×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






「温泉だー!」
「ちょっとルフィ! 飛び込まないでよ」

 ルフィが勢いよく温泉に飛び込み、ナミが注意する。私達は温泉が沸いている島に上陸した。水着を着用して混浴が可能らしく、皆で同じ温泉に入っている。

 温泉はこの島に住んでいる人達が運営しているらしい。頼めばお酒も出してくれるしマッサージもサウナもある。

 いつも入っているお風呂も良いけど、温泉ってやっぱり良いなと思いながら湯を肩からかける。

「麗しのレディ達、マッサージはいかがですか? この島おすすめのマッサージオイルで全身ケアしますよ」

 サンジがオイルを片手に鼻の下を伸ばしながらやってきた。マッサージかァ……。

「サンジ、私マッサージ得意だよ!」
「えっ!? いやおれが」
「いつもお世話になってるしこんな時くらいさせて! ほらほら、うつ伏せで寝転がって」
「でででっでも」

 背中を押してマットの上に寝転んでもらうとするが、おれがしたいと頑なに断るサンジ。クッ、筋肉触り放題だと思ったのに……!

「アンタ達、お互い下心丸出しじゃない」
「「えっ!?」」

 サンジと声が重なる。下心なんてそんな……あるけど!

「じゃあ渚、マッサージお願いしてもいい?」
「任せて!」
「ナミすわぁん……おれは」

 マットの上にうつ伏せになったナミ。サンジが羨ましそうにこちらを見ているけど、何か自分に出来ることがあれば率先してやりたいし譲らないぞ。
 オイルを手に取ってふくらはぎ全体の筋肉を意識して揉んでいく。

「流石筋肉詳しいだけあるわね。気持ちいいわ」
「ふふ、良かった」
「ロビンちゅわーん! マッサージしようかー?」
「あとで渚にやってもらうわ」
「任せて!」

 ロビンにも断られ、サンジはしょぼくれてしまった。なんか悪いことしちゃったかな。

 ナミのマッサージを終えて、ロビンにもすると二人とも体が軽くなったととても喜んでくれた。オイルを返しにサンジを探すと、端の方で三角座りをするサンジを見つけた。

「サンジ、オイルありがと。ナミもロビンも喜んでくれたよ」
「ああ、良かった」
「あの……えっと、私マッサージしてほしいなー……なんて。嫌じゃなければだけど」
「!!」

 凄い勢いでサンジが振り向き、思わずびくりと肩が上がった。

「や、やっぱり私がサンジにマッサージしよっか!」
「おれにさせてくれ渚ちゃん!」

 彼の勢いに負けてブンブンと首を縦に振った。マットの上にうつ伏せになろうとすると、オイルで手がつるりと滑った。

「危ない!」
「っ!」

 背後の岩に激突してしまうかと思いきや、目を開けるとサンジに押し倒された状態になっていた。

「ありがと、助けてくれて」
「すまねェ!!」

 すぐに彼は私から離れた。気まずい空気が流れる。マッサージ、どうしようかな。
 マッサージオイルを出してサンジの手を取る。彼は不思議そうに私の名を呼んだが、返事をせずに指を絡めながら手のツボを押していく。
 彼の様子を見ると、とろんとした目で私を見ていた。マッサージ、気持ち良かったようで良かった。


********************


「ささっ、女性の方はこちらへ。美味しいお酒をご用意してますぜ」

 この島の人だろうか。複数人の男がお酒を持って他の温泉に案内してくれた。

「どうぞどうぞ。美味しいですぜ」
「ありがとうございます!」

 お酒を頂くと喉がグッと熱くなった。これ、度数高いな。ナミは多分大丈夫だろうけど、ロビンってお酒強いのかな。
 お猪口が空になるとすぐにお酒を注いでくれるので、飲みすぎてしまいそうだ。


「何で酔わねェんだ? 全く酔う気配がねェぞ!?」

 少し離れたところにいる男達の会話が聞こえてきた。酔わせたかったのかな。

「成程、そういうことね」
「ウフフ、相手が悪かったわね」
「もっと酔っ払った方がいい? ペースあげようか」
「アンタは気にせず飲んでなさい」
「私の分もあげるわ」
「? うん、ありがと」

 気にしなくていいならお酒も美味しいし、気にせず飲んでよっと。


「お兄さん筋肉かたーい!」
「!?」

 筋肉!? どこどこ!?
 どこから声がしたのかキョロキョロと見回すと、岩場に座っているゾロが綺麗なお姉様方に囲まれて、上腕筋を触られていた。
 ゾロは気にせずお酒を飲んでいる。ええ、なんで!? 私が触ろうとするとやめろって言って引っ剥がされるのに。私も混ざりたい……!

「腹筋もすっごい割れてるー」

 楽しそうに腹筋の溝を触っていくお姉様方。そしてやはり気にしてない様子のゾロ。お願いしても触らせてくれないのに!

