷子になるのは間違いなくゾロの方なんだけど。腕を掴むイコール前腕筋がさわれるということであり、私にとってはご褒美でしかない。
彼の腕の内側に手を添えると、見た目通り硬くて興奮した。鼻血が出そうなのをぐっと耐えて、手を上下に動かしたり揉んだりして筋肉の感触を楽しんだ。

「オイ、変な触り方すんな」
「だって……こんな良い筋肉してるゾロが悪いんだもん。船まで連れて行ってあげるんだからこれくらい我慢して」
「おれは一人でも戻れる」
「はー、しあわせ」

船に戻るとウソップがいた。私たちが戻ってきたことに気付いたウソップは、私の荷物を見て部屋まで運んでやるよと荷物を持ってくれた。

「お前ら二人一緒だったんだな。渚、えらく幸せそうな顔してんじゃねェか。何かあったのか?」
「うん、前腕筋最高」
「もう離せ」
「あぁ……前腕筋……」
「あー、良かったな? 服も変わってんじゃねェか。買ったのか?」
「そう、買ったの。ウソップはよく周りを見てるね。ルフィもゾロも気づかなかったのに」
「何か変わったか?」
「ほら、言っても気づかない」
「そうだろうそうだろう。おれは周りを見れるスゲーやつだ。もっとおれの良いところを言ってくれて良いぞ」
「すぐに荷物を持ってくれたことも嬉しかったよ。優しいんだね」
「おう! 優しいウソップ様にもっと頼ってくれ!」
「うん、ありがと」

アホか、と言い残しゾロは船の中に入っていった。ウソップは長い鼻が更に伸びたように見えた。
夕食時に、今日ルフィと話しているところを見られた海賊に襲われそうになったこと、ゾロが助けてくれたことを皆に話した。ルフィの元にやってきた海賊は気づかないうちにボコボコにしていたらしい。

「顔が割れていないとはいえ、この子を一人にするのは危なかったわね」
「えぇ、軽率だったわ。次の島では誰かと行動するようにして」

ロビンとナミに言われてコクリと頷く。彼らは懸賞金がかけられた海賊なんだ。一緒にいたら狙われるのは当たり前で。今までいた平和の国ではないことを感じさせられた。

「渚、この船にいる限り、お前はおれ達が守る。安心しろ!」
「ルフィ……。うん、ありがと!」
「よーし、野郎ども! 今日は宴だ! 渚の歓迎会するぞォ!」

おー! と皆が腕を上げる。甲板に運ばれてくる沢山の料理と飲み物。歓迎会だなんて嬉しいな。

「渚ちゅわーーん! お酒は飲めるかい?」
「飲めるよ。良いの? 飲んじゃって」
「もっちろんさ。沢山用意してるから思う存分飲んでくれ」

飲みは久しぶりで嬉しい。居酒屋行っては生ビールとハイボールを周りにひかれるくらい飲んでたなぁ。皆で乾杯して歌ったり踊ったりしながらお酒を飲んでいて宴会場が出来上がる。

「隣いいかな」
「うん、どうぞ」

ご飯を作り終えたサンジが腰を下ろす。足長いなーなんてお酒を飲みながらボーと見ていると、彼は眉を下げて私の顔を見た。

「今日は大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。ゾロが来てくれたし」
「……、次の島ではおれと行動するのは嫌かな?」
「そんな、嫌じゃないよ。でも食材の買い出しとか忙しいかなって思って」
「買い出しには付き合わせちゃうけど、レディを危険な目に合わせたくはないんだ」
「私買い物好きだから嬉しいよ。じゃあ次の島では一緒にいてほしいな」

サンジが一緒だなんて心強いよ、と笑顔で言えば、何かに殴られたかのように勢いよく後ろへ倒れた。
お酒を一気に飲み干すと、サンジが新しいのを持ってくると言って行ってしまったが、ルフィ達に捕まって戻ってこなかった。楽しそうな彼らを見て笑みがこぼれる。

ご飯とお酒を取りに行ってどの辺りで食べようかなと悩んでいると、ゾロが少し離れたところでお酒を飲んでいたので、彼の姿が確認できる位置で腰を下ろした。筋肉鑑賞しながら飲むお酒は最高に美味しいと思う。

ゾロを見ながらお酒を飲んでいたらふと目が合った。ヤバい、筋肉を見て飲んでいたことがバレたか。

「お前結構飲めんのか」
「バレてなかった」
「あ?」
「何でもない。飲むよ、飲む。そういえば私より飲む人と飲んだことないかも」
「へェ。勝負するか?」
「負ける気がしない」
「上等だ」

それからゾロと同じペースでお酒を飲む。私は美味しいものを食べて誰かと話しながら飲むお酒が好きだけど、彼はずっとお酒を飲んでいる。

「ゾロはご飯食べずにお酒飲むの?」
「飯はもう食った。あとは上手い酒だけで十分だ」
「そうなんだ。美味しいよね、お酒。私もゾロくらいの歳の時から、めちゃくちゃ飲みに行ってたし」
「おれくらいの歳? そんな歳変わんねェだろうが」
「変わるよ。ゾロ20くらいでしょ」
「21だ」
「でしょう。若いなァ」
「……? お前年上だったのか。いくつだよ」
「女性に年齢を聞いてはいけませんー」
「めんどくせェな」
「全然飲み足りないや。まだまだいけるよね?」
「当たりめーだ」

いつの間にか皆は色んな場所で酔いつぶれていて、最後まで起きていたのは私達だった。それから意識が飛ぶまでゾロと飲んでいた。