 ……でも、待てよ? という事は。ふと思った。

「何も言わなかったら、気にせず触らせてくれるのでは?」

 いつもお願いするからダメなんだ。彼のことだから触って良いか聞いて、良いなんてきっと言わないよね。


 静かに近づきお姉様方に混じって彼の筋肉に手を伸ばす。セール品のワゴンに群がる人達の中に入っていくみたいな感覚だ。しかし中心に座る鋭い目と目が合い、何だと言われる。ずっとお酒飲んでて気にしてなかったのに何で急に。

「酒が無くなったのか?」
「えっ、うん」

 頷くとほらよ、とお酒の入ったジョッキを渡される。ありがとう、なんだけど……うーん。その間にもお姉様達は彼の筋肉に触れている。迷いながらもう一度ゾロに触れようと試みるが、伸ばした手の手首を掴まれた。

「んだよ、まだ欲しいもんがあんのか?」
「……っ、ずるい! 私もゾロの筋肉に触りたい!」
「ハァ!?」
「どうして私には触らせてくれないの!?」

 ゾロと周りの女性達は「何言ってんだコイツ」みたいな顔してこっちを見ている。どうして触らせてくれないのか教えてくれるまで目を逸らさないぞ。
 そんな時、後ろからナミがゾロを呼んだ。

「減るもんじゃないんだし、少しくらい触らせてあげなさいよ。他の女は良くて渚だけダメなんて可哀想でしょ」

 ナミがドリンクを片手に近くのベンチに座った。ナミが私の味方をしてくれてる。嬉しい。マッサージのお礼よ、とウインクされた。

「渚は……」
「私は……!?」
「……」
「なに!?」

 なんでもねェと言ってゾロはどこかへ行ってしまった。どうしよう、しつこいから嫌われちゃった?

「ナミィ……」
「あっちにサウナがあるらしいわよ。ロビンも誘って行きましょ」

 あからさまに話を逸らされた。ゾロにはあとで謝ろうと思って、サウナに向かうナミについて行った。



 サウナは女性限定らしく水着を脱ぐように言われたので、バスタオルを巻いて入っていた。ここに入って数十分程経っただろうか。ナミとロビンはもう限界っぽい。

「サウナって熱いわね。そろそろ出るわ」
「私も出ようかしら。渚はまだいる?」
「うん。もうちょっとだけいる」
「のぼせないようにね」
「はーい」

 サウナで汗かくのって気持ちいい。さっきお酒を飲んでいるし私ももう少し経ったら出よう。ここは人がいなくて貸切状態だ。

 突然外が騒がしくなって地面が揺れる。汗を拭いながら立ち上がるといきなり壁が崩壊した。天井も崩れてきているしはやく出なければと思って扉へ向かう。しかし壁が崩れていることによって扉が開かなくなった。


「どうしよう。誰かー! 助けてー!」

 叫んでも壁が崩壊する音で声が掻き消される。ふとこの間のゾロとの会話を思い出した。呼んだら駆けつけてくれるって言ってくれたな。



「ゾーーーローーー!!! たすけてーーー!」


 思いっきり大声を出して助けを呼んだ。すると何が起きたのか、一瞬にして天井が飛んでいった。そこへ上から飛び降りてきたゾロが私の名前を呼ぶ。

「こんなとこにいたのか」
「……ほんとに呼んだら来てくれた」
「当たり前だろ。って身体熱くねェか? また熱か?」
「あ、えっと、サウナに入ってて。というかここがサウナだったんだけど」

 壁が崩れて私達の上に落ちてくる。どうしようと混乱していると視界が大きく揺れる。ゾロは私を横抱きにしてサウナだった建物から出た。

「怪我はねェな」
「うん。ありが……」

 巻いていたバスタオルがするりと地面に落ちた。つまり私は、全裸でゾロにお姫様抱っこされている。

「あっ」
「っ!? おまっ、水着は!」
「サウナは水着ダメだって言われて。そ、それより早く下ろして」

 急に手を離されて、腰から地面に落ちた。腰とお尻が痛いがバスタオルを拾い上げて体に巻く。

「いたた。もう、下ろしてとは言ったけど乱暴」
「……わりィ」
「もしかして裸見てドキドキしちゃった?」
「!!」
「でもゾロに限ってそれはないか。さっき女の人に筋肉触られながら胸押し当てられてたけど、全く興味なさそうだったし」
「……ああ、興味ねえ」
「だよねェ」

 痛む腰を摩りながら立ち上がり、水着を取りに更衣室に行こうとしたらゾロが口を開く。

「どうでもいい奴には興味ねえってことだ」
「好きな子には違うよってことね。分かった分かった」
「……お前、何でこういう時は鈍感なんだよ」
「鈍感? 私結構鋭い方だと思うんだけど」

 鈍感ではないと思う。ゾロの方が鈍感、というか天然? じゃない?
 それよりも早くこの場を去りたい。年下とはいえゾロに裸を見られたんだ。恥ずかしくて消えたい。

「渚は、見られて何ともねえのか」
「そりゃあ恥ずかしいよ」
「そんな風には見えね……お前、顔真っ赤だぞ」
「……バカ」
「っ、」

 恥ずかしくて顔を逸らすが、ゾロは何も返してこなかった。声を掛けると背中を向けて「早く水着を着てこい」とこちらを見ずに更衣室を指差した。

「敵がいねェか確認してから行くから、着替えたら先に行ってろ」
「分かった」

 彼は怖い顔をしていたので、着替えを取りに更衣室へ走った。



 皆の元に戻ると彼等の前には倒れた男達がいた。何があったのか話を聞こうとすると、倒れた男の中の一人が叫んだ。

「強い酒で酔わねえ、サウナでのぼせねえ。サウナをぶち壊しても全員無傷だと!? 女から狙う策はダメじゃねェか!」
「レディを狙うなんてとんだクソ野郎だ」

 サンジの蹴りで男は意識を失った。私が戻ったことに気付いたウソップは「おれ達の懸賞金狙いの海賊狩りが、島の人に紛れてたんだ」と教えてくれた